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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第五章 呪われた少女編

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第171話 正しい攻略方法

 竜郎が光を灯したその瞬間、突如現れた光源に向かって一斉に魔物たちが振り向いた。

 それらは全部で三十匹以上で、計五種類いた。

 一メートル程の黒いタコ。

 ナマコを細長く引き伸ばしたような三十センチほどのワーム。

 五十センチ程のキノコのような外見で、一本足のクラゲ。

 リスくらいの大きさで、前後ろ足に水掻きがついて、針のように尖った二本の前歯を持つネズミ。

 二十センチほどの大きさで真っ赤な色のCDのような形。その周りには五センチ程の真っ赤なCDが数珠なりにくっついて輪になった物を、フラフープのように自身の体を中心にして二つ回転させている無機物のような魔物で、それは色違いの青もいた。

 そんな魔物らが我先にと、食いでのありそうなジャンヌの巨体へと群がり始めた。


 けれどそれはカルディナと自分の水中探査魔法で察知していたので、慌てることなく冷静に距離を見極めていく。

 そしてそれらが攻撃範囲内に入ってきた時、竜郎はアテナと協力して自分たちの周りを覆う真水の層の外で強力な電撃を撃ち放った。

 電気をよく通す海水にも助けられ、深海の魔物たちは次々と感電死し、少し離れた場所にいたものも電撃の衝撃で気絶したり、逃げたりしていた。

 近くで死んだ物はジャンヌの泳ぎの邪魔になるので、《無限アイテムフィールド》に一瞬で全てしまって障害物を取り除く。


 しかし、電撃に耐性のある円盤のような外見をした魔物はほとんどダメージなく、その何匹かが竜郎たちの間近に迫ってきていた。

 けれどそちらは愛衣が腰に着けた天装の弓から出した二本の槍で突き割り、手に持った宝石剣の斬撃で真っ二つにしていく。

 そしてその攻撃網を命からがら抜けられても、奈々の魔力を注いで膨らませたカエル君杖でぶん殴られたり、リアの巨大金槌で叩きのめされ木端微塵にされていた。



『魔物の方は大丈夫そうだな』

『うん。けどあと400秒ぐらいで地上に出られると思う?』

『…………いや、ジャンヌにいくら頑張ってもらっても、まるで地上を感知できない。

 多分無理だ。それは、魔法を使っても同じだろうな』

『それじゃあ、ここはSPを消費しながら進まなきゃいけないってことなのかな? それは嫌だなあ…』



 嫌なのは誰でもそうだろう。しかし、それと同時に本当にそうしなければいけないのだろうかという疑念も竜郎の中に湧きあがっていた。

 今までのダンジョンの傾向を見ても、攻略する手段は必ず用意されていた。

 それなのにここではSPが殆どなかった場合、死ぬしかない。

 それに探査した限りでは、SPの(1)や(2)程度の消費で足りるようには思えない。

 となると、何らかの救済措置が用意されていてもおかしくはない。

 竜郎は他の魔法をしっかりと維持したまま、何かないか探査魔法の手をあちこちに伸ばし始めた。

 チラチラと横目に映る減り続ける残りの秒数にせかされながらも、努めて冷静に脳内に入ってくる情報をカルディナと一緒に精査していく。

 残り秒数【238秒】となった時、一つ気になる情報を捉えた。

 それは二メートルほどの大きさで、鳥籠のような形をしていて、それが沈むでもなく、浮かぶでもなく、海中の一か所で固定されていた。

 あまりにも場違いで違和感のあるその存在に何かあるのではと竜郎は感じ、ジャンヌに上ではなく正面向かって左斜めに軌道修正してもらった。



『何か見つけたの?』

『ああ、それがいいか悪いかは解らないがな。とりあえず見にいこう』

『わかった』



 一度蹴散らしても、少し進んでいくと別の魔物の群れがやってくる。それを倒して《無限アイテムフィールド》に回収。というのを繰り返していくと、やがて目的の鳥籠の前まで辿り着いた。

 それは探査魔法で解っていた通り、鳥を飼う時に使う籠の形をしていたのだが、その中に長方形で五十センチほどの高さの台が置かれており、さらにその上に赤と青のボタンが置かれていた。

 なんのボタンか解らないかと解析魔法をかけてみるが、さっぱり解らない。

 おそらくどちらかを押せということなのだろうが、今この状況でマイナス方向のことが起きた場合対処が難しい。

 さてどうしたものかと竜郎が思案していると、肩をトントンとリアに叩かれた。



「どうした、リア?」



 水魔法で聞こえやすいようにしてしゃべりかけると、リアは赤いボタンを指差した。



「こっちのボタンは、押しても大丈夫なのか?」



 竜郎の問いに、うんうんとリアは頷いた。

 青い目に変わっていることから、恐らく《万象解識眼》で答えを得たのだろうと、竜郎は何が起きてもいいように警戒はしつつ、赤いボタンを押した。

 すると───。



《《《《《《《『耐深海モード』600秒追加されました 》》》》》》》



 そんなアナウンスが全員の耳に届いてきたので、一斉に残り秒数をみれば【732秒】と表示されていた。

 竜郎は全員が同じ状況になっているか確認し、このボタンがどういうものなのか理解してきた。

 なので皆にも説明するために、リアの声も水魔法で振動を増幅させて全員の耳に届くようにした。



「赤いボタンは秒数増加だったんだが、青いボタンを押してたらどうなってたんだ?」

「青いボタンを押した場合、逆に秒数が減るみたいです」

「この二択は、勘で選ぶしかないのか?」

「そこまでは解らなかったですが、必ずしも赤というわけではないみたいです。

 なので何らかの法則があるのは間違いないと思うのですが、そこの辺りがシステムに近い造りになっているのか、私の目でも探れませんでした」

「けど、またこういうのがあった場合、リアがみればどちらが正解かは解るんだな?」

「はい。これと同じものなら正解がどちらかは解るはずです」

「そうか、それじゃあ次があったらまたお願いするだろうから、その目は温存しておいてくれ」



 竜郎がそう言うと、リアは頷いて元の赤い目に戻した。



「それじゃあカルディナ。これと同じものを見つけたら最優先で教えてくれ」



 水の中では魔法を使わないと音を伝えづらいので、大きく頷いて了承してくれた。

 そうしてこのダンジョンの攻略方法が解ってきたところで、竜郎たちはまた急いでジャンヌに引っ張ってもらいながら上を目指した。


 それから一切休むことなく、魔物との交戦を繰り返しつつ鳥籠を探し回った。

 二つ目のボタンも赤、三つ目のボタンは青と、今一法則が理解できないまま、リアの指し示す方を選択していった。

 そしてそれは、四つ目の鳥籠を発見した時のことだった。

 竜郎がリアの指す赤いボタンを押そうとした時、また別の魔物の群れが襲い掛かってきたので、押す前にそちらを先に片付けておくことにした。


 問題なく魔物を打倒していき、最後に愛衣がCDの形をしていた魔物を宝石剣で切り裂いてこの場に静寂が戻った。

 なので竜郎は早速とばかりに赤いボタンに手を伸ばした。しかし、突然リアがその手を掴んで阻んできた。

 それに何事かと、水魔法を使ってお互いの声が響くようにしてから問いかけた。



「突然どうしたんだ?」

「今さっきアイさんが最後の魔物に止めをさした瞬間、青いボタンに正解が切り替わりました!」

「魔物を倒したら……──! 愛衣、さっきCDみたいな魔物を倒してたが、そいつは何色だった?」

『青だったよー!』

「そういうことか」



 思えば、CDの形をした魔物だけが赤と青の二種類いた。

 これだけでも最初から疑ってかかるべきだったと、竜郎は反省した。

 おそらく、最後に倒したCD型の魔物の色でボタンの正解がきりかわるのであろう。これなら、リアのような反則的な目がなくてもある程度調節ができる。

 ただそれを普通の人間が初見で見破るなどそうそうできることではないので、その法則性を見つけるまではSPを消費し続けなければいけないのであろう。

 その情報を皆で共有してから、再び上へと急いだ。


 現在残り秒数は、【1123秒】。ということは言い換えれば、18分43秒なので最初よりも八分以上のプラスである。大分余裕ができてきたとも言えるだろう。

 おかげで皆の精神状態も落ち着いて、魔物への対処にもより効率的に余裕を持って行えるようにもなり、余計にペースは上がっていた。


 そんな時だった。竜郎がまた鳥籠を見つけたので、そこに寄るようにジャンヌに指示していると、カルディナが別の物を見つけた。

 すぐさま竜郎も確認すると、どうやら鳥籠のある位置からさらに横奥に進んだ所に、深い海底からせり上がった大地があり、そこには大きな亀裂が存在していた。

 そしてそこを少し潜った所に、大きな穴のあいた洞窟の入り口が広がっているようだ。



『なんか洞窟見つけた』

『深海の洞窟! なんか冒険って感じだねー』

『上にいくら行っても出口が見えてこないし、もしかしてここで洞窟に向かうのが正解ルートなのかもな』

『じゃあ?』

『とりあえず、覗きにいかないか?』

『そうだね。残り時間はまだ余裕あるし、ちょっと覗いて駄目そうならまた上を目指せばいいし』



 その愛衣の意見に竜郎も頷き、今の会話の内容を水魔法を使って全員に話して聞かせた。

 すると他のメンツも特に異はないようなので、まずは鳥籠でボタンを押して時間を延長し、そのまま亀裂に向かっていった。

 その亀裂は横幅だけでも三十メートルはあり、ジャンヌでも悠々と入っていくことができた。

 そしてそのまま裂け目の壁に沿って下に少し降りていくと、穴があいているはずの場所にたどり着いた。

 しかしそこには、穴を隠す長い髪の毛の様に垂れた海藻が覆いかぶさっており、目で見ただけではそこに洞窟の入り口があるなどとは誰も気付けない程巧妙に隠されていた。


 これは絶対に何かあると竜郎たちは目を合わせて頷きあうと、水魔法と風魔法で強力な渦巻きを作って塞いでいた海藻を根こそぎ千切り取って《無限アイテムフィールド》にしまった。

 すると、直径五メートルほどの穴が眼前に現れた。

 竜郎はカルディナと水中探査でどこまで洞窟が続いているのか、また危険な罠や魔物がいないか念入りに調べてみる。

 そうして解ったのは罠や魔物は不自然なほどなく、洞窟の方は三百メートルほど行った所で直角に上に十メートルほど延びる道があり、その先には大きな空間が広がっており、空気が存在していた。



『空気のある、開けた空間を見つけた。やっぱりこっちが正解ルートかもしれない』

『おおっ、やっとこの海から出られるんだ。早くいこ!』

『ああ。だけど皆にも説明しないとな』

『はーい』



 皆にも洞窟のことを説明してから、ジャンヌは《真体化》でも《成体化》でも穴を通れそうにないので《幼体化》した。

 そして緩い水流を水魔法で造り上げ、それに身を任せるようにして、洞窟に入っていった。


 水流に身を任せて三百メートルほど進んでいくと、そこからは真上に延びた道があったので、こちらも上昇水流を作って昇っていく。

 ───そして。



「─ぷはっ」

「おー、普通に息が吸えるー」



 そこには広い空間が広がっており、そこの陸地へ海から上がると、目の前にはさらに先に進む道と階段が用意されていた。



 《《《《《《《『耐深海モード』一時解除。残り時間は停止しました。 》》》》》》》



「一時解除するだけで、残り時間は律儀に止めといてくれるのか」

「ここに何も無かったら、八方塞がりになっちゃうしねー」

「でも、確実に何かありそうな気配がしますの!」

「そうっすね。それで、ここから先に進むんすよね」

「ああ、今のところそれしか目ぼしい所もないからな。リアもそれでいいよな?」

「はい。海の中をせかされながら進むよりも、自分の足でしっかり歩ける方がいいです」

「だよねー」



 カルディナとジャンヌはもう進む気満々なのか、すでに前方でこちらを待っていた。



「それじゃあ、行くか」

「おー」「ピュイッ」「ヒヒン」「おーですの」「はい」「了解っす~」



 こうして竜郎たちは、深海の中に存在する洞窟の奥へと足を踏み入れていくのであった。

次回、第172話は2月15日(水)更新です。

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