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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第五章 呪われた少女編

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第169話 三つ目のお題

 新たな称号を得て睡眠を十分とった後、無理やり巨大ウツボたちを叩き起こし、四匹からSPと食材をゲットした。

 そして食材という名の巨大ウツボの死骸は、分解を使って綺麗に身の部分と魔石だけを取り出して、竜郎のグレードアップしたシステムスキル、《無限アイテムフィールド》に時間経過を停止させた状態での保管を設定してしまいこんだ。

 これでウツボの肉は、腐ることなく新鮮なままいつでも取り出せるようになった。


 それからご飯休憩を取った後はカミナリ雲が一度通り過ぎるのを待ち、いよいよ最後のお題を探しに行くこととなった。

 とは言え、まるで心当たりがないうえに、魚は植物型魔物、蛇は海洋生物型魔物のウツボだった。

 ここから考えると、この謎の木の実の絵も実は植物とは全く関係ないのではという意見で一致していた。



「けど結局何も解ってないから、地道に探すしかないんだよねえ」

「だな。ということで今日は、何かヒントでもないか上空から一通り見て回ろうと思う。ジャンヌ、頼めるか?」

「ヒヒーーン」



 ジャンヌは任せて!とでも言う様に、小サイの状態から湖面に飛び出し、今竜郎たちがいる湖の真ん中の小島に横付けし、皆で背に乗せてもらった。

 そしてジャンヌは飛び上がり、湖面を眼下に見据えた。



「愛衣。《遠見》で下を見て、気になることがあったら何でもいいから教えてくれ」

「りょーかーい」

「カルディナは全体を警戒、ジャンヌはゆっくり全体を回るように飛んでくれ、アテナはカミナリ警戒、そんで他の皆は下に限らず色んなところを観察してみてくれ」

「ピユィー」「ヒヒーーン」「はいですの」「解りました」「了解っす~」



 ジャンヌが一度手を羽ばたかせ、湖面を一回りしてから越えていき、湖を囲むようにあるドーナツ型の赤茶の地面をなぞるように飛んでいく。

 愛衣も下を見ながら赤茶の地面を具に見つめていくが、この場所は殺風景で精々あっても雑草や石がちらほらとあるだけで、特に珍しいものは見られなかった。

 そして、そのまま森の上空へと入っていった。


 そんなことを暫く続け、いったん昼休憩のために湖の小島に戻るべく、何もない赤茶の地帯を通り過ぎようとしていた時だった。



「あれ?」

「どうしたんだ? 愛衣」

「ん~~? 何か違和感があるんだけど……。ごめん、解んないや」

「皆は何か気づいたか?」



 どこか腑に落ちていない表情の愛衣に代わって、他の誰かも同じように違和感を覚えていないか振り返って尋ねるが、一同首を横に振った。

 このまま考えていても答えは出ることは無さそうだったので、当初の目的通りに食事をとるべく赤茶の地面を通り過ぎ湖の方へと戻っていった。

 そして食事をとり、まだ探していない場所を上空から探すべく、再び空を飛んで赤茶の地帯を通り抜けようとすると、また愛衣が首を傾げていた。



「やっぱり、何か気になるのか?」

「うん…。なんか、ん~。なーんか、ん~~。なーーんか、ん~~~???」

「…………タツロウさん。一度、上空からスケッチさせてもらってもいいですか?」

「そうですの! もしかしたら、それで何かが解るかもしれないですの!」

「その可能性はあるな。リア、頼めるか?」

「はい!」



 ジャンヌにスケッチしやすい高さと位置に空中で停止してもらい、リアは昨日手紙用に竜郎から貰った紙とペンを、《アイテムボックス》から取り出してスケッチし始めた。

 描き終わるたびにジャンヌに位置を動いてもらい、できるだけ正確に素早くリアは手を動かし、地形的にシンプルなのもあって、かなり精度の高い写し絵ができた。



「やっぱ上手いっすねー」

「そうですの。わたくしも、描いてみたはいーのですけど、こんな風にはできませんでしたの…」



 そう言ってリアの写し絵を後ろから受け取り、自分の絵と一緒に竜郎に渡してきた。

 それを愛衣と顔を突き合わせて見てみると、確かにお世辞にも上手いとは言えないが、奈々の見た目年齢の子が描いたのだとしたら、上手いのではとも思う絶妙なタッチの絵であった。

 一方リアの描いた物は、写実的な完璧と言っていいスケッチだった。

 そりゃあ、これと比べたらほとんどの人間が下手糞だろと思いつつ、奈々にしっかりフォローをしてから、リアに礼を言って一先ず《アイテムボックス》にしまった。

 そして時間つぶしもかねて、まだちゃんと探せていない森地帯上空へと飛んでいった。


 それから休憩も挟みつつ三時間ほど空の探索をした後、赤茶色のドーナツ地帯に戻った。

 そしてジャンヌにそこを見渡せる場所で止まってもらい、愛衣はリアのスケッチの絵と眼下の景色を《遠見》を使って見比べていく。

 そして竜郎は奈々のスケッチと眼下の景色を見比べていると、口には出さないが奈々が嬉しそうにニコニコしていた。

 それに癒されながら、間違い探しでもするかのように集中していく。

 数分後。さっそく愛衣が、スケッチと違う点を発見した。



「ねえ、たつろー。ここと、あそこが違う気がする」

「どれどれ。ここからだと、細かくは俺の視力じゃ解らんな。ジャンヌ、あっちの方角に進んでくれ」

「ヒヒーーン」

「………………………………止まってくれ!」



 ちょうど愛衣が違うといった箇所の真上に止まってもらい、竜郎は奈々の物で、他の者たちはリアのスケッチを回し見てそれぞれ確認していった。

 すると、愛衣の言っていた通り五十センチほどの高さの雑草が一メートル四方に固まって生えていたはずなのに、そこには何もなかった。

 そしてさらにそこから数メートル離れた辺りでは、何もなかった場所に茶色い三十センチほどの石が置かれていた。

 石自体は他の所にもポツポツ落ちているので気になるほどでもないが、なかった場所に急に石が落ちているのは不自然に思う。

 しかもこの層には、竜郎たち以外の人間はいないはずなのに。である。



「怪しいな。けど念のため、他にもないか探していこう。ジャンヌ、また上に上がってくれ」

「ヒヒーーン」



 それから愛衣の見ている今の光景と、リアのスケッチとの違いは計16カ所。

 それぞれ草が有ったり無かったり、石が有ったり無かったり、凹んでいた場所が凹んでなかったり、またその逆だったりと、注意してみていなければなかなか気付けないほど地味に変化していたのだ。

 明らかに自然になるような変化ではないので、竜郎達は調査のためにまず最初の方で見つけた、なかった場所に現れていた石のある場所に降り立った。



「カルディナ、俺の解析魔法では只の石なんだが、そっちでもそうか?」

「ピューイ!」



 自分の結果と答え合わせするようにカルディナに聞いてみると、大きく首を縦に振って同じだと伝えてくれた。

 次に全力で竜郎とカルディナのダブル解析魔法でも試みたのだが、こちらも只の石だと結果が出た。

 それにおかしいと思いつつ、火で炙ったり、水をかけてみたり、ペタペタと触ってもみるが、特に何も起こらなかった。

 しかし、それを《万象解識眼》を発動させたリアが見た瞬間、驚きに声を上げた。



「その石はただの石ではありません! 魔物です!」

「え? でも、解析結果では完全に石なんだが……」

「そうですね、今は完全にダンジョンのオブジェクトと化してしまっているので只の石です。ですが、──アイさん。あの石を破壊してください」

「え? うん、解った」



 愛衣は一度竜郎を見ると、頷いてくれたので言われたとおりに《アイテムボックス》から竜骨の棍棒を取り出して、無造作に石に向かって振り下ろした。

 するといとも簡単に、石は粉々に砕け散った。

 しかしその瞬間、粉々になった石周辺の空間がぼやけ始め、やがて熟していない青いヤシの実に、双葉を逆に取り付けたような足が生えた魔物が現れた。

 その光景に一瞬驚きながらも、竜郎たちは直ぐに戦闘態勢に入った──のだが、その双葉の足からは想像もできないほどの俊足で森の方へ逃げていった。

 それに愛衣だけが反応し追い縋り、手に持っていった棍棒で上から叩きのめした。

 すると身がグシャッと割れてしまい、中から柑橘系の果物のような匂いの汁がこぼれ地面に染みを作っていった。



「あっ、割れちゃった!? 最後のお題の奴っぽかったのに……」

「まあ突然だったし、しょうがないさ。んで、リア。これはいったいどういう奴なんだ?」

「はい。そいつは、《ダンジョン同化》というスキルを持っていました。

そのスキルを発動させると、完全にダンジョンのオブジェクトと化して、解析魔法ですら欺くほどの隠密性を得られるんです」

「それだと奇襲し放題じゃないっすか? 危ないっすね……」



 解魔法ですら感知できないのなら、いきなり後ろからということも有りえてしまう。その事実に、リア以外のメンバーが息を飲んだ。



「いえ、そこは安心してください。《ダンジョン同化》中は既定の時間が来るまで、自分の意思すらなくなり動くこともできなくなります。

そして戻る際に探知が可能なので、完全に姿を現す前に発見することもできますから、常に探査を心がけていれば十分対処できるスキルです」

「ちなみに、そのスキルは魔物が変化しているオブジェクトを破壊すると、既定の時間が来なくても強制的に解除できるという認識で合っているか?」

「はい、あってます」

「それじゃあ、この間違い探しで見つけたのは、全部こいつらだと思ってみてもいいのかな?」

「直接この目で確認しないと解りませんが、十中八九そうだと思います」

「ってことは、まだ七匹はいそうだな。さっそく、他のポイントに向かおう」



 竜郎たちは直ぐにジャンヌの背に乗せてもらい、そこから一番近い平らな地面だったのに盛り上がっている場所へと降り立った。

 そうして今度は逃がさないように、愛衣の立っている場所以外に《粘着水》をその周りに張り巡らせた。

 そして準備が整ったところで愛衣が竜骨棍棒を振り降ろし、盛り上がった地面に穴を開けた。

 すると先ほどと同じように空間が滲んでいき、ヤシの実に双葉の足を持つ魔物が現れた。

 また前の個体と同じように逃げようとするが、愛衣の立っている方向以外には魔力の通った怪しげな水が撒かれていることに気が付いたその魔物は、一か八か愛衣に向かって突撃してきた。

 しかしそれを愛衣は、本来盾術のスキル持ちが盾で行う時に使うスキル《受け流し》を、今持っている棍棒で行使し、魔物にほとんど衝撃を与えることなく粘着水の上に降ろした。

 するとたちまち粘着水に絡め取られて、一切の身動きができなくなった。

 そこで竜郎は、魔物を捕えている粘着水以外の水を消し去って近づくと、《レベルイーター》を発動させた。



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 レベル:30


 スキル:《ダンジョン同化》《速度特上昇 Lv.8》

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(スキルがほとんどない代わりに、《速度特上昇 Lv.8》とかなり高いな。道理ですばしっこいわけだ)



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 レベル:30


 スキル:《ダンジョン同化》《速度特上昇 Lv.0》

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 個体のレベルは他に回すために残しておき、スキルレベルを奪った。

 そうなると後は止めをさすだけだが、どうやらこの魔物は体に傷がつくとそこから一気に亀裂が入り、原型をとどめなくなってしまうらしい。それではお題達成にはならないであろう。

 なので、今回は一切傷を付けずに倒せる奈々にお願いすることにした。



「よし、SPは貰った。奈々、《吸精》で傷付けずに止めをさしてくれ」

「了解ですの!」



 そうして奈々に倒してもらい、ほぼ原形そのままに竜郎の《無限アイテムフィールド》にしまいこんだのであった。

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