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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第五章 呪われた少女編
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第166話 成長するもの

 巨大ウツボ騒動を無事収めた竜郎たちは、また空が曇りだしたので、とりあえず石の建造物の中に撤収しそれが止むまで待つことにした。

 そしてただ待っているだけなのは暇なので、丁度いいと竜郎は愛衣のスキルレベルと称号の話を持ちかけた。



「遂に戦闘スキルが、一個10になったんだよな」

「そうだよ。なかなか上がらないから、《武神》でも無理なのかなって思ってたんだけど、そんなことも無いみたいで安心したよ」

「称号は俺の奴でおなじみの修めシリーズか。効果も同じだったりするのか?」

「まだ見てないけど、多分同じじゃないかなあ」



 そう言いながら愛衣はシステムを立ち上げて、称号:体を修めし者。について調べ始めた。



 --------------------------------------

 称号名:体を修めし者

 レアリティ:10

 効果:ステータスの気力、筋力、耐久力、速力に+100。

    体術において気力操作能力上昇。

    気獣技解放。

 --------------------------------------



「だいたいたつろーのと一緒だけど、最後に一個気になるのがあるね」

「なんか凄いことができそうだが、気獣ってなんだ?」

「解んないから、とりあえずヘルプに聞いてみよー」



 そうして調べて分かったのは、気獣とは武術系スキルに宿る獣のことを指すらしく、体術には竜が、剣術には獅子が、槍術には虎が、弓術には鳥が、盾術には亀が、鞭術には蛇がなど、若干獣とは言い難い存在も混ざっているようだが、それぞれに一匹ずつ存在しているらしい。

 そこまで愛衣が話していると、リアに思い当たる話が思い浮かんだ。



「それなら、聞いたことがあるかもしれません。確か、武神に仕えし獣の御使いの神話があったはずです」

「武神に仕えし御使いですの?」

「はい。武神という武の全てを司る神様の補佐をする者たちで、他にも猿や猪、牛などもいた気がします。

 あれってその気獣というのが、モデルになっていたんですね」



 リアが昔聞いた覚えのある神話のモチーフを知り、興味深げに自分もヘルプを立ち上げて他の気獣についても調べ始めた。



「その気獣技ってのは、直ぐに使えるのか?」

「うーん。なんか体術を使う時の気力の乗りが良くなった気はするけど、漠然と気獣技ができるようになったよ!って言われてもねえ」



 どうやら条件が解放されただけで、そこから先は自分で突き詰めていく必要があるようだ。

 と、そんな話をしていた間に雷鳴も止み、外を確かめればお日様が頑張って地を照らしていた。



「まあ、そこはおいおいやっていこう。それじゃあ、次は何かの木の実?と魚探しなんだが、とりあえず向こう岸に戻って木の実の方を探すのはどうかと思ってる。どうだろう?」

「魚は居場所に見当が付きませんし、先に何かの実を探している間に見つかるかもしれませんの。ですから、わたくしもそれがいいと思いますの」

「そうだね、もしかしたら向こう側にも魚のいる池があるかもしれないし」



 特に竜郎の意見に反対を唱える者もいなかったので、一先ず魚は忘れて向こう岸にある森地帯へと捜索範囲を移すこととなった。

 そして《真体化》したジャンヌの背に乗せてもらい、一行はあっという間に最初にいた赤茶色の地面に降り立った。

 それからもう一度リアがスケッチしてくれた何かの実の形を確認し、皆がしっかり頭に入れたところでいよいよ外周部分の森林地帯に足を踏み入れていった。


 そこに入った瞬間感じたのは、梅雨時のような蒸し暑さだった。

 湖側にいたときは、少し涼しいくらいだったのにもかかわらず、急に温度と湿度が上がり、べた付く肌に竜郎、愛衣、リアは不快感を覚えた。

 そしてさらに地面の草がバネの様な螺旋型をしていて、それが歩くたびに一々足に絡んできて、それもストレス指数を上げる一助となっていた。



「ああ、くそ。この辺一帯燃やし尽くしてしまおうか……」

「いけーたつろー。全てを燃やし尽くすのだー……」

「それをしてしまったら、今探しているものまで燃やしてしまうかもしれませんよ……」

「そうなんだがなあ。この草だけでもなんとかしたいもんだ」

「これ異様に頑丈なせいで、ジャンヌ姉が前で踏んづけてくれても直ぐ起き上がってくるっすからね。邪魔くさいッたらないっすよ~」



 ちなみにジャンヌは《成体化》でも巨体故、草がその太い足に絡み付けないので進行の妨げにならず、奈々は浮遊して足を正座の状態で飛んでいるので絡まらない。

 そしてカルディナは木々の枝が邪魔で上手く飛べないので、先頭を歩くジャンヌの背に乗せてもらっていた。

 なのでこの三体だけは、移動の悩みとは無縁だった。

 そんな劣悪な道を迷わないように、竜郎がマッピングしながら進んでいくこと三十分ほど。カルディナが、新たな魔物を発見した。



「反応的に小さい魔物みたいだが、速いし空を飛んでるな」

「何匹くらい?」

「三匹だ」

「小さいのが三匹ですの? ちょっと拍子抜けですの」

「小さいからと言って、弱いとは限らないですよ」

「そうだな、小さくても強いのだっているだろうし、初見の相手は十分気を付けていこう」



 そんな事を話しあっているうちにも、それは高速飛行で三匹連なってこちらに顔を出した。

 それは全長十五センチ程で、饅頭を上から潰したような楕円で緑色の体に、針金のような細いくの字の足を片側に二本ずつの計四本生やしていた。

 そしてさらに頭の上からは、細い木の枝と笹の様に細長い葉のようなもので構成された、ヘリコプターのプロペラに形がよく似た飛行器官を生やしていた。

 その魔物らは竜郎たちの直線上に来た瞬間、一番前を飛んでいた個体が空を飛ぶためのプロペラを切り離し、手裏剣のようにリアに向かって放ってきた。



「ふっ──」

「ありがとうございます。アイさん」



 しかしそれは、愛衣が造った盾に弾かれ地面に突き刺さった。

 そしてプロペラを無くした一体は落下するのかと思いきや、すぐ後ろにいた二匹目の個体が四本の足で掴んで竜郎達の後ろ側に飛んで行った。

 このまま逃げていくのかと思えば、直ぐに反転して今度は一匹目を抱えた二匹目がプロペラを切り離して今度は奈々に放つがそれも愛衣が防いだ。

 そして一匹目を抱えたまま二匹目が落下していくのだが、その後ろにいた最後尾の三匹目が一匹目を抱えた二匹目を掴んでまた逆サイドに高速で飛んで行った。

 その間に愛衣は竜骨で造られた棍棒を《アイテムボックス》から取り出して、野球のバッターフォームを取った。



「ばっちこーい」

「遊ぶなよ……」



 竜郎がそう呟いた瞬間、三匹目がプロペラを切り離した。

 愛衣は目を見開いてその軌道を見切り、棍棒を振ってピッチャー返しを試みた。

 しかし棍棒に当たったプロペラは、斜め下の地面に飛んで行ってしまった。



「おしいっ」

「いや、全然違う所に飛んでいったからな」



 三匹目もプロペラを無くしたことで、もう後は落ちるだけ。そう思って見ていると、竜郎は落下地点に泥沼を造って待機した。

 しかし、なんと最初の一匹目のプロペラが復活し、二匹目を抱える三匹目を掴んでまた逆サイドに飛んで行ってしまった。



「あ~、あれって復活するんすね」

「だからあんなにポンポン放ってこれたのか」

「まあでも、棍棒の訓練には最適かも──ね!」



 再び放たれたプロペラを再び愛衣が打ち返すと、今度は魔物の十センチ横を通り抜けていった。



《スキル 棒術 Lv.5 を取得しました。》



「今度はホントに惜しいですの!」

「次こそ当てるよー!」



 段々と感覚を掴んできた愛衣は、それから二投目で完璧なピッチャー返しを実現させた。



「ビッ──」

「あっ、当たりました!」

「よく丸くもないプロペラを、正確に打ち返せるよな」

「こっちの世界なら、メジャーリーガーの玉も打てるね!」



 そんな呑気な事を話しているが、魔物サイドは一匹殺されもうプロペラを再生するまでの時間を稼ぐことが出来なくなってしまった。

 なので魔物は、最後の手段に出た。



「あっ、逃げるっす!」

「「させるか!」」



 竜郎と愛衣は同時にそう言って、レーザー数十本と気力の弓矢を数本放って撃墜した。

 こうしてこの場に魔物はいなくなった。



「そういえば、今更だけどアレには《レベルイーター》使わなくて良かったの?」

「ああ、なんかちっこくて早くて黒球を当てづらい割に、このダンジョンに似つかわしくないくらい貧弱な力しか感じなかったから、多分スキルも大したことないだろ」



 けれどそうなってくると、何故あんな弱い魔物がこのダンジョンにいるのかと皆疑問に感じたが、それを探求するほどの興味もあの魔物に対して持てなかったので、解明するほどでもないという結論に至った。

 なのでまた謎の実探しを再開しようとすると、ふと愛衣の持っていた天装の弓が震えだした。



「うわっ、ビックリしたあ。着信機能でも付いてるのかな?」

「スマホじゃないんだから、そんなわけないだろ。それでこれ、本当にどうしたんだ?」



 突然震えはじめた弓に何事かと皆が注視していると、リアが《万象解識眼》を発動させて原因の究明をはかった。



「どうやら、その弓は成長したがっている様ですね」

「成長したがってるって、この弓がか?」

「はい。今の使い手であるアイさんに、より適した姿への成長を試みている最中の様です。

 この弓に使われている素材は(▼∮ÅΘ£)と言うらしいんですが、(□Π●)によって(§@#β*δ▼τψ☆)なのです。

 ですから、そう言ったことも可能なようですね」

「後半何言ってるかさっぱりだったけど、とりあえず私はどうしたらいいのかな」



 《万象解識眼》の持ち主にしか理解できない箇所はスルーして、愛衣は今も震える弓を心配げに見つめた。



「それなら簡単です。アイさんから気力を注いであげてください。それが最後の一押しになる筈です」

「わかったっ」



 リアに言われるがままに愛衣は、弓が求めてくるままに気力を全力で注ぎ始めた。

 その量、実に保有する気力全体の九割という、常人ではどんなに頑張っても捻出できない程吸い取られ、急激な減少に眩暈がし、愛衣は膝から力が抜けた。

 それに直ぐに反応した竜郎は、愛衣の腰を掴んで自分に寄りかからせた。



「ん……ありがと…」

「気にするな。しかし、随分吸い取られたみたいだな」

「まったく、この弓も少しは加減しろですの!」



 竜郎と奈々は一緒に愛衣に生魔法で、気力の回復を早める魔法を使って行った。

 すると地の回復力と称号、生魔法の三つのおかげで、直ぐに愛衣の気力は完全回復した。

 そしてその頃には、眩暈がしても離さなかった天装の弓も無事、望む形へと成長を遂げたのであった。

次回、第167話は2月8日(水)更新です。

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