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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第五章 呪われた少女編
166/634

第165話 一つ目のお題

 当初の魚捕りとは打って変わってしまったが、要求されている三つの内の一つで間違いなさそうなものがそこらじゅうに溢れている状況に、竜郎たちは落ちかけていたやる気が戻ってきた。



「くるよ!」

「ああ、ジャンヌ、アテナ!」

「ヒヒーーン!」「はいっす!」



 相手が動き出しそうなのを感じ取った愛衣の声に反応して、竜郎はジャンヌとアテナに手伝ってもらい、光魔法で強化された雷嵐を造り上げて今立っている小島を囲った。

 これでひとまず安心かと思いきや、巨大ウツボたちは光雷纏う嵐の中に構わず突っ込んできた。

 それに一同ギョッとしていると、体をぐいぐいと捩じらせて無理やり嵐をかき分けやってくる。



「「「「「ギュルォォォオオルゥゥゥウウ───」」」」」

「一応ダメージは入ってるみたいだが、あんまり効いてないな」

「雷魔法に耐性があるっぽいっす」

「ブルルルッ」



 冷静に分析している間にも、一番近くにいた五匹が嵐から顔をだし、電撃で焼け焦げた身を乗り出して、前後左右から竜郎達に襲い掛かって来た。

 だが、すでに愛衣たちが迎撃準備を整えていた。



「待ってました───よっと!」



 まず愛衣が、右手に持った宝石剣から気力の斬撃を飛ばして正面の一体の首を切り落とし、左手に持った天装の弓から出した二本の槍を操作し、二体の眉間に的確に突き刺し脳を破壊した。



「リア! 今ですの!」

「はい。ナナ!」



 残り二体に、奈々が呪魔法で鈍足の呪いをかけて動きを緩やかにした瞬間、リアは竜郎から貰った巨大金槌に、《鍛冶術》によって造られた同じ大きさと形の赤茶色の金槌を重ね合わせ同一化させると、さらに赤茶色の炎を纏わせた。

 それからそれで、地面を叩く。すると巨大金槌が纏っていた赤茶色の炎が大地に移り広がって、直径一メートルの火のサークルが出来上がる。

 そして右足を一歩前に踏み出して金槌をまた地面に振り下ろすと、固かった地面が泥沼のようにぐにゃりと形を変えてめり込んでいく。



「はあああっ!」



 リアが気合いと共に、金槌をノロノロと近づく巨大ウツボに向かって斜め横に振りぬいた。

 振りぬいた金槌に、赤茶色の炎を纏った地面が餅のようにくっついて伸びていく。

 そして完全に金槌を振り終えた時には既に剥がれ土は姿を変えていき、大きな弧を描く刃と化し、赤茶色の炎をリアが消すとその形で固定される。

 そしてその瞬間、奈々が鈍足の呪いを解いてウツボを普段の動きに戻した。

 すると、今ままで力いっぱい進もうと力んでいたウツボは、弾かれるように勢いよくリアが作り上げた土の刃に突撃していき、自らの勢いで二体の体が横に切断された。



「上手くいきましたの!」

「ナイスタイミングです!」



 二人でハイタッチをして、初めてやってみた協力技に喜びの声を上げた。

 あっという間に五体が殺されてしまったことに動揺したウツボサイドは、こちらにこようとしていた個体たちもそれを止め、竜郎たちから距離を取った。



「逃げる気っすか?」

「いや、魔法を使うみたいだ、カルディナ、解析を頼む!」

「ピュィーーーー」

「タツロウさん! カミナリの魔法のようです!」

「発動前に解るってすごいな──アテナ、一緒に防御を頼む!」

「了解っす!」



 竜郎の魔力視では魔法を使う前兆は見えるが、それがどんな魔法なのかは発動してからでないと解らない。

 なのにリアの目では、発動する兆しでどんな魔法が来るかまで解ってしまう。これほどのアドバンテージは無いだろう。

 竜郎は上空に雷魔法と似た魔力が集まっていくのを感じ、光魔法でブーストしつつ、こちらもアテナと一緒に雷魔法を発動させ、相手のカミナリを外へと逃がすように電気の網を張った。

 そして外の嵐の壁は、ジャンヌとナナで鈍足の呪いの嵐に切り替えてもらった。

 リアはその間に土を金槌で叩いて回り、先ほどと同じように弧の刃を三百六十度に張り巡らせていた。

 そして数十匹のウツボが魔法を一斉に発動させ、竜郎たちのいる小島に向けて数えきれないほどのカミナリを何本も落としていった。

 しかしそれら全て竜郎とアテナの魔法が受け止め、湖面に流して無傷で終わった。



「うひゃあ、今のは一人だったら厳しかったすね」

「ああ、数の力ってのを改めて思い知らされたな」

「ピュィー」

「解析できたみたいっすよ」

「そうか、ありがとう。でも見た感じ今の俺の樹魔法のレベルだと、アレの逆位相を完全に再現できそうにないな──ってまた来るぞ」

「はあ、結構疲れるんすけどねえ」



 再び放たれた雷を、今度はカルディナと一緒に樹と解で完全ではないが、弱体化できる逆位相の魔法を行使し、さらにアテナと一緒に先ほどのカミナリを受け流す魔法も同時に行った。

 それはやや竜郎の負担が増えたものの、全体的には楽になったので解析したのは無駄になることは無かった。



「うーん。台座にあげる分なら、私が眉間に槍を刺して倒した奴が綺麗だし、それでいいかな」

「確かにあれならいけそうだな。《アイテムボックス》にいれておこう」



 愛衣の倒した巨大ウツボが小島に乗り上げていたので、一匹回収しておいた。


 その間に、向こう側に動きがあった。

 突撃もダメ。カミナリもダメ。と、悉く自分たちの攻撃が効いていないことを察したウツボたちは、しばらく湖面に顔をだしてウロウロしていたが、三分の二の個体は湖底に帰っていき、獲物をみすみす諦めきれない残りのモノだけがその場に残った。



「数が減ったな。これなら、アテナだけでも大丈夫そうか?」

「さっきの半分以下になったっすから、余裕っすよ」

「なら、ちょっとこの場を頼む。俺はさっき愛衣が倒した奴でいいかどうか、台座の場所に戻って確かめてみる」

「もしあれじゃあダメってなったら、残りの奴をもっと綺麗に捕まえないといけないしね」

「そういうことだな。じゃあ、さっといってくるな」



 そう言い残して竜郎は石の建造物に駆け寄ると、直ぐに中に入って台座の前に立った。



(あれ、これってどうやって台座に渡せばいいんだ?)



 先ほどのウツボは巨大すぎるため、この小さな建造物の中に納まることはできない。なので一度戻ってリアに聞いてこようかと思いつつ、なんとなく台座に触れると突然、竜郎のシステム画面が開いた。



 ----------------------------------------------------------------

     アイテムボックス内に、既定の素材を確認しました。

     ダンジョンに捧げますか?


             はい / いいえ

 ----------------------------------------------------------------



(まさかのシステム経由パターンか。こりゃ、システムとダンジョンにも何か関係があるのかもな)



 当然ここでは「はい」を選択すると、竜郎の体から光の粒子が湧きあがり、それが台座に吸い込まれていった。

 すると台座に刻まれていた、蛇だと勘違いしていたウツボの絵が消えていった。



「これで一つ目クリアだな。湖にいないとなると、魚はどこにいるんだろう」



 そんな独り言をつぶやきながら、竜郎は急いで皆のもとに走っていった。


 竜郎が戻った頃には、既にウツボの数は二匹しかいなかった。

 ジャンヌと奈々の混合魔法で造られた呪いの嵐も解除されており、小島の周りの湖はウツボの死体が浮かんでいた。

 そして肝心の二匹も、愛衣とアテナのタッグに逃げることも攻撃することも許されずに追い詰められていた。

 愛衣とアテナは盾で造った足場で湖面をピョンピョン飛んで、少し離れた場所に居たので、竜郎は念話で現状報告をした。



『おーい。無事一個クリアできたぞ』

『そうなの? じゃあ、この二匹はどうしよっか』

『生け捕りできそうなら、《レベルイーター》を使っときたいが、無理そうならやっちゃってくれ』

『解ったー』



 愛衣は竜郎に返事を返すと、自分と一緒にウツボを追いかけ回しているアテナにも現状を報告する。



「一個クリアできたってー!」

「おおっ、よかったっすー」

「できれば、残りの二匹は生け捕りがいいってさー!」

「じゃあ、島の方に追い込むんで一発頼むっすー」

「あいよー」



 でかくて持ち運びが不便なので、アテナが愛衣の造った気力の盾を足場にしてウツボたちを追い立て回し、自分の力で島の方に向かうように仕向けていく。

 すると二匹はとても敵いそうにないこの二人を相手取るよりも、島にいるやつらの方が弱そうだとむしろ積極的に竜郎たちの方に向かっていった。



「何か勝手に進んでくれてるっすねー」

「わざわざ敵地に自分から行くなんて、お馬鹿さんなのかな?」



 愛衣たちには魔物の考えなど伝わらなかったので、その行動に疑念を持ちつつ限界まで後ろを付いていくと、島へ後少しという所で愛衣は《身体強化》のレベルを一気に10まで引き上げた。

 そうして右足の一歩で斜め上に飛んで、前をいく巨大ウツボの頭上にまで舞い上がり、左足の一歩で《空中飛び》を使って天を蹴り落下して手加減パンチで脳天を叩いた。

 この一撃で一匹のウツボは頭蓋骨にヒビが入り、白目を剥いて瀕死状態で気絶した。

 そして状況が理解できず、突然倒れた仲間の方に振り向いた瞬間、顎の下にいた愛衣に蹴りあげられ、顎骨を粉砕されて口がひしゃげた状態で痙攣しながら気絶した。と、その時だった。



《スキル 体術 Lv.10 を取得しました。》

《称号『体を修めし者』を取得しました。》



「おろ?」

「どうしたんだ愛衣?」



 首を傾げながら目前に着地してきた愛衣に、何かあったのかと心配になりながら竜郎はそう問いかけた。

 すると、先ほど聞こえたアナウンスのことを説明された。

 しかしそれについて何か言う前に、アテナに早くしないと魔物が死んでしまうと言われてしまったので、その件は一旦置いて《レベルイーター》の方を優先することにした。



 --------------------------------

 レベル:37


 スキル:《かみつく Lv.5》《落雷 Lv.4》《雷耐性 Lv.5》

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(やっぱり雷耐性のおかげで、あの中を突っ切ってこられたんだな。特定の魔法じゃなくて属性全ての耐性持ちってのは、魔法使いにとっては厄介かもしれないな)



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 レベル:37


 スキル:《かみつく Lv.0》《落雷 Lv.0》《雷耐性 Lv.0》

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 そうして似たようなレベルとスキル構成をしたもう一匹からも、無事死ぬ前にSPを吸収することができ、後はレベルの低いアテナとリアが止めをさしたのであった。

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