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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第五章 呪われた少女編

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第158話 海路の魔物

 二枚貝の魔物(命名:びっくり貝。理由:だって、ビックリ箱みたいにびよ~んて出てくる貝でしょ? by愛衣)を、七匹ほど狩ったことにより、竜郎のSP借金は見事返済したうえでプラスに、そしてリアもレベルがここだけで18まで上がっていた。



「食えはしないが、楽に狩れるし美味しいな」

「だね。最初の奇襲以外は一体一体バラバラなとこにいるし、あったかいのが近づくと何にだって飛びついてくるし」

「魔物ってアホっすね~」

「ああ、だけど噛みつきは十分脅威になりえるから、油断しすぎないようにな」



 スキル構成を教えて、いかに危険かは既に情報共有済みなので、全員素直に頷いた。



「それで、これからどうしよっか? せっかくボートも手に入れたし、海からいく?」

「そうだなあ……。カルディナ、空と海だとどっちが楽だと思う?」

「え? 空の方が楽じゃないんですか?」



 ボートはモーターも付いていなければオールすら付いていない物で、そんなものを一々漕ぐよりはジャンヌに乗せてもらった方が楽なのは明白である。

 なので素直な疑問としてリアが竜郎を見て問いかけると、カルディナがその理由を教えてくれた。



「ピュィィィィーーー。ユィーーィュッ。ピィーーュー」

「空は空で、魔物が雲の上から何匹も狙ってるみたいですの。けど、海の中にも何かいるようなので、どっちも面倒なのよ。だ、そうですの」

「そうなんですね。ありがとうございます、カルディナさん」

「ピィッ。ピユィーーーピィー」

「けど、どちらかと聞かれれば海の方が敵は弱そうじゃないですか?

 と、カルディナおねーさまがおっしゃってますの」

「だな。より強い魔物の相手をしなきゃいけない空路か。

 それよりも弱い魔物だけれど、体力を使いそうな海路か。それなら愛衣はどっちがいい?」

「う~ん。途中で変えてもいいんだし、まずは海路で行ってみようよ。せっかくお舟も選んだんだし」

「それもそうか」



 ということで、一同海路から次の小島に行くことに決めた。

 なので竜郎たちは一番近そうな島をこの場所から見渡して探し、そちらの方角の砂浜に歩いていった。


 砂浜に着くと竜郎が先ほど愛衣とリアが選んでくれたボートを二隻取り出し、まずは海の手前に置いた。



「まあ何も馬鹿正直に手で漕ぐ必要もないだろうし、適当に帆でもつけて風魔法で行けば楽だろ」

「それは楽そうっすね~」

「あっ、駄目ですそれは」

「駄目って、何故ですのリア?」



 竜郎が《アイテムボックス》から鉄のインゴットを取り出して、帆の支柱を取り付けようとしていると、リアが止めに入ってきた。



「それは少しでも改造しようとすると、結合が解けてバラバラになってしまいます」

「そうなのか? じゃあ、試しに一つ」



 竜郎が実験だとばかりに、ボートの真ん中に鉄の支柱を底と癒着させて立ててみた。すると、リアの言った通りバラバラバラッとトランプタワーが崩れた時のような音を立てながら、ボートが破片のゴミと化した。



「おう……。バラバラって、文字通りバラバラなんだね」

「ですね……」

「うーん。改造がダメなら、船床と同じ形の足を造ってはめ込むのはありか?」

「ああ、それならいけるはずです」



 竜郎は壊れた分を補てんするためにもう一隻取り出して、闇魔法で軽く頑丈にしながら鉄を薄く船床に流し込んで模ると、固めてそのまま中央を伸ばして支柱にした。

 すると今度は廃品にすることなく、無事支柱の取り付けに成功した。

 そして今度は軽銀のインゴットを取り出し、大きな三角形に薄く延ばして帆の役割にするために支柱に取り付けた。

 それをもう一つの船にも行い、帆の付いたボートが二隻完成した。


 さっそくボートを海に浮かべると、竜郎達は二班に分かれて乗り込んでいく。

 右のボートには、竜郎、愛衣、カルディナ。

 左のボートには、小サイ状態のジャンヌ、奈々、リア、アテナが乗り込んだ。

 ちなみに奈々は、ジャンヌの上に乗っていた。



「んじゃあ、出発だ。恐らく海中にいる魔物が途中で出てくるだろうから、それを気に留めておいてくれ」

「はーい」「ピューイ」「ヒヒン」「はいですの」「解りました」「了解っす~」



 六者六様の返事を耳にしながら、竜郎はジャンヌと目を合わせて風魔法を使用し、帆に当ててボートを海原へと押し出していった。

 竜郎達の乗るボートとジャンヌたちが乗るボートは横に並んだままスムーズに数百メートル先にある小島を目指していた。

 そしてその間、いつ襲撃があるのだろうと気を張りながら半分ほど進んできたが、未だ海中から魔物は現れない。

 向こうの魔物達側からもこちらに気付いているような素振りは見せているのだが、一定の距離を保っているだけで、逆に竜郎は不気味に感じた。


 そうして完全に次の小島までの距離半分を過ぎた頃、海中から一斉に一メートル前後の個体の反応が、海面に向かって突進し始めた。



「来るぞ!」「ピュィーーーーーー!」

「「「「「───っ!」」」」」」



 全員がそれぞれ身構えた瞬間、あちら側も一斉に海面から飛び出してきた。



「「「「「オオォォォーーン」」」」」

「「「「「オオォォォーーン」」」」」

「「「「「オオォォォーーン」」」」」



 それはオオカミのようなフォルムではあるが、灰色のウェットスーツのような質感のツルリとした短毛に、四本の水かきの付いた足をもつ魔物で、それらが取り囲むように無数に水面に着地し、ここに獲物がいると知らせているのか一斉に遠吠えを始めた。



「うじゃうじゃと! カルディナ、アテナ一緒に頼む!!」

「ヒヒーーン」「おっけーっす!」



 それは風と水と電の混合魔法で、水と風で海水を巻き上げ竜巻を起こし、そこへ雷魔法混ぜることで海水を通って電気が流れ、さらに追撃するという魔法だった。

 竜郎達の船の周りにそんな魔法を五つ発生させ、取り囲んでいた魔物たちは海水ごと竜巻に巻き込まれ、電気で痺れ動きが鈍ったところで、風の渦に引き千切られる。

 これで周囲にいた魔物は全滅したが、仲間の死体が海面に散らばるのを見るや否や、海中にいた個体たちはまた距離を取ってこちらをうかがい始めた。



「これで、もう来ないかな?」

「いや、向こうはまだ戦意が薄れていない。また来る気だろう」

「しかし、これだけ無残に敗北したというのに、懲りなさすぎですの」

「魔物は基本同じ個体以外は皆敵ですからね。

 それにさっきのは縄張り意識がかなり強い魔物のようですから、少なくともその領域から出るまでは執拗に狙ってくるはずです」

「リア、情報をくれるのは有難いが、そんなにポンポンその目を使っていたら体力が持たないぞ。まだ序盤なんだから、程々にな」

「はい。けどステータスが上がって気力が上がったせいか、体力の回復も早くなってる気がするんです。なので、これくらいはまだへっちゃらです」



 両手の拳を握りしめて、まだ元気なんです。もう虚弱体質じゃないんです。とばかりにアピールされ、竜郎含むリア以外のメンバーは微笑ましさ半分、苦笑い半分といった表情を浮かべた。



「なら、いいんだけどな。けど途中で倒れたりしたら、しばらくスキルは禁止! だからな」

「はいっ!」

「でもまあ、念のため生魔法をかけといてあげますの」

「ありがとうございます。ナナ」



 そこは変な意地を張らずに素直に奈々の生魔法を受け入れていたので、竜郎は安心して海中の魔物に意識しつつ、風魔法でボートを押し出していった。

 しかしそれから数メートルも進んだところで、敵に動きがあった。

 なんと竜郎たちが目指していた小島の砂浜手前の海面に現れ、横一列に立って先ほどの魔物が待ち構えていた。

 そしてさらに、海中からもアクションを起こしてきた。

 こんどは無策に飛び出してくるのではなく、一匹がまず飛び出し海面の上を狼が如く走り回り、竜郎たちの耳目を集めた。



「あれは、囮っすかね」

「私もそう思うな。怪しすぎるもん」

「だが、かと言ってほうっておくのもできないし、愛衣はアレを弓で射れるか?」

「ちょっと速くて当てづらいね。でもやってみる」



 竜郎ではその一体の魔物の動きを目で追えないので、愛衣に頼んで天装の弓で狙いをつけてもらう。

 しかし掠りはするものの、相手の速さも相当で致命傷にはならない。

 そんな風にして一匹にまごついていると、もう一匹が逆サイドに現れて、こちらも特に攻撃を仕掛けてくるわけでもなく、海面を走り出した。



「しょうがない。二匹相手に勿体ない気もするが、また範囲魔法で潰すぞ。

 何をするつもりかは解らないが、アレをほうっておくのは不気味だ」



 竜郎はまた先ほどと同じ混合魔法で片付けるため、カルディナとの水中探査魔法の範囲を狭めて、こちらに意識を向けた。

 そして魔法が発動して思惑通り二体を打倒したのだが、その瞬間狭めた探査範囲外の海中から、竜郎の乗っているボートの船底めがけて三匹が突進をしてきた。



「─────まずいっ。愛衣、まし─────」

「わかってる!」



 心象伝達と共に今の状況を伝えると、竜郎が最後まで言い切る前に、鎧から黒い気力を発生させて、船底に盾を直接作ろうとした。

 しかし、地上と違って海中では盾の生成速度が格段に落ちていて、魔物の突撃に間に合わなかった。



「たつろっ」

「───うわっ」



 ダンジョン製のボートに魔物の突進を防ぐ耐久性はないと判断した愛衣は、間に合わない盾の生成は一旦放棄して、上にジャンプして逃げた。

 すると三匹の魔物は、船底を突き破って竜郎のいた場所に歯をガチンと鳴らして空を噛んだ。



「こんにゃろ!」



 竜郎は下にいる魔物にレーザーを打ち込んだ。そのレーザーは一匹を屠ったが、残り二匹はそそくさと海底に逃げてしまった。



「すばしっこいな。こんなの一々相手にしてたら時間がかかってしょうがないぞ」

「うーん。それじゃあ、こういうのはどうかな。あのね──」

「ん? ああそれなら──って上!」

「はあっ! ────でりゃああああ!」



 ジャンプでの上昇はとっくに終わり今は落ちているだけで、着地方法を愛衣が心象伝達で提案してくれたのだが、高く飛び過ぎたせいで上にいる連中まで数匹ちょっかいをかけてきた。

 それは嘴を閉じると、ドリルの様に溝の入った突起物になる黄色い六十センチほどの鳥で、横に回転しながら落下してきたのだ。

 しかしそれを愛衣が天装の弓を振り回してぶん殴って倒すと、さらに来そうだったので宝石剣に持ちかえて、全力で気力を纏わせた刃を上に向かって七度振り払った。

 すると圧倒的な気力の斬撃が次々に打ち放たれて、こちらに来ずに雲の上を飛んでいたものまで巻き込んで空の襲撃をやり過ごした。


 竜郎と愛衣が無事なのは見て取れたので、他のメンバーは水中からの追撃を警戒しずっとそちらを睨んでいた。

 そして竜郎と愛衣が着地する瞬間を狙っていた魔物に、カルディナとジャンヌの混合魔法で土塊を風で飛ばして追い払い露払いをしておいた。

 するとそこへ、愛衣が黒い気力を鎧から展開しながら足元に集めると、水面ギリギリで盾を生成して足場にし竜郎をお姫様抱っこの状態で着地した。



「やっぱり、これ足場になるよ!」

「物理攻撃も防げるんだから、そりゃこれくらいできたんだよな。盾として使うことしか頭になかったから、盲点だったよ」



 愛衣の気力で造った足場なら、下の水中にいる魔物では突破できない硬度を誇る。

 なので愛衣は足場になる事をしっかりと確認した後、周囲数メートルの海面に盾を敷いていき、即席の陸を造り上げた。

 こうして竜郎たちは狭いとはいえ、こちらに有利な即席フィールドに降り立ったのであった。

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