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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第五章 呪われた少女編

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第154話 新たな仲間

 鍛冶師になる条件。

 それは、《鍛冶術》というそのままの名前のスキルを手に入れられれば、クラス名が強制的に鍛冶師へと変わる。

 しかしそのスキルは、初めから取得できるわけではない。

 まず《槌術》のスキルをレベル3まで上げたうえで、《火魔法》と《土魔法》のスキルレベルを1レベルでもいいので取得する必要がある。

 そうすることで、その三つのスキルと置換する形で《鍛冶術》をSPなしで取得できるのだ。

 しかしそれは、《土精の祝福》などのスキルから一切恩恵を得られない人間の場合である。

 この《土精の祝福》は《鍛冶術》を前提にしたスキルのため、そこまでの道のりも大分緩くなっていた。

 今回、リアは+8の《土精の祝福》を持っているので、《火魔法》と《土魔法》は取得しなくても良く、《槌術》だけを上げれば取得条件を満たせるのだという。

 それはできるだけ手間は短縮したい竜郎たちにとっては朗報であったが、本当に何もない所から上りつめた人たちに改めて尊敬の念を抱いた。



「ってことは、まずリアには槌を武器に持たせる必要があるのか」

「それなら、レベル3のダンジョンで戦ったトンカチ虫の戦利品はどう? たつろーもいくつか持ってきてたよね」

「ああ、一応全部は売らずに何個か取っておいてある。転ばぬ先の何とやらだな。よっこいせっと」



 そうして竜郎は《アイテムボックス》から、以前倒した魔物の素材をそのまま取り出した。



「これは……。ちょっと大きくありませんか?」

「わたくしも今のリアのステータスでは、持ち上げることすら困難だと思いますの」

「あ、やっぱり?」

「まあ、俺でもこれを持って歩けと言われても無理そうだからな」



 それは、約一メートルはある大きな金槌。

 今まで寝たきりで碌に筋肉も付いていないうえに、まだ1レベルのリアにはこんなものを持つことはできない。

 なのでもっと小さい金槌を買ってくるなりして用意するのが一番手っ取り早いのだが、レベルを上げるには相手に止めをさす必要がある。

 レベル7のダンジョンの敵を竜郎達で瀕死にまで追い込んでも、小さな金槌で有効打を与えられないかもしれない。

 なので多少手間でも、もう一つの方法を取ってみることにした。



「奈々、俺と一緒にリアに筋力アップの呪魔法をかけてくれ」

「わかりましたの」



 竜郎と奈々の二人がかりで、リアに筋力が上がるように全力で呪魔法をかけた。



「んじゃあ、持てるかどうかやってみてくれ」

「解りました」



 リアはどう見ても自分のガリガリの細腕では持ち上がりそうにない、身の丈半分以上もある金槌の柄に両手を添えた。

 そして足を肩幅よりやや大きめに開いて力を込め、全身の筋肉を使うようにグッと持ち上げようとした。

 すると、やや危なげながらも見事竹刀のように上段に構え、ゆっくりと下へと振り下ろした。

 しかしそこまでは良かったのだが、さすがに重力に逆らって床を傷つけないように振り降ろすには限界だったらしく、前にのめり込みながら金槌ごと地面に突撃していった。



「おっと、危ない」

「わぷっ。ア、アイさん。ありがとうございます」

「いいってことよ」



 愛衣は倒れ込んでくるリアを胸に抱きとめ、金槌は右手一本で奪い取って軽々と地面に置いた。



「今の感じだと戦闘では無理そうだが、止めの一撃で叩きつけるだけなら何とかできそうだな」

「そうだね。今のはゆっくりと降ろそうとしたから、重さに負けちゃっただけみたいだし」

「ですけど、これからは虚弱体質ではなくなったのだから、もっと筋肉をつけることをお勧めしますの」

「ですね、それは私も思いました。今の私では、ステータスだけでは補いきれそうにないですし」

「それもそうだけど、もう少しお肉もつけようね。これだと、細身ってレベルも過ぎちゃってるから」



 そう言いながら愛衣は胸に抱いた時の感触を思い出して、リアの腰辺りを触ってみれば不健康極まりない痩せ方をしていた。



「まあ、いきなり詰め込んでも逆に体に悪いだろうし、そっちは徐々に何とかしていこう」

「そうですね。これからは食事中に体調を崩すなんてことも無いでしょうし、しっかり食べて、しっかり鍛えて、超健康優良体を目指しますね!」

「別に普通でいいですの」



 鼻息荒く気合たっぷりなリアに、ついていけませんの。とばかりに奈々はため息を吐いた。

 それから竜郎たちは適当に宿の人に夜食を作ってもらい部屋でいただいた後は、レベル7のダンジョンに行くにあたって、必要なものを話し合っていた。



「レベル3でなんとなくダンジョンについては掴んだが、今回は一気に飛んで7だ。

敵の格も変わってくるだろうし、ハイキング気分で行けば痛い目に遭う気がする」

「だね。それに今回はリアちゃんを守りながらだから、気を引き締めないと」

「さすがにレベル1の子を無防備に晒したら、攻撃が掠っただけでも下手したらご臨終コースですの」

「アハハ……、もう死ぬのは勘弁です…」



 本来なら、低レベルのダンジョンを探して潜った方が安全にレベルを上げられそうではある。

 しかし、そこだとSPの実入りは少ないし、レベル上げも時間がかかる。

 ところが、レベル7にもなれば危険もあるがリターンも大きい。

 リアだけでなく、愛衣やカルディナたちのレベルも上げられるであろうし、SPもマイナス分の補填は直ぐにできるだろう。

 そのどちらかをということを考えた結果、竜郎はハイリターンを選んだのだ。

 しかし、何も対策を講じないというわけでもない。今回は戦力外の子を連れてさらに、それを守る必要もあるので、戦闘に集中できる人員が減ってしまう。

 ということで、減ってしまうのなら増やしてしまえばいいじゃない精神で、竜郎は新たな魔力体生物の創造を提案した。



「また新しい子が増えるんだ。うーん、そうなるとどういう子がいいんだろ?」

「愛衣もジャンヌも前衛向きだが、今回は純粋な前衛での戦闘要員かな。

それに後もう一人くらいは人型がいた方が動きやすいだろうし、そっちのタイプがいいかなと思ってる」

「人型もいいけど、動物型も可愛いよ?」

「そうなんだが、奈々みたいに街中で堂々と連れられる子が、もう一人くらいいたほうがモーリッツ対策にもなるだろう」

「あー。カルディナちゃんも、ジャンヌちゃんも目立つからねぇ。

そういう意味でいくと、確かにもう一人くらいはいてもらった方が安全かあ」

「まあ狙った通りに生まれるかは微妙なところだし、とりあえずやってみるか」

「おー」



 そうして新たな仲間を生み出すべく、竜郎は竜力と魔力を合わせ、その竜魔力で《陰陽玉》のスキルを起動した。

 するとシステムの補助によって、直ぐにいつもの球体が目の前に現れた。

 そしてそこに竜郎は、どんな存在になってほしいのか思いを込めていく。



(前線に立っても決して折れない。そんな強い存在が欲しい)



 球体が次第に形を変えていき、やがてそれは竜郎のイメージした通りに人型をかたどっていく。

 そして目の前には、愛衣より少し背の高い、白髪に黒のメッシュのかかった癖毛のセミロング、そしてその髪からちょこんとネコのような耳が出ていた。

 さらに目元はやや吊り上って、無表情だとクールな印象を受ける獣人らしき女性で、黒の短パンに白のTシャツを着て、その上に黒のジャケットを羽織った格好で立っていた。



『なんか、見た目は恐そうな子だね。反抗期だったらどうしよ』

『反抗期って、そんなのないと思うぞ』

「………………」



 竜郎と愛衣が念話でこっそり話している間も、じっと二人の方を見つめていた。

 それに黙っているのもなんなので、早速竜郎は話しかけてみた。



「えーと、はじめまして」

「………………? あっ、はじめましてっす。よろしくっす~」

「ありゃ、結構フランクなのね」

「そっすね。堅いのは苦手なんでー。あっ、姉さんたちもどもどもっす~」

「ピィー」「ヒヒン」「ですのー」



 見た目と喋り口調のギャップに対して、カルディナたちは特に思うことは無いようで、普通に挨拶をしていた。



「えーと、君は何か変わった特性とかあるのかな? 奈々は、やや透けたりする体質みたいだが」

「あ~、そういう変わったのは無いっすよ。

ただ、とーさんが前線で戦うことをイメージしていたおかげか、見た目以上に力は強いみたいっすけど」

「へー。あ、そういえば魔法は渡してないよね?」

「ああ、前で戦うとなると何がいいかなと思ってな。

どうせだったら、本人の特性を見てから決めようかと。君は何か使いたい属性はあるか?」

「使いたい属性っすか? ん~そーっすね~」



 頭をゆらゆらさせながら数秒彼女は考えるそぶりをみせると、やがて一つの属性を口にした。



「あたしが選んでいーって言うんなら、雷魔法とか相性いいかもしれないっす」

「そうなのか? でも、まだレベルは低いが?」

「あー、いいっすよ。いずれは上がっていくんだろうし、のんび~りいくっす」

「わかった。そう言うのなら、雷魔法の因子を君に入れよう」

「たのむっす~」



 彼女にしたら割と一生を左右するほどの選択なのかもしれないのに、何ともゆる~く受け答えするものだから、少し竜郎は不安になった。

 しかしそうは言っても本人の希望なので、人型からただの魔力の塊の状態である球体になってもらい、竜郎は彼女に雷属性の因子を移植した。



「お~、ありがとっす~。これで面白いことができそうっすー」

「そうか、それじゃあその面白いことは外に出た時にでも見せてもらうとして、そろそろ名前を決めたいな」

「私の出番ってわけね!」

「いや、別にそういう決まりがあるわけではな──」

「よっし、頑張って付けるからねー!」

「聞いてねー…」



 カルディナ、ジャンヌ、奈々と全て愛衣が名付けてきて、この子だけ違うというのも可哀そうな気もするので、そう言う意味ではまあいいかと竜郎はよい名前が出るように祈った。

 そんな竜郎の気持ちはいざ知らず、愛衣はまずその特徴的な髪型に着眼した。



「メッシュちゃん!」

「いやいや、髪色からとか安直すぎるだろ」

「すーちゃん!」

「多分口調からなんだろうけど、奈々の時もそれ却下だっただろ」

「むむむ……、そうなると雷魔法の方から攻めてみるかな。カミナリ、雷といったらゴロゴロピシャーン…───ゴロリ!」

「工作の手伝いが得意そうだな。って、女の子!」



 やはりその後も竜郎の睨んだ通り難航していき、あれじゃない、これじゃないと言い合った末に出てきたのが……。



「うーん、そういえば竜郎は戦うことをイメージして生み出したんだよね」

「ああ、今回は純戦闘要員がいいなあと思ってたからな」

「戦いっていうと、そんな感じの名前があったような。…………アテナ」

「あてな? ああ、アテナか。確か、戦いとか知恵とかそんなのを司ってる女神だったか」

「うん、なんかでそんな風に扱われてたのを思い出したの」

「まあ、この子の外見は日本人ぽくは感じないし、いいかもな。君はどうだ?」

「とーさんとかーさんが決めた名前なら、なんでもおっけ~っすよ。特にこだわりも無いっすからねえ」

「自分の名前だって言うのに、ざっくりしてんなー。じゃあ、アテナってことにするが、いいんだな?」



 念のために竜郎はもう一度確認をしたが、特に考えるそぶりもなくゆっくりと頷いて了承した。



「りょーかいっす。これからは、名をアテナとしてがんばるっすー」

「なんだか、ぽやりぽやりとした子ですの。姉のわたくしたちが、しっかりせねばいけませんの!」

「ピュィー!」「ヒヒーン!」



 戦いをイメージとして生まれたはずの子にしては、あまりにもくて~とした性格に感じ、姉たちはこれからアテナを助けていこうと誓いあったのだった。

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