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レベルイーター  作者: 亜掛千夜
第一章 森からの脱出編

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第11話 気力の使い方

 二時間の見張りを終えた竜郎は、愛衣を起こすためにまた生魔法を発動させる、今度はゆっくりと眠りから呼び覚まし、寝起きを良くする魔法だ。



「ん……ん、んん……たつろー? 交代の時間?」

「ああ、そろそろ頼む」

「ん、んんーっ。あらら、なんか調子がいい。やっぱ、ちょっとでも眠ると違うんだねー」



 愛衣は伸びをしてから座る体勢になると、肩をぐるぐる回して思いのほか疲れが取れていることに驚いていた。それに密かに、竜郎は魔法の感触を得ていた。



「たつろーは二時間なにしてたの?」

「愛衣の寝顔を見てた」

「何してんのっ」



 顔を真っ赤にしながら、涎が垂れてないか確認している愛衣を愛おしげに一通り見つめてから、竜郎は本当のことを語った。



「冗談だよ。ちゃんと見張りをしながら瞑想モドキをしていたんだ」

「瞑想モドキ?」



 それから竜郎は軽く自分のしていたことを説明し、新しくスキルを二つも得たことも同時に伝えた。

 それを聞いた愛衣は「じゃあ、私もやってみようかな」と言ったところで、竜郎は愛衣に眠気覚ましの生魔法を使い、自分は眠る準備をしだす。



「んじゃあ、二時間後にまた起こしてくれ」

「はーい」



 そうして、愛衣の見張りの時間が始まった。



(心を落ち着かせて、周りの音を集中して聞けばいいんだっけ)



 愛衣は竜郎が言っていたことを思い出しながら、森の奏でる音に集中していった。



(たつろーと話してた時はわかんなかったけど、色んな音があるのね)



 しだいに愛衣の集中力も増していき、静かに胡坐を組んで座り、十分もした頃。



《スキル 気力回復速度上昇 Lv.1 を取得しました。》



「あれれ?」



(なんか思ってたのと違うのが取れちゃった。おっといけない集中集中!)



 また十分後。



《スキル 気力回復速度上昇 Lv.2 を取得しました。》



(ちょっとっ、これじゃ集中できないじゃない! 集中集中!)



 またまた十分後。



《スキル 気力回復速度上昇 Lv.3 を取得しました。》



(こいつっ、私になんとしてでも《集中》を覚えさせないつもりね! そうはいかないんだからっ)



 またまたまた十分後。



《スキル 気力回復速度上昇 Lv.4 を取得しました。》



(無視無視…)



 またまたまたまた十分後。



《スキル 気力回復速度上昇 Lv.5 を取得しました。》



(あ"ーもう無理! あーもう白けちゃったじゃない……。

 さっきから気力気力って、そもそも気力ていったいなんなのさっ)



 どこにぶつけていいか解らない憤りをぶつけるように、システムを起動しヘルプをだした。



(気力って何? ……体に宿る気のことで、これを扱うことで身体強化や武術系スキルの威力強化などが期待できる)



「ふーん、使えれば便利かも」



(じゃあ、どうやって使うの? …まずは自分の中に気があるということを理解する。

 次にそれを自分の意思で動かせるようにする。

 それができたら、体や武器に纏ったりすることで強化ができるようになる。

 さらに、それができるようになれば放出を訓練するといい)



 また解らないことを言い出したので、さらに質問を重ねる。



(ん? 放出って具体的には何をするの?

 ……例えば剣なら纏った気を放出することで斬撃を飛ばし、拳に纏った気を放出すれば拳の衝撃を飛ばすことができる!?)



「まさか、そんなことができるなんて……さっそく練習しよう」



(まずは気を理解する………………あ、これかも)



 自分の中に、荒れ狂うように異彩を放つ力の塊を感じた。



(これを自分の意思で動かす……このっ大人しくしなさいっ……よしよーし)



 暴れ馬を躾けるように、滅茶苦茶に動いていた気力の流れを制御し纏める。

 イメージとしては、竜郎が初めて魔法を使った時のような球体。

 そして、その球体をグルグルと回転させ、そこから毛糸の玉の紐を解くように少しずつ体に行き渡らせ、体の表面に覆ってみせた。



《スキル 身体強化 Lv.1 を取得しました。》



(うん。どうやら間違ってないみたいだね。次はもっと出力を上げてみようかな)



 今度はさらに、制御した気力から纏った気力への供給を少しずつ上げていく。



《スキル 身体強化 Lv.2 を取得しました。》

《スキル 身体強化 Lv.3 を取得しました。》

《スキル 身体強化 Lv.4 を取得しました。》

《スキル 身体強化 Lv.5 を取得しました。》

《スキル 身体強化 Lv.6 を取得しました。》



(おおっとっ……今日はここまでで許してやろう)



 次々と流れるアナウンスにビビッた愛衣は、出力を上げるのを止めた。



(さてさて、ではお待ちかねの放出の時間だー。とりあえず剣はないから、拳でやってみよっと)



 体に纏っている気力の何割かを、右手の拳に集まるように集中していく。

 そして拳周りの気力が他よりも多くなっているのを感じ取ると、そのまま空に向かって突きを放った。



(うーん、飛ばなかったなぁ……。飛ばすって感覚がまだ掴めない)



 そうしてそのまま時間は過ぎていき、《体術 Lv.5》にはなったものの、時間内に放出を行うことはできなかった。



 しかし、それは無理もない話だった。

 実はこの放出という気力の使い方の練習は、飛ばしたい一部分だけを気力で覆って、放出──というのが初段のセオリーである。

 なので今の愛衣のように体全体に気力を纏いながら、一部分だけをさらに強化し、またその部分だけを切り離して放出するというのは数段上の技術なのだ。



(ちぇー、できたら、たつろーに見せようと思ってたのに……。これはまだ内緒にしとこっと)



「たつろー、たつろー、おーきてー」

「んん……んー、ふぁあああ……。時間か?」

「うん」

「何か変わったことはあったか?」

「んーん、なんもないよ」

「そっか。あっ、そういえば《集中》覚えられたか?」

「…………あ、忘れてた」

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