砦化
スキンは誰もいないビルの中に入った
事務所ビルである
このビルは五階建てで、1フロアもそこまで大きくないが、その分出入り口が2つしかなく、侵入者を検知しやすいと思い、ここにした
地下に管理室があり、そこに鍵類がまとめておいてある
まだに人がいなくなってから間もないため、電気も水道も生きているようだ
書類や、机もそのままだ
「まずはセンサーを取り付ける前に、実物がなきゃな」
スキンはスマホを取り出し、人を検知するセンサーを取り扱っている大手メーカーのサイトを開いた
ここには通販で、人の体温を検知するセンサー類が販売している
業務用の、実際の配線を用いるタイプだ
やや専門的だが、このビルに使われているセキュリティシステムと互換性のあるものでなければならないため、メーカーに問い合わせて、センサーの増設はこのタイプのものでいけるのか、ということを聞いた
スキンはスマホで、お椀型の天井面につけるタイプを選んだ
これは人の体温を感知した瞬間発報し、管理室で感知できるというものである
まずこれを2つ、入口に設置する
スマホのサイト上で支払いを終えると、データがiツールにダウンロードされる
そのままアイコンをタッチして、スライドして画面の外にはじき出すと、スマホから本物のセンサーが飛び出した
ちなみに、これを出す際に電池を消費するため、あまり複雑なものは取り出せないという制約がある
「次に必要なものは、天井にアクセスするための足場と、固定するための道具か」
脚立と天井にもみこむ用のビスを4本、ドライバー、ニッパーを取り出した
脚立を立てて、天井面にとりついている感知器を外した
「こんなことやったことないけどな」
スキンはもともと器用な方だった
始めてやることも1回見れば大体コツをつかみ、実践できる
こういうことをした業者を昔見たことがあったため、どのように外すかは心得ていたのだ
感知器の配線をそのまま流用するつもりである
感知器に差さっている線を抜き、センサーに差し替える
そのあと、ビスで二か所、ドライバーでねじ込んだ
「よし、これでいい」
管理室にもどって、感知器などの線が入った電気盤(通常まとめられた配線は各設備ごとに盤に分けられている)を開けた
しかし、ここで問題が起きた
どの線が感知器の線か分からなかったのである
「こういう問題が出てきたか・・・」
スキンの頭では、感知器の線を延長して、セキュリティシステムの線とジョイント(つなげる)して、それに対応したカセット(センサーの信号を読み取る装置)にさせばいい、と思っていたのだ
対応したカセットが既設の盤の中に無ければ、それは用意する必要があったが、感知器の線を探すとなると、なかなか面倒なことであった
脚立を使って、点検口を開けた
幸い、天井面はそこまで低くなく、十分歩いて行けるスペースがあった
天井からぶら下がっている鉄の棒に捕まり、床を踏み外さないよう感知器のところまでやってきた
「この配線を追えばいい」
線をつかんで、追っていくが、でっぱったはりに阻まれ先に進めなくなってしまった
「これなら業者に頼んだ方が早かったか・・・だが足がついちまうからな やるしかない」
スキンは点検口から降り、少し考えた
「あれ?」
スキンはセンサーを見た 赤く点滅している
「なるほど、電源を差したからセンサーが感知した際、光る箇所があって、そこが光ってるのか」
そこでスキンは、感知器の線を一本ずつ抜いて、消えた線が感知器の線であるという特定方法を思いついた
感知器の盤に行き、一本抜いては、確認、という方法を使って、感知器の線を特定することに成功した
iツールから電線を取り出し、感知器の線とスリーブ(電線と電線をつなげる鉄のリング)でジョイントし、さらに後から購入したカセットに差し込んだ
これで、うまくセンサーが働けば、モニターに何かしらの表示が出るはずだ
一旦センサーを発報させ、管理室のセキュリティモニターを覗き込んだ
1階※※※番 センサー発報
という表示が出て、警報が鳴った
「成功だ、疲れた・・・」
この後、もう一つのセンサーをつけ、気づけば夕方になっていた
トラックを隣のでかいビルの地下駐車場に移し、荷物を運び出した
3往復かけて、食料、洗面用具、衣類を管理室に持ち込んだ
入口の自動ドアは電源を切り、横の小さい方の扉からでなければ入れないようにした
自動ドアのカギは、iツールの中にしまいこみ、ようやく安心したスキンはすぐ眠りに落ちた
はっと、スキンは目を覚ました
何時かと思いテレビをつけた 夜の11時だ
ニュースが流れていた
「ゾンビウイルスに感染したスキン・ボディ容疑者(25)が、現在、勤めていた会社のトラックを使って逃走しています もし町で見かけた場合、速やかに警察まで連絡してください」
スキンは唖然として報道を見ていた
マニアックな回ですね
分かりにくいかもです
感知器ってのは火災を感知するやつです