親指姫の話
昔々のその昔。親指姫という姫がいたのでした。なんでも親指のように小さい赤ん坊だったからという事からそういう名前が付き、周りの人も、みな「いい名前じゃないか」とほめてくれたのでした。
しかし、肝心の親指姫はその名前が気に入ってはいませんでした。
「親指だなんてそんな名前、かわいくないから好きじゃないわ」
と親指姫はよく言いました。
「ちいさいからっていうなら小指姫の方がよかったのに・・・」
そういって駄々をこねてはいるものの名前を付けてくれたのは大好きなおじいさん。なかなか文句をいう事も出来なかったのでした。
そんなある日、親指姫は何だったかもう思い出せないそんな小さなことでおじいさんと喧嘩したのでした。
親指姫はその時言ってしまったのでした。
「親指姫なんて名前、嫌いなんだもん!小さいからっていうなら別の名前だってあったじゃん!おじいさんなんてもう嫌い!」
おじいさんは何も言わずに部屋から出ていきました。親指姫は泣きました。言っちゃいけないことを言ったと自分でもわかっていたからです。
しくしく泣いているとそこにおばあさんが来ました。
「親指姫、お前さんは名前の本当の意味を知っているかい?」
「本当の意味?」
親指姫は思わず首をかしげました。なぜなら親指姫は本当の意味なんて聞いたことが無かったからです。
「おじいさんにきいておいで」
おばあさんにそういわれる前に親指姫は走り出していました。
自分の部屋を出て廊下を走るとそこにはおじいさんの背中がありました。
「おじいさん!」
親指姫は思わず呼んでいました。そして
「親指姫の意味を聞くために来たの。」
そう言いました。おじいさんは「やれやれ、おばあさんのせいかの・・・。」と言いながら部屋に入り、
「親指姫やここにおいで」
と部屋の中から手招きしています。おじいさんの前に用意された座布団に親指姫が座るとおじいさんは親指姫の前に手を広げて言いました。
「ほれ、みてごらん。」
そういって、親指とほかの指を一つずつくっつけていきます。
「親指ってすべての指と触れ合うことができるんだ、ほかの指じゃそれができない。それに親指からはすべての指が見えている。親指だけなんだ。そこにはすべての人の懸け橋になれる人に育ってほしいという思いがあったんだよ。」
親指姫は知りませんでした。こんな素敵な意味もあったことを。
「おじいさん、ごめんなさい。」
親指姫はおじいさんに一生懸命謝りました。
「いいんだよ、親指姫。おじいさんも悪かったさ。」
そういっておじいさんは親指姫の頭をなでてくれました。
その感触は今も忘れることはありません。私は今でもこの名前が大好きです。ありがとう。おじいさん。
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初の短編小説ですね。
と言ってもこの間ふいに思いついたものをちょこっと変えてみただけなので(笑)
いい話が書きたい(笑)
追記:挿絵描いてみました。誰がなんと言おうと親指姫です(笑)