爽やか王子
領からお弁当を受け取ってもらえなかった絵里ちゃんという
女の子は、今にも泣きそうだった。
そんな彼女を、領は困ったような・・・
そんな表情で見つめた。
すると、ガタガタと暮らすの女子たちが立ち上がり、
彼女のもとへと寄る。
「絵里、もどろ?」
「次、数学だよ!」
「領くん、困ってるじゃん。」
「そーそ、皆の領くんなんだからw」
慰めてるのか、なんなのか・・・
結局は、このクラスの女子はみんな敵だからね(笑
自分が一番になりたくて、必死。
なーんだか、汚くてやだなぁ。
「んでも、あれくらいのほうが可愛いんじゃね?」
「あんたはエスパーかっ」
「お前が顔に出しすぎなんだよ。
皆量産に気に入られようと必死になってんじゃん。
女子はあれくらいが可愛いだろ。」
「じゃあ、私があんな風でも可愛いと思うわけ?」
「んなわけねえじゃん。
そんなことされたら、お腹抱えて笑うね。」
「でしょ?」
「ありさはありさだからなぁ。
今のままで十分。」
不意に微笑まれて、心臓が波をうつ。
あーあ、コイツの本性しらなかったら・・・(笑
そんな時、
急に、女子が騒ぎ出す。
キタ。
領、龍と続いてこのクラスでモテる男が。
「領くん、おはよ」
「はよー悟くん。」
爽やかな風を吹かせてやってきたのは、
矢野悟くん。
「ありさちゃん、龍おはよ。」
「おはよ、さとっさん。」
「おはよう、悟くん。」
「ねぇ、なんか向こうの女子たちが騒がしいけど・・・
俺が来る前になんかあったの?」
「領さんが、女の子からお弁当を受け取らなかった、
ただそれだけですよ。」
「あー、なるほどね。
領くん、意外にハッキリしてるからなぁ」
多分、私と同じくらいに領のことをわかっている悟くん。
幼馴染の私でさえ、わからないことを
同姓だからか、親友だからか・・・
領の理解者。
「あ、そういえば。
今日、委員長副委員長会議あるって。放課後。」
「えぇー・・・・」
「だから、一緒に帰ろ?」
「え?あ、うん。」
「領くん、待っててくれるでしょ?」
「へ?」
「今日、俺とありさちゃん委員長副委員長会議あんの。」
「マジかぁ。
んじゃ、部室で待ってる。」
「え?今日、部活ないじゃん。
あいてないよ?部室。」
「先生が、俺は自由に出入りしていいって。」
そう言って、おもむろに鍵を出した。
先生・・・それって。特別扱いじゃないですか・・・
まぁ、仕方ないんだけどね。
領は、いろんな賞とってて・・・
色使いや、タッチが繊細で
本当に高校生なのか、疑いたくなるくらい
絵の才能がある。
先生が可愛がるのも、無理はないんだけど
「じゃあさ、領くん。」
「ん?」
「そろそろ俺の誕生日だから、
プレゼントに、領くんの絵ちょうだい♪」
「うん、いーよ」
「ほんと!?」
よほど嬉しいのか、目を輝かせる。
龍同様、たまに疑うよ・・・
悟君も、そっちの人かと(笑
そんなとき、小さな女の子が悟くんの後ろに立った
「や、矢野くん・・」
「ん?」
さっきと同じキラキラな王子スマイルを向ける。
やっぱ、かっこいいな・・・
「あ、あのね・・・
うちのクラス一時間目調理実習なの・・
それで、ガトーショコラ作るんだけど・・・
矢野君、受け取ってくれる?」
潤んだ可愛い目をむける。
きっと、うちのクラスの男子ほとんどが
釘付け(笑
「あー・・・悪いんだけど、俺甘いもの苦手なんだよね。」
「え?そ、なの?」
「うん。ほんとごめんね。
その気持ちだけで十分だよ。」
「そっか・・・なんか、ごめんね。」
そう言って、女の子は自分の教室に帰っていった。
「あれ、さとっさんって甘いもの苦手だったっけ?」
「いや、大好き。」
「え?じゃあ、なんで・・・」
「だってさ、そういうのって本当に好きな子にもらいたいじゃん。
バンバンもらって、好きな子に誤解されたくないでしょ?」
・・・はぁ、やっぱ考えてることも男前だわ。
どっかの誰かさんに聞かせたい。
「なんで俺見んだよ。」
「別に。龍にも見習ってほしいなって。」
「いんだよ俺は、本命は作らない主義なの。」
「あっそ。」
「あ、でも、ありさちゃんは特別だから。」
「え?」
「だから、バレンタインデー頂戴ね。」
「あ、うん。」
「あっ・・・領くんの許可がおりればだけど(笑」
「俺?」
「なんで領の許可がいるのよ」
「クスッなんとなく。幼馴染だから?」
爽やかな笑みを浮かべる王子様。
学年トップの秀才くん。
そんな彼の名は
矢野悟。