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岩剣山合戦。
薩摩北部の渋谷氏、菱刈氏、蒲生氏と言った豪族たちの連合と島津家が激突した合戦だ。
そんな岩剣山の岩剣城に付いた俺は
「はいこれ。」
と、此処のトップである祁答院良重に、到着早々ある物を渡されていた。
「これは………」
「見るのは初めてかな?まぁ、種子島と言う奴だね。」
鉄砲、種子島、火縄銃。
戦国時代の新兵器。信長躍進の立役者。
そんな、流行の最先端兵器を渡されて………
「あの、某は知恵働きを期待されて此処に来たのですが………」
「うん、やってもらうよ?知恵働き。君には、この種子島と鉄砲隊を預ける。」
「………いや、いきなりですか??」
「うん。いやぁ、前任者が鉄砲の暴発で死んじゃってね?任せられる人間も居なくて困ってたんだよ。」
「………新参者で、しかも某の様な若造に部隊を任せるのは、色々とマズいのでは??」
「………さては、君。初陣だね??」
「え、ええ。まぁ。」
こちとら、この間まで寺暮らしである。当然のように戦に出た事など無い。
「ふむ。なら覚えておきたまえ。薩摩の合戦はな、使える物は何でも使う。かなり壮絶な物だ。ビビって漏らすなよ??」
と、意地悪く笑う|祁答院良重(うちの大将)。
「が、頑張ります。」
ぎこちなく笑う俺。
「おう、頑張れ頑張れ。じゃなきゃ死ぬぞぅ。」
そう言って、彼は去って行った。
岩剣山合戦。
この戦には、幾つか特筆すべき点が有る。
一つ、この戦いが島津氏の三州(薩摩、大隅、日向)統一の足がかりとなる戦である事。
一つ、日本史上初めて鉄砲が使われた戦である事。
一つ、後に島津四兄弟として名をはせる、島津義久、義弘、歳久の初陣であった事。
「………あれ?何か寒気が………」
この悪寒の意味する所を、俺は戦場で知ることとなる。