表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/15

15

恥ずかしながら、戻ってまいりました。長期の更新無しで、ご愛読いただいていた皆様にはご迷惑をおかけしました。

就活に失敗いたしましたので、張り切って更新していこうと思います。

朝靄の白と、騎馬の舞い上げた砂埃の褐色を背景にしながら敵の足軽が此方に突っ込んでくる。

ともすれば数秒後にはこの地に骸を晒しているかもしれないという恐怖に震える奥歯を、部下に気取られないよう必死に噛み締めながら筒先の敵を睨めつける。

距離は十分。

「放てぇ!!!」

自分の左右から、耳を射抜く轟音。

「交代!!!」

二つに分けた指揮下の足軽の内、装填を終えた後列が全面へと躍り出る。

「放て!!」

後列の長、矢太郎の命令で前列が種子島の引き金を引く。

その直後に上げた


「抜刀ぉ!!」


俺の叫び声と共に




「「「ばっとぉぉぉ!!!」」」

部隊の面々は裂帛の気合で腰の太刀を抜き敵に斬りかかる。


ああ、奴らは敵だ。戦の後に義弘様達が治める民ではなく、俺を殺そうとする敵だ。


………俺たちは今、敵の猛攻に晒されている。





昨晩の軍議の(?)の沙汰の末、俺は勢い付いた敵の鼻先に布陣することになった。


………なってしまった。なっちゃった。


一番槍といえば聞こえはいいものの、どう考えてもデッドエンド。

地獄の一丁目なのである。

「What The Fuck…」

誰に聴かせるでもなく呟いた現世の俺の悪態は、戦場の風に乗って消えていった。



あぁ。自分自身が戦場と一体化し溶けていく。

俺に飛びかかり、組み敷いた敵を味方の槍が貫ぬきその槍を跳ね上げた太刀が見方の首を撥ね返えす刀で他の獲物に切りかかろうとするも必死に突き出した俺の刀がそいつの頚動脈を切り破る。そんなみかたはてきじんからはなたれたやだまにみけんをつらぬかれすんぜんにぎらぎらとこちらをねめつけていたまなこはいつのまにか濁ったものへと変わっていて。

そんな戦場と一体化していた、否。戦場に飲まれていた俺、私、僕。を、転生という現実感の欠けた現実へと引き戻したのは、頼れる副官だった。


「矢太郎!!殺せ!!あいつらは僕を殺そうとした!!!」


「落ち着いてくだせェ大将!!!彼奴らにはもう戦意というもんがありやせん!!!」


「おはんは何やっちょうが!!おはんが命ばはたさんか!!!」


不意に降り注ぐ薩摩弁に自我を取り戻す。その視線の先には


そうやって殺意を向けた先には、情けない羊たちの群れが広がっていた。



あぁ。クソ。クソっ!!クソったれェェェェ!!!


戦場の混乱から半里と離れていない俺から発した叫びは、まだ青葉の香りが残る丘へと消えていった。






緒戦。薩摩島津の勝利。


長寿院足軽隊、損耗率の五割超。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ