プロローグ
―――宅飲みとは、飲食店ではなく自宅や知人の家で、お酒や食べ物を持ち寄って飲む行為。
友人や家族と集まりホームパーティー形式で楽しんだり、一人で静かにリラックスして飲み、会話したりと、さまざまなスタイルで自宅でお酒を楽しむ事。
俺、山口時音はそんな宅飲みが大好きなサラリーマンの三十路である。
こう、蒸し暑い時はキンキンに冷えたビールに枝豆に限る。実はこの組み合わせは意外にも江戸時代からあるらしい。古いがとても良い飲み方。酒好きなら一度は体験したであろう。
喉越しのキレのある黄金のビール。それに合わせるほのかに甘くい枝豆。口に運ぶ時につくほのかな塩が何とも言えん黄金比。そしてまたビールと……おっと想像しただけでも喉が鳴る。
今日は早く上がれそうだ。終わったら近くのスーパーに言って……――
横断歩道を数歩歩いた途端、俺の視界は真っ赤に染まった。
―――
「ごめん。殺しちゃった」
「は?」
軽い謝罪をする顔の見えないハゲに俺は「は?」としか言えない。状況がよく理解できない。
「私、異世界の神様なのね。君の世界の乗り物に興味があって乗ってたら轢いちゃった」
「よーし、てめえぶっ殺す。俺の今晩の宅飲みどうしてくれんだ」
限界突破に達し何故か浮かぶ笑みを浮かべ俺は拳を上げた。
「待って待って。代わりといっちゃなんだけど、異世界に興味は……」
「ねえよ。俺の枝豆とビールの時間を返せハゲ」
「おっと、とんでもない人間を殺しちゃったなあっ」
仕方ないとハゲは腕を組み考える素振りを見せひらめいたようにポンと手をたたく。
「決めた。君のスキル。異世界の宅飲みにしよう。好きなんだろ?宅飲み」
「嫌いなわけねえだろ。それを生きがいに生きてんだから」
「だよね!よかった……このままだととんでもない事になるところだった」
「とんでもないこと?」
「他の神に見つかって怒られる」
「しょうもねえ」
「三千年もだよ?!普通に死んじゃう!!」
「人1人殺した罰としては軽いだろ」
「ぐう……この子に口で勝てる気がしないっ!というわけでさっさと転生させちゃいます!」
そこで俺の意識は薄れていった。
―――とろで、異世界の宅飲みってなんだ??