物語の始まり
「ねぇ、義姉さんは僕とずっと一緒にいてくれるよね?」
何故こうなったのか。
オリヴィアは、ギラギラと燃えるような赤い瞳に見下ろされ、始まりの日を思い出していた。
事の始まりは、半年前。
神が創り出した世界。私は、その中の一つの王国のメインキャラクター達の管理を担当している。
その日もオリヴィアはモニター越しに世界の管理をしていた。
神はメインキャラになる得る人物を世界に創造し、世界のバランスを保つため管理局を作ったらしい。
管理といっても大きな干渉はしない。基本はサポートくらいの感覚。
それぞれメインキャラには、性格や容姿の設定はあるものの、人なので自我があるため普段は好きに生活している。
要所要所に世界に関わるイベントのような大きい動きがあるので異常がないか監視管理するのだ。
この日も問題なく進んでいくはずだったのだが、
「…ん?」
目に止まったのは、メインキャラの騎士リアン・ローズベリー。
この世界では珍しい、紅い瞳に漆黒の髪。白い陶器のような肌とスラッとした手足。つまりイケメン。
でも、イケメンだから目に留まった訳ではない。
(なんか…様子がおかしい?)
リアンの前には、この世界の聖女リリアナ・オルレアン。
だが、様子がおかしい。リリアナの震えが尋常じゃない。ひどく怯えた顔をしている。
モニターの音量を上げて、様子を見る。
『ねぇ、君はずっと僕の傍にいてくれるって言ったよね?』
『僕は君だけなのに、君も僕以外必要ないはずなのに。なんで僕だけを見てくれないのかな?』
『やめて…リアン…なんだか怖いわ…』
(お…重いよ…重い重い。愛が重すぎるよ。)
いくらイケメンとは言え、重すぎる。胸焼けしそう。
流石の聖女でも受け止めきれないだろうよ。
そもそも、リアンは一途で真面目ではあるものの優しく穏やかな性格のはず。
自我があるとはいえ、こんな風に感情的になって重たくドロドロとした気持ちをぶつけるような設定のキャラじゃない。
『きゃっ…!?やめて…来ないで!』
危機迫る声に意識をモニターに戻すと、いつの間にかリアンが腰の剣を抜いていた。切先はリリアナの心臓近くに向いてる。
これ、まずいのでは?
『僕だけを見ない君なんていらない。君を殺して、僕も死ぬよ。これからは、ずーっと一緒だね。』
ちょ…
「ちょっと待ったぁあああああ!!!?」