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序:人生の終わりは突然に

 それは、一瞬だった。


 通勤中の駅のホームで、一人の女性が突然胸を押さえてよろめき、線路に転落。

 そこへ、その駅には止まらない快速列車が突っ込んできた。


 誰かが緊急停止ボタンを押してくれたが間に合わず、彼女の人生は呆気なく終わった。


 生まれてから二十四年間、健康そのもので大きな病気も怪我も無縁で生きてきた。

 確かに最近、仕事が忙しくて不摂生はしていたが、息ができないほどの胸の痛みを感じたのは初めてだった。

 気付かないうちに病気にでもなっていたのか。


 しかし、死んだ彼女にそれを知る術はもうない。


 そう、そのはずだった。

 

 命を落とした彼女は、死者が渡るとされている三途の川を渡った。

 そして係員のような何かに促されるまま、閻魔大王とやらの裁きが始まるのを、長い列に並んでじっと待つ。


 閻魔大王はどうやら一人しかいないらしい。毎日世界中でかなりの人数が死んでいるというのに、一体どのようにして全員を裁いているのだろう、とぼんやり考える。


 そんなことを考えながら待っていると、ようやく順番が回ってきた。

 生前テレビで見た裁判所の法廷のような場所に立たされ、彼女は目の前を見上げる。


 紙のように白い肌と、漆黒の髪に黄金の双眸の若い男が、腕組みをしながら手元の何かを見ている。

 まるで人形のように、作りものめいた美貌の青年だ。


 昔話の影響で、閻魔大王といえば髭を生やした壮年の男性のイメージしかなかったが、実際はこんな美丈夫だとは驚きだ。

 思わずその美しさに見惚れてしまう。


「我が名は閻魔。これより裁きを行う。この場においてはいかなる事も暴かれ、嘘偽りは通じぬ。心して我が質問に答えよ」


 淡々と落ち着いた声が厳かにそう告げ、彼女の人生を裁く裁判が、始まった。

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