過去世
数ある作品の中から拙作をお選びくださり、ありがとうございますm(_ _)m
かつての私は酒が呑めなかった。
カップ一杯どころか、半分も飲み干せない。
命の危機、レベルで。
かつての自分がどのような立場にあったのかなぞ憶えていない。
ただ、女ではあった。
年齢は不明だが、幼女でも老女でもなかったようだ。
それが何処かに喚ばれた宴席で、酒を強要された。
勿論訳を話して断った。
だが……許されなかった。
少し舐めて誤魔化そうとしたが、相手はそれが気に入らなかったらしい。もしくは初めからその隙を狙っていたのかもしれない。
身体を羽交い締めにされ、顎を無理矢理開かされ、大きな酒瓶を口に突っ込まれ、度のきつい酒を流し込まれた。
当時の私からすれば毒を大量に投入されたようなものだ。
吐くという身体的反応すら無視して更に流し込まれ、もはや自力で座っている事さえできない重症に陥っていた。
奴等は何を思ったのか、その場で、衆目の面前で、当時の私を輪姦した。
死の前兆として痙攣と冷たい汗が大量に出ていたのを、悦んでいると言い張って、私を犯し殺した。
誰も助けてくれなかった。
その後の事など知らない。だが……
どうせ誰も見なかった事にでもされてそうだ。
「私が憶えているのは以上の死の記憶です。挙げ句の果てにハズレを製造元として今世の親として引き当ててしまったので、若い殿方を中心に苦手です。言葉を選ばず有りていに表現するならば、生理的嫌悪の対象です。これはトラウマに起因する以外に原因が考えられませんので、理屈は通用いたしません。帰る事が許されるのでしたら、今度は馬車を所望します。それが不可能ならば、この場で殺してください。とにかく殿方に囲まれ続けるのは苦痛以外の何物でもありません。私にとっては現状が既に拷問です」
「……本当に、狭間人なのか?」
「別に信じていただけなくても結構です」
「……誰か、窓を開けよ」
「窓から飛び降りろとの意味でしょうか? ここは三階ですから、うまくすれば死ねるかも──」
「殺さんし死なさん。よいな!」
「帰してはくださらないのですね」
「……減らず口はよく回るのだな」
この場で一番偉そうな青年が疲れたように吐息を吐いた。
冷たい汗とは、お医者さん的に「危険」「危機的状況」を意味する状態・症状の一つだそうです。