王都に行く事になりました
対戦相手の謎は残っているが、貴族の子供という物は意外と忙しい。
普通の勉強だけでなく領地経営なんてものも勉強しなければならい。
まぁこの文明レベルだとかなりいい方なのは分かるが、普通の一般家庭でもかなり差があるみたいだからな。
商人はまだマシらしいが、農民となるとこの領主がいる町とは違い自力で魔物や盗賊から防衛したり、畑仕事をしなければならないから忙しいのベクトルが違う。
肉体労働と事務仕事、どっちも違った忙しさと苦労はつきものだから。
でも学校に行く必要がないのは楽なのかもしれない。
前世じゃ学校に行くのが普通だったが、貴族は学校に行くのではなく家庭教師を雇って勉強するから出歩く必要はない。
といってもずっと家で塾に通っているような感じだからぶっちゃけ面白くはないな。
小学校の頃は普通に他の子供と一緒になっているのが当然だったから違和感が凄い。
でも前世の知識もあって算数程度は問題ないから今の所は大丈夫といったところ。
歴史問題に関しては……ひたすら暗記するしかねぇ……
あとよく分からないのがダンスなどを含む社交界のマナー関連。
食べ方に関しては問題ないが……ダンスは前世の頃から嫌いだった。
ダンスなんて好きな奴が好きに踊ってろ。
「あ~疲れた」
ダンスの授業が終わりこればっかりは無心になってやるっきゃないと諦めました。
ちなみにパートナーは講師のおばちゃんなのでやる気は一切出ない。
「若様。そのような無気力なダンスでは相手方に失礼です。もっと女性をリードし、楽しませる事が大切なのです」
「楽しませるのが大切なら大道芸でも覚えたろか?」
「大道芸を貴族がする物ではありません。あとその変な話し方はお止めください」
「へ~い」
貴族社会というのは面の皮の厚さで決まるのかもしれない。
疲れている俺をねぎらうようにブレイドドラゴンが俺の頬を舐めてくれる。
「ブレイド~、お前だけが癒しだ~」
ブレイドドラゴンの頭を撫でながら癒しを求めていると講師はため息をつきながら言う。
「若様。これは貴族として生きるのであれば必要な事なのです。社交界に出る日も近いのですから、もし他の家のお嬢様方にダンスを求められた際お断りするつもりですか?」
「断ったらどうなる?」
「拒絶と思われ二度と近付かなくなるでしょう。もしそれが未来の奥様になるかもしれない方かと思うと……」
講師は意外とオーバーリアクションでよよよと泣き崩れる。
そう言えば社交界って婚活会場でもあるんだったな。
てっきりそういうのって家同士のつながりを求める者だとばっかり思ってた。
「そういうの本当にあんの?俺達貴族なんだからそういうのって自由に選べないだろ?王族でもあるまいし」
「つまり若様は親の決めた許嫁でも構わないと?どれだけ性格悪くても問題ないと?」
「それ言われるとキツイけどさ……でも貴族の子でしょ?物語に出てくるあからさまなヤバい女に育てるか??」
「珍しいですがそういう方はおります。典型的な親に甘やかされてきた令嬢が王族と勘違いしているのではないかと思えるほど傲慢な方は時折ございます。これに関しては令嬢だけではありませんが」
そういう馬鹿親の影響を受けた馬鹿子供もどの世界にもいるもんだな。
だがそういう話を聞くと俺もそう見られたくないという気持ちはある。
ため息をついた後、仕方なくダンスをするポーズをとった。
「仕方ないから続きしようか」
「ご立派です若様」
「勘違いするな。他の連中にマナーのない奴だと思われたくないだけだ」
「それでよいのです。形は覚えてきたのですからあとはダンスで感情を表現するのです」
「それが一番分かんないんだよな……」
気持ちを口にするのは簡単だが、体で表現するというのが分からない。
改めてダンスをする人達ってそういうのが好きなんだなっと思った。
こんな感じで召喚の実験が出来ない日もあり、召喚実験は色々遅延中。
いい加減実験したいな~っと思っていると晩飯の時に父から言われた。
「アレックス、今度王都で社交界がある。お前の様な若い貴族達のための社交界だ。王族も参加するからそれまでにマナーを叩き込んでおくように」
…………マジか。
もしかして最近のマナー講師が厳しかったのはこの事を知ってたからか?
「それっていつです?」
「1か月後だ。ただ王都に向かう時間も考えると2週間後だ」
この世界の交通機関はろくに機能していない。
そもそも乗り物が馬か馬車の二択だし、道中盗賊に襲われたり悪天候で足止めされたりと面倒臭い。
そのため本来数日で着く距離であったとしても1週間以上前に出る必要もあったりする。
そして王族も参加するとなると遅刻は厳禁。
だから余裕をもって1か月後なのに2週間前に移動するんだろう。
「それって参加するの俺だけですか?」
「家族全員で行く。顔合わせとして私と妻はお前に付き合わなければならないし、リリア一人で留守番をさせる訳にもいかない」
「分かりました」
決定事項なのだからそういう他ない。
となるとさっきのマナーの勉強はここからさらに詰め込まれるだろうな……
「お兄様!王都!王都に行けます!!」
「ああ、楽しみだな」
正直言って王都に行くのは初めてで辺境伯である俺達にとって滅多に行かない場所であり、色々懸念がある。
貴族の地位として大公、侯爵、伯爵、子爵、男爵の順で偉い。
ただ俺達は辺境伯と言われる国境警備に近い地位に居るので中の上くらいの偉さだ。
だから気にするほどではないかもしれないが……仮に地位の高い人に目を付けられたらかなり面倒くさい。
異世界転生したけど特にこれといった目標が決まってる訳でもなく、何か英雄的な事がしたい訳ではない。
この世界を変えるような大きな事をしたわけじゃないんだよ。
ただ生きて幸せな生活みたいな事をしたいだけなんよ。
だからこそこういうイベントごとはあまり参加する気がない。
貴族として生きていくには必要な事だと言われれば仕方ないが。
でも移動中って結構危険そうだよな。
さっき考えたように盗賊だって現れるみたいだし、少しでも危険を取り除きたい。
そう考えると召喚してスピリットを1体でも増やしておきたいな。
「お父様お母様。お願いがあります」
「ん?なんだ」
「旅には危険がつきものだと聞いた事があります。なのでもう1体召喚する許可をください」
どうなるだろうと思っていると2人は少し悩んだ後母が言う。
「分かりました。しかし召喚する際には隣で見させていただきます」
「分かりました」
「それから何を召喚するのか出来る限りこちらで要望させていただきます」
「そこまでしますか?」
「必要な事です。もし魔物を召喚した場合間違って攻撃される可能性が高いですから」
え~。
それじゃ強いの召喚出来ないじゃん。
それに見た目とかも気にしたら切りがないし、こっそり強さ重視のスピリットも召喚しておこう。
あと魔石を回収できる系のスピリットを中心に、母親の前では……0コスのバニラカードで良いだろ。
ならその前に色々召喚しておかないとな。




