本来の召喚方法と魔力の増やし方
朝食後さっそく母が魔法の基礎について教えてくれた。
「まず魔法は魔力がないと発動する事がありません。なので一般的に魔法が普及していないのは魔力のない人間の方が圧倒的に多いからです。そして魔法は魔力だけで発動するのではなく、様々な儀式によって発動するので色々と条件があります。その条件が詠唱、あるいは魔方陣の構築です」
漫画とかでよくある奴だな。
個人的に詠唱は中二臭いのは嫌なのだが、出来る限り楽な方が良いな。
「例えばこれ、『火の神よ、我に灯を』」
そう母が言うと指先に小さな火が灯った。
ロウソクの小さな火だ。
「これが一般的に生活魔法と言われる魔法です。詠唱は短く集中力も大して使わずに発動する事が出来ます」
「お~。すごく便利ですね」
「ええ。ただし魔力を多く込めたから火力が強くなるような事はありません。これはあくまでも神が力を貸してくれているからです」
基本的にこの世界の魔法とは神様がいるから発動する、という考えの元に構築されている。
俺にカードをくれた神様が一体何の神様なのかは分からないが召喚に関する神様がいるんだろうか?
「教会が大きな組織なのはそういう面もあるからですよね」
「ええ。教会は神と最も距離の近い組織なので魔法使いでさらに強力な魔法を使えるようになるために教会に入信する者達もいます。もちろん絶対ではなくあくまでも強くなるための方法の一つとして考えておけばいいでしょう」
そもそも召喚の神様がどこの神様なのか分からないからな。
教会に行く事はあっても信者になる事はないな。
「そして次が魔方陣による魔法です。このように円を描き、その中に必要事項を書きます」
「必要事項?」
「簡単に言えばどの神様にどんな力を借りたいのか正確に書き込む事が重要視されます。それを読んだ神がそれにふさわしい力を貸してくれます。このように」
小さく書いた魔方陣に魔力を流すとさっきと同じようにロウソク程度の火が灯った。
だが先ほどの影響と違い手間が全然違うな。
口が開けばすぐに済む詠唱式と比べたら非常に遅い。
実戦で使うのはほぼ無理だろう。
「今回はこの場で魔方陣を書きましたが大抵は事前に書いておいて必要なときにそのページを開いて使用するというのが最もポピュラーです」
「本を閉じた状態じゃ使えないんですか?」
「使えなくはないけどどのページにどの魔法を書いてあるのか間違って魔力を流せば違う魔法が発動してしまう。それを防ぐために魔方陣を書いた本、魔導書は使いたいページを開いてから使用します」
間違って使わないようにするためだったのね。
それじゃ本を開く必要があるわ。
「それに詠唱式、魔方陣式の二種類があるけど基本的に使う魔法によってどちらを選ぶか決まります。四大元素や光や闇、回復魔法などでは詠唱式が多いです。その場で詠唱さえ覚えていればすぐに使えますから。そしてアレックスの召喚は詠唱式にすると非常に長くなってしまうの。だから基本的には魔方陣を利用して召喚を行います」
「詠唱が長くなるってどんな感じですか?」
「それはもうかなり長くなります。私も知識としか持っていませんが、魔方陣に何を召喚するのか書き込むのに対し、詠唱だと召喚するためのすべての要素を口に出さなければならないので非常に長くなります。それこそ嫌気がさすほどに」
どうやら想像以上に面倒らしい。
そんなに情報量あるのか。
「それで召喚魔法はどんな風にやるんですか?」
「基本的には他の魔方陣と変わりません。ただ何を召喚するのかによって書き込む量が変わります。例えば犬を召喚したい場合は……」
そう言っては母魔方陣を書き始めたが、その内容が非常に長い。
獣、四足、体毛、小さい、犬、生き物の6文字。
「いや犬の一文字じゃダメなんですか?」
「ダメなんです。大まかにですが本物の召喚士となるとさらに細かく魔方陣に書き込みます。消費する魔力量はどれくらいか、色や種族、もし名前があるのであれば名前を書くなど色々です。そうしないと非常に危険ですから」
「危険?犬が噛んで来るとかですか?」
「そうではありません。昔召喚士を目指す子供が居たと聞きます。その子供が実験に犬を召喚しようとしたときにレッサーフェンリルが召喚された事があります」
「…………さすがに嘘でしょ?」
レッサーフェンリル、伝説の魔獣であるフェンリルの子孫であり、交雑が進み過ぎた結果フェンリルほど強くはないけど強い冒険者が数パーティーで挑まないといけないくらい強い魔物。
伝説のフェンリルは一国の軍隊でないと追い払う事が出来ないと言われるレベルだから数十人で倒せるくらいに弱くなったと言われている。
「本当です。確かに今の例は極端ですが実際にあった事件です。子供が犬が欲しいと思って普通の犬を召喚しようとしたら強力な魔物が召喚されてしまい、その町は滅んだと言われています」
「こっわ」
「ですから召喚士はそういった事故を起こさないように出来るだけ細かく、召喚するものを特定するようにしなければならないのです。それを怠った時に今の例のように強力すぎる魔物を召喚して自身も死んでしまうような事にならないよう中止しなければなりません」
確かにこれはかなり癖が強い。そして手間も多い。
これじゃ召喚士になろうとする人が少ない訳だ。
「……これはあくまでも今の時代の問題ですが」
「お母様?」
「魔法使いは直接攻撃魔法を使って戦うのが主流です。召喚した動物を使っての攻撃などでは魔物に対して大きな傷を与える事が出来ませんし、そもそも怖がって戦えない事の方が大きいです。それでも召喚士を目指しますか?」
どうやら俺は母親に本当に召喚士になるのかと聞かれている。
それに関してはとっくに決まっているので簡単に言う。
「目指します。それが神様からもらった才能だというのであれば極めてみたいです」
まぁ本当の目的は別だ。
神様からもらったこのカードの中に俺が手に入れたシークレットの激レアカード。
こいつを実際に召喚し、その姿を見る事が出来るのであればこれ以上の幸福はない。
だからそいつと出会うために召喚士として頑張りたいと思っている。
「分かりました。それで魔力量を上げるための訓練に移ります」
俺の言葉に疑問を持っていないのか、母はすぐに魔力量の上げ方を教えてくれた。
「魔力量を上げるにはまず自身の中にある魔力を感じる所から始めます」
「魔力を感じる……」
俺の中にある魔石を意識すればいいのだろうか?
「その魔力を体全体にいきわたらせ、巡らせる事が出来れば魔力量を上げる事が出来ます」
「魔力を巡らせる?」
「一般的なイメージでは川をイメージすると良いと言われています。川の流れのように、川の上流から下流に向かって行くよなイメージです」
「なるほど……」
イメージは分かったが俺の頭の中で勝手にイメージを変えよう。
それなら川でなく血液でもいいはずだ。
心臓から送られた血が体中を巡り、また心臓に帰ってくる。そしてまた心臓から血が体全体に送られるイメージ…………
何て考えながら魔石を意識していると体がぼんやりと光った。
何だこれっ?と思っていると母が驚いた表情をしている。
「まさかこんなに早く覚えるだなんて……」
「これは成功しているのですか?」
「え、ええ成功しています。その体が薄ぼんやりと光っているのが魔力を全身に巡らしている証拠です……」
「それじゃこれをずっと続けていけば魔力量が上がると?」
「その通りです……」
母親は何故か俺の事を恐ろしい物を見るような視線を送る。
特に危険な事をしている訳ではないし、教えてもらった事をしているのだから変でもないはず。
何が気になるんだろう??
だがこれで魔石を増やすヒントはつかめた。
ここから魔石を大量に増やすために頑張っていこう。




