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あなたは私達を愛せますか?

 これで王族と対面するのは3回目か。

 もちろん1番最初は俺が初めて社交界デビューしたあの日、2回目はリリアの社交界兼ノアとの婚約の時。そして今回は殿下とリリアの婚約か。

 何でこうも王族と関わってるんだろうな。


「ここは非公開の場だ。あまりかしこまらず話してほしい」


 そう陛下は言うが周りには当然騎士も魔法使いもいる。

 攻撃する気なんて全くないが、まぁ仕方ないと言えば仕方ない。


「しかし……君にこうして何度も会う事になるとは思いもしなかった」


 何故か陛下は俺に向かって言う。

 こういうのは父親と話すもんじゃないのか?


「は、はいそうですね。こうしてお話しさせていただくのはノア姫の時以来です」

「娘とは上手くいっているか?」

「はい。私よりも優秀なので色々頼ってしまう点もありますが、仲良くさせていただいてます」

「それを聞いて安心した。ノアよ、何か不自由な事はないか」

「そうですね……あえて言うならアレックス様が私に手を出してくれない事が不満でしょうか」

「ノア?」


 まさかの角度からの報告に何言ってんだこいつ?という感想しか出てこない。

 その言葉に一番驚いているのは殿下だ。


「ノ、ノア?自分で何を言っているのか分かっているのか?」

「分かっていますわ兄上。ですが女として惚れた男に全く手を出してもらえないというのは少々不安と焦りが芽生える物です。アレックス様と親しい女性はリリアだけですがそれでも不安な物は不安です」

「な、なるほど……?」


 殿下は疑問符を浮かべながら言うがこっちが普通だと思う。


「ノア……別に浮気してる訳じゃないんだから良いだろ?」

「アレックス様……まさか男性にご興味が!?」

「友達と言う意味では欲しいがそういう意味では全く要らん。エロい事するなら女一択だ」

「でしたらセクハラの1つでもしてくれればいいのに!!」

「する訳ねぇだろ!俺らまだ10年ちょっとしか生きてねぇんだぞ!あと妻に手を出すのってセクハラなの?」

「セクハラにならないので好きに手を出してください!今すぐに!!」

「お前の両親と兄の前で出来るか!!」

「ふふ、ふははははは!!」


 なんて馬鹿な事をしていると陛下が大笑いした。


「ノアがそのように相手をからかう所を見るのは初めてだ。夫婦生活は上手くいっているらしいな」

「陛下……何故そのように思ったのでしょうか?陛下の前でこのような話をしては不敬だと思うのですが」

「自ら言うか。まぁ良い。ノアは城で過ごしている間はそのような冗談1つ言うような娘ではなかった。王家として相応しい振る舞い、王家として素晴らしいと言われるような行為しかしていなかった。それが嫁いだことによって自由を得たのならそれもよい。それにノアが望んでいるのであれば多少変な事をしてもよい」


 いや、義理の父親からそれを許可されても反応に困るんだが?

 というかこれリリアと殿下の見合いで俺が陛下に夫婦生活の報告しに来たわけじゃないんだが??


「以前にも言いましたが責任をとれるほどの財力はないのでそのような事は致しません」

「財力なら例のタイプライターで財を成しているではないか。それでも足りないと?」

「足りないというよりはタイプライターだけでは食っていけないという事です。領内の事業を安定させながら他にも便利な道具を作り、安定した財を得なければ成功したとは言えないでしょう」

「どこまでも真面目で臆病とも取れる言動ばかりだ。他の物ならタイプライターだけで成功したというだろうに」

「他の方の考えは分かりません。それからここは殿下とリリアの見合いの席、私達ばかり話していては先に進みません」

「おおすまんすまん。そうであったな。息子の恋路を邪魔してしまう所だった。では改めて見合いを始めよう」


 見合い、と言ってはいるがお互いの事を知るためにおしゃべりをするというよりは王族と今後どう関わっていくかの取り決めの様な物を両親達は話し合っていた。

 それを子供の前で聞かせているのはわざとだろう。

 目の前で王家と両親はこういうやり取りをして、こういう約束をした。それを身に沁み込ませるためだと思う。

 そして自分達もその約束を守らなければならないと自覚させるためだ。

 そんな良家の約束をしっかりとした後ようやくリリアと殿下の話に変わる。


「リリア嬢、改めて私からの求婚を受け入れてくれるだろうか」

「はい。お受けします」


 …………ん?

 リリアさん?もうちょっとセリフあってもいいんじゃない?

 殿下も戸惑ってるよ?


「な、何か私からリリア嬢に渡せるものはあるだろうか?親愛の品としてぜひ送らせてもらいたい」

「…………贈り物は十分です、代わりに1つだけ聞きたい事があります」

「何でも申してみよ」

「殿下はノアお姉さまのように私の事を愛してくれますか?」


 おや?なんか俺達も想定してなかった事を聞き始めたぞ。


「それは……どういう事だ?」

「私はお兄様とノアお姉さまの関係に憧れています。ノアお姉さまは毎日お兄様に気に入られようと努力している事を知っているので愛するための努力という物を少しは学んだつもりです。そしてお兄様はお姉さまからの愛を受け入れながら自然と愛しています。私もそのような関係になれたらと思います」

「う、うむ」

「ですから婚約したので私は殿下を愛します。妻として夫である殿下を支え、我が身と心を捧げる事をお約束します。その代わり私とクロエス様を愛していただけますか?」


 …………これ、貴族としてはどうなんだ?

 そもそも俺とノアの関係ってそんな羨ましがれるような関係なのかどうかも分からない。

 まぁノアが俺に気に入られようと努力している事は知っている。それこそ最初に言っていた振り向かせると言っていたあの言葉とも関係があるだろう。

 それでリリアは殿下を愛すから殿下は婚約者である2人を愛せと。


 真っ当な内容であるように俺は感じるが男尊女卑もある程度あるからな~この国。

 そもそも相手王族だし?関係あるのかないのか分からないけど。


 それにリリアの言葉に俺だけじゃなくてノア以外みんな戸惑ったり驚いたりしているじゃないか。

 ノアは憧れの様に見られていた事を知って嬉しそうにしてるけど。

 それで殿下は?殿下はどう返す?


「リリア嬢だけではなく、クロエスもか?」

「当然です。私だけではなく正室であるクロエス様の事も愛してもらわなければ困ります。私は正室の座を狙っていません。側室として殿下を愛しながら国の発展のために努力していく所存です。ですので私だけ、クロエス様だけを愛すのは不平等かと。もしそれが出来ないのであれば……」

「あれば……」

「この場で婚約は解消するべきかと」


 我が妹ながらかなり強気な交渉じゃありませんか!?

 いやだってさ、相手の方が偉いのに強気すぎるだろ……

 まぁこっちとしては王家からの印象が悪くなる……のは大きな痛手だけど、だからって何が何でも回避しなければならないほどでもない。

 でも求婚してきた相手をフルのは……俺もしたな。


 これに大混乱しているのはもちろん殿下。

 ここまで強きに来られるとは思わなかったんだろう。

 あれこれ考えているようだがリリアはため息をつく。


「すぐに言ってくれないという事は殿下は私の事を愛してはくれないのですね……」

「違う!!そうではなく2人を愛すというのにどう返事をすればいいのか分からず!!」

「良いのです。所詮私は伯爵家、私よりも優秀なクロエス様と愛し合ってください……」

「そうではなく!!私が一目惚れをしたのはリリア嬢であり!クロエスは――」

「リリア嬢。息子を困らせるのはそこまでにしてもらいたい。これ以上は余計な事を言いかねない」


 とっさ位に陛下が殿下の口を押さえてそれ以上の言葉を封じた。

 明らかに芝居がかった言葉だったが、殿下がここまで冷静さを失って言うなんて多分相当レアだろう。

 ノアもいい弱みを見つけたと言いたげな表情だ。


「申し訳ございません陛下。しかし私はあくまでも側室、正室よりも愛されては問題が起こります。そして私は正室にふさわしい者ではありません。その事を改めてお伝えしておきたかったのです」

「その忠誠しかと受け取った。変な気を起こすなよ、ヘルダイム」

「はい父上……」


 殿下はリリアを睨むがリリアは涼しい顔をして受け流す。

 これ本当に見合いなのかね……そして俺の時と大分違うのは嫁ぐと嫁を迎えるという違いだろうか?

 もしかしたら娘を嫁に出す方が気が楽なのかもしれない。

 知らない女を家族に迎え入れる方がリスクが高いんだろう。

 それにしてもこんな事をしても婚約破棄にならないって逆に変な感じ。


 となると後はリリア次第か。

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