何故か社長になりました
それから少し時間が経った。
父親を通じてタイプライターは正式に販売されて会社になった。
その資金源を元に両親からの借金は返済。晴れて自由の身になった。
「なのに何でこうなった?」
「言い出しっぺの法則では?」
「誰だよその言葉教えたの。あとほぼ家族経営っぽいのが怖い」
何故か俺は代表と書かれた席に座り、その両隣にノアとリリアがいる。
会社の経営をついでに学べと父親が俺に用意したポストである。
「いや経営学とか一応学んだ程度でこう言うのプロがやるもんじゃないの?」
「でもお父様はお兄様が代表をしろって言ってたよ」
「やっぱり今のうちに小さなところから経営を始めていづれは領地経営も任せられるようにって意味なんじゃない」
「だとしても急すぎるんだよ。11歳の代表とか舐められるだろ」
どっかのやっすい夢小説ではないのに11歳で社長とかできるか。
ああいうのって人脈とかしっかりと築いている人がやるもんで俺みたいなど素人が出来る訳ないだろ。
「ですから表向きは私達が行います。アレックス様はただ良い悪いを言えばいいのです」
「それはそれで働いていると言っていいのか……あと本当にお父様が悪いな。隠居生活楽しみにしてたんじゃないの?」
「いえいえ、若い者にはまだ負けませんから」
そういう白い髭を生やした紳士が父が経営している商人の元代表、パンサーである。
既に彼が居た商会は彼の息子が継いでいるらしく隠居していたのを引っ張り出してきた。
そのせいでこちらは申し訳ない気持ちの方が大きい。
「それにこのタイプライターという商品。大変すばらしい物です。これなら確実に売れるでしょう」
「そりゃどうも。でもこの国の識字率は低いだろ?王族貴族にしか売れないから一般に普及する可能性は低いんじゃない?」
「いえ一般にもある程度は普及させる事は可能です。実際私が居た商会でもこれがあれば売り上げに関する報告書など簡単に作れたでしょうに……」
「やっぱりみんな手書きに疲れてたんだね。それで魔道具技師たちは雇う事に成功した?」
「成功したしました。少数ですが軍事関連の物よりも生活の役に立てる製品を作りたいと考えている方は居ますのでその方々を雇う事にしましたが……本当に少数でよろしいのですか?」
「今の所は、かな。その商品を販売するときはちゃんと工場を持っているところに任せる方が良いと思う。それにかなり時間かかるかもしれないし」
「複写機、と申しましたか。絵や資料を複写して大量供給する魔道具。確かに実現可能には少々時間がかかりそうですね」
「だからぶっちゃけ実現可能なのかどうか分からない。その間にも他の魔道具製品を販売するのであればそちらにも労力を割きたいが、あくまでも目標は複写機である事は見失いたくない。これなら軍事転用も難しいだろうからね」
「分かりました。しばらくはタイプライターだけでも売れるでしょう。その間に資金を少しでも増やします。
「それからデザイナーとかも雇ってくれた?貴族向けに売れるようにデザインを凝った物にしたり、デザインをシンプルにして一般向けに売れるよう差別化できるのなら差別化したいんだが」
「ではそのように通知しておきます。他に何かありますか?」
「何か困った事があったらすぐ俺に教えてくれ。成果を出したらしっかりとボーナスでも休暇でも何でも出す。社員達の士気を高めるためにこの事はしっかりと伝えてくれ」
「承知しました。それでは伝えてまいります」
そしてパンサーは代表室を出て行った。
「……さて、俺達はどうすればいいんだ?」
「彼に任せて大丈夫なら屋敷に戻りましょう。特にこれをしなければならないという事はないのだし」
「素人だからベテランに任せるのは当然だが……なんだか変な気分」
きっと本当の会社経営とはもっと違うんだろうが初心者には経営を任せられる人に任せるしかない。
あと魔道具開発も色々広げていく方が良いのかな?
最終目標はリリアのカード製作だけど。
「本当にみんな俺みたいな子供がトップだって思って不満に思ってないのか?」
「それはほとんどないわよ。名目上はバシレウス様が一番偉いと思っているでしょうから大丈夫よ。私達は給金を与え、労働させるのが貴族なんだから」
「……そういうもんなのかね~?」
ノアは最初から王族として育ってきたから人を使うというか、人を働かせることに対して特に疑問を持っていない。
だが俺は前世の記憶があるので自分も働かないといけないという思考にどうしても行ってしまう。
そりゃ社長だからって仕事を全部部下に丸投げする訳ではないだろうけど、それでも何か分かりやすく働いているという名目が欲しい。
それじゃ次に作る魔道具の案でも考えておくか?
出来るだけ兵器転用されないような物を選ぶとなると……洗濯機?
「お兄様。魔道具作りもいいけど、魔物はどうする?」
「あ~魔物か。すっかり忘れてた」
「ちょっと、元々この領地は他国からの侵入者防止と魔物を国の内部に入らないよう防ぐのが目的なんだから忘れちゃダメよ。むしろそういう魔道具でも作る?」
「それだけはダメ。それ思いっきり軍事利用目的の魔道具作りじゃん。他の連中に目を付けられるからなし」
「それもそうね……」
ノアは残念そうに言うが、さすがに俺の半端知識で銃とかミサイルとか、そういうのが作られたら非常に困る。
この世界に魔法と言う便利な物があるから長距離武器は必要ないと言われるかもしれないが、それでも念には念を入れてという奴だ。
武器開発に関しては知らぬ存ぜぬが一番平和だろう。
それに俺にはまだ能力がしっかりと解明できていないスピリット達が大勢いる。
特に広範囲の除去能力を持つスピリット達の能力範囲が不明なため気軽に使えない。
せめて効果範囲が分かればいいんだが……
と言ってもこればっかりは実験できない。
もし使ったらうちの領民全員死にましたなんてなったらマジで魔王ルート一直線だぞ。
それだけは絶対に嫌だ。
「となると国の防衛に関しては今まで通り守るしかないかもしれないか」
「ノアお姉さま、またカードで遊ぼ」
「ええそうね。私ももっと上手くならないと」
「……あれ?俺は??」
「お兄様は強すぎるからダメー」
「ちょっと待て!それは流石に寂しいって!!それに最近は色んなデッキを試してるだろ!?それにリリアだって強くなってきてるし!!」
「え~でもお兄様そういう実験的に組んだデッキでもある程度強いでしょ。もうちょっと手加減してよ」
「それじゃ私達が作ったデッキで戦ってもらうというのはどうかしら?」
「……それ滅茶苦茶不利なデッキ作られたりしない?」
「あくまでも私達が作ったデッキを他の誰かが使ったらどんな風に使うのか、それを知ってみたいだけ。それにわざと作ったりしないわよ」
「そうそう。あくまでも勝てるようにデッキは作るって」
「……分かったよ。その代わりプレイする前にどんなカードが入っているのかくらいは確認させてくれ」
「あ、それはダメ。デッキの内容見られたら絶対強いから」
「マジで!?」
何か俺だけ圧倒的に不利なんですけど!?
どんなカードが入っているのか分からないのにそれをうまく使えって……難易度MAXじゃね?
まぁ楽しいならいいけど。




