社交界という名の婚活開始
王都に来て3週間。
王族に会うための準備やら何やらで色々忙しかった気がするがとうとうこの日が来た。
ブレイドもモンクーも綺麗にブラッシングされた状態でピカピカのモフモフ。だからリリア、モンクーの事もふって毛並み乱れない程度に撫でろよ。
そう思いながら俺達は王城に入る。
初めて見る他の貴族や貴族の子供を見て案外普通だな~っと思ったので緊張せずに済む。
だがふと思った事があるので父親に聞いてみる。
「ところでお父様。ぶっちゃけこの場って危険じゃありません?」
「……それはどういう意味でだ」
「本当に思いつきなのですが、他国の暗殺者が居たら絶好の機会だなっと思いまして。特に王族とか」
「……本当に思い付きで恐ろしい事を言うなお前は。もちろんそのような事起きないようかなりの警備を敷いてある。お前が心配する事ではない」
「それもそうですね」
王族が現れるというのに警備がザルな訳ないだろう。
もしザルだったらこの国のずさんさを垣間見ることになる。
まぁ俺の言葉にビビる貴族の子供は居たみたいだけどな。
さて、入場出来た後は基本的に両親と一緒に挨拶回り。仲良くしている貴族とか、父親の上司とかそういう人とあいさつをして顔と名前を覚えてもらう。
社交界とは基本的にこういう顔を合わせて体外の信用度を確認し合う場所の様だ。
日本の様に自動車や電車が普及していないからこうして会える時に会って顔と名前を忘れられないようにする事、そして今後ともよろしくお願いしますという感じ。
あと相手にも子供が居れば仲良くしておこうね、的な感じの雰囲気作りをする。
貴族とは腹芸の連続で疲れそうだ。
ちなみにリリアは周りの貴族も子供も怖いと思ったのかずっと母親の影に隠れている。
さらに言うとリリアは周りの男の子達から見れば可愛いようだ。
前に言った通り子供にとっては婚約者探しの場でもある訳なのでちょっとでも可愛い女の子や、将来綺麗になりそうな女の子にアタックを仕掛ける。
そして妹にアタックを仕掛ける男の子達が意外と多い。
幼くても男という事なのか、ぐいぐい来る男の子もいるので余計に苦手意識をもってしまいそうな雰囲気があるのでモンクーに軽く指示。強引な男の子を追い払えと念じるとモンクーはそれに反応してリリアの前に出る。
小さな子ザルであっても木の棒を振り回してくる相手に怖がるのか、男の子達を散らした。
「……アレックス」
視線こそ厳しい父親だったが、手では小さくナイスとサインを送る。
大人が手を出すよりも良いと思うし、かと言って襲うというほどの乱れっぷりでもない。
文字通り主を守ろうとするペットの姿なら他の者達にペットの忠誠心といえば通るだろう。
そして俺の方はというと……
「あなたがアレックス様?初めまして、わたくしは――」
父親と仲良くしている令嬢と普通に話していた。
どうやら父の評価は高いらしく、その息子なら有望株かも知れないっという感じで見定めに来た感じ。
それに関してはこちらも同じなので同じように妻としてふさわしい感じがするかどうか見定める。
ぶっちゃけ婚活だからな……条件が合えばそれでいいやって感じ。
表面上はにこやかに、でも頭の中では色々損得勘定。
つまらないと言いたければいい。恋がしたくて婚活会場に来たわけじゃないんよ。
なんて少しの間女の子の相手をした後飯を食う。
やっぱ人生2周目でも高校生で死んだら結婚願望低いな~っというのは自覚する。
周囲から品がないと思われるようにわざと皿にできるだけ多く乗せて料理を食う。
「そんなに腹が減ってたのか?」
「慣れない事をすると腹が減ります」
といいながら料理を食べ続ける。
妹の方は男の子に苦手意識が出来てしまったのか、他の令嬢達と仲良くしようとしている。
母親もその隣で貴族の婦人達と話をしているので大丈夫そうだ。
次は何を食べようかな~っと料理を選んでいる時にどっかの騎士が号令で王族が入ってくる事を教えてくれた。
騎士に守られながら現れたいかにも王様という風貌の人が王様だろう。王冠被っているし。
その隣には多分王妃、その後ろに男の子が立っている。
その男の子は前に出て言った。
「初めまして、私はヘルダイム・フォン・ディクト・ゼレン。皆様本日はお集まりいただきありがとうございます」
慣れた様子で自己紹介と今後の貴族との関係性やら何やらを語る王子様。
その様子を飯を食いながら言う。
「王族ってのはみんなあんな感じなんです?」
「あんな感じとは?」
「年相応とは思えない言動とか、年齢以上のふるまいを求められる的な」
「その通りだな。王子として各国に見られてもふさわしいように教育されるからな。お前のように王族が出てきたのに飯を食う事に注意を注ぐ者には無理な話だな」
だってぶっちゃけこの世界の楽しみって飯くらいしかないんだもん。
ゲームもマンガもアニメも何もない。
娯楽を楽しむと言ったら小説を読むとか、舞台を見に行くとかそれくらい。
でも小説は本その物が高価だし、舞台は王都でしかやってない。
娯楽部分があまりにも貧相過ぎて娯楽にあふれていた日本が本当に恋しい。
海外で日本ほど楽しみがないって言ってたのは似たような状況だったのかな?完全に想像だけど。
「王子の事はしっかりと頭に入っているな」
「俺同様に神様から贈り物をもらった人。ただ頭がいいだけじゃなくて魔法に関しても才能がありぶっちゃけこの国の未来安泰じゃない??ってくらいの麒麟児」
「かなり言葉は軽いがその通りだ。これから私達はあのお方を守る事が使命となる。しっかりと覚えておけ」
俺個人としてはあんな小僧1人に国の未来を背負わせる方が色々不安だけどね。
やっぱり日本が民主化だったからだろうか?
たった1人が居なくなったら国として危機的状況になるというのがどうも実感がわかない。
それでもこの人が将来俺の上司の上司くらいになる可能性はあるので今のうちに挨拶だけはしておく。
挨拶しなかったら家に泥を塗る事にもつながるので案外こういう細かい所が後々後を引く結果になるかもしれない。
「初めまして殿下、アレックス・ヘキサグラムです。以後お見知りおきを」
「君がバシレウス殿とアーシャ殿の息子か。君も神から贈り物をいただいたと聞いた。今後よろしく頼む」
「は」
そう軽く挨拶を済ませてさっさと引いた。
お偉いさんとの話よりも飯飯。
どうせすぐ名前だけの存在になるさ。
なので今日の任務は一応終了。
あとは出来るだけ飯を食って楽しもう。
なんて思っていたらブレイドが何かに気が付いた。
俺もなんだろうと思ってその方向に視線を向けてみると、この間の白猫が居た。
料理を持ったまま近付くとどこかに逃げてしまう。
走る必要もないので歩いて白猫を追うとなんだか綺麗な庭園に着いた。
社交界の会場の様な広さはないが、綺麗に並んでいる花々は誰かに見せるよりも誰かの趣味で植えられている印象を受ける。
白猫はそんな庭園の真ん中で茶を楽しんでいる女の子の元に居た。
綺麗な白銀の髪が特徴的なその子は俺を見てすぐに肩を震わせた。
「…………食べるか?」
皿を持ち上げながら聞くと女の子は恐る恐る頷いた。




