私
私の夫は仕事が忙しくて帰宅は常に遅く……。
帰宅しても夫は家事をすることがありません。
仕事をして帰宅した私は家事に追われて、ホッと一息つくのは入浴時間です。
そして、お風呂上りにビールを飲みます。
いつも、一人です。
子どもが居ないので、時間は家事が終われば全て自分一人のものです。
子どもが欲しいのに、子作り自体が……私と夫にはありません。
そういう話し合いをする時間すら無いのが私達夫婦です。
今日の自分の時間は、職場で後輩たちが騒いでいた……あの、とおるこーらん を見ることです。
PCを起動して、YouTubeのホーム画面から検索しました。
「え~~っと、とおるこーらん っと。 検索!」
「出て来た!」
「さぁ、どんなのを見て、あんなに盛り上がって…!
見たら分かるかな? 今の子の盛り上がること……。」
画面のおばあちゃんは、一応、顔を隠しています。
マスクを着けて………。
「まぁ、皆さん、ようこそ、お越しやす。
とおるこーらんの 人生相談でおます。」
⦅関西弁? 関西の人なのね。⦆
「さぁ、今日のご相談のメッセージを読ませて貰いまひょ。
初めまして。…… はい、初めまして。
私は36歳の主婦です。………36歳、いやぁ~ 若いわっ!
実は夫のことで悩んでいます。………うんうん。そないなお方が多おます。
私も夫も働いているのですが、………今は皆さん共働きやねぇ。
夫は家事を全くしてくれません。」
⦅あ……ここは無いのね。コメント。
必ず、一々コメントするんじゃないのね。⦆
「夫は家事をしてくれないだけではなく、自分の仕事の手伝いまで私にさせます。
どうしたら、夫の心を入れ替えて貰えますか?」
「追伸があったら、メッセージを送っておくなはれ。
ま、今のメッセージだけでお答えさせて貰いますわ。
う~~ん。そりゃ、あんさん、無理だっせ。
ご結婚されて何年か書かれてまへんけど、36歳やったら、もう何年か経って
はりますやろ。
一遍も旦那さんにご自分のお気持ちを言わはらへんかったんやったら………
もう遅おますわなぁ。
ま、一遍、ご自分のお気持ちを旦那さんにお話しなさい。
ほんで、あかんかったら……… あんさん、別れなはれ!
一人でも生きていかれはるんやったら、家事してくれへん旦那さん………
要りまっか? うちやったら、要りまへんわ。
ま、お子さんが居てはるかどうかによっても、違いますけどな。
けどな。家に居てはっても、役に立たん旦那さん見て、お子たちが、な。
どない思わはるか…… 男やったら家で遊んででもええ!と思うたら
あんさん、お子が男の子やったら、離婚案件だっせ。その考え……。
まぁ、父親として、ええ手本やないことだけは言えてまっせ。
まぁ、うちやったら、別れますわ。要らんさかいに……。」
⦅過激! めっちゃ過激!! 別れなはれ!って簡単に言うなんて!
けど、ライブのコメント……賛同者が多いなぁ…… やらせ?⦆
「いつからか分かりまへんけんど、男はんが偉そうにならはったんですわ。
家の仕事せんでも ええ!って、偉そうに…な。
けんど、昔の日本の家は男はんに家事がおました。
例えば、薪、あれ木を切りますやろ。あの仕事は旦那さんの家事でおました。
力仕事は旦那さんの家事でおましたんや。
年末や夏の大掃除、あの時の旦那さん、大活躍でおました。
畳を上げたり、入れたり……畳は男はんの家事でおました。
それに、正月三が日は女が台所に入らんでもええように……
大みそかに作ったんがお節でおます。
三が日はそれぞれのお家で旦那さんが台所に立ちはるんだっせ。
いつからか、そんなことしはる お家が無うなりました。
そやから、男はんにも手伝うて貰う、やのうて…家事をしはる。
それが、昔の日本では当たり前やったと知ってください。
家事をせんかったら、離婚されても文句言えまへんのや。」
「追伸:子どもが居ますから、離婚は避けたいです。……ほな、話しなさい。
離婚したないんやったら、とことん話し合いなはれ。
話し合うのもせんといて、分かって欲しい!は無理だっせ。
まだまだお若いんやし、お子もおいでやねんから、気張って旦那さんと
とことん話し合いなはれ!
お子のためだけやあらしまへんで、何よりも、あんさんのために!だっせ。」
「嫌だ………。なんで、泣いてるの……私………。」
その日から、私は一人で夜遅くまでネットで、YouTubeで、とおるこーらん を聞くようになった。