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落ちこぼれ勇者は最強吸血鬼とエンカウントしたようです  作者: 猫山 鈴
〜第一章 始まりの旅〜
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第七話 旅立ち

 チュンチュンと小鳥の囀りで目を覚ます。そしてフカフカの布団から這い出したエーデルは早速着替え、洗面所で整容を行う。

 「エーデル様〜。おはようございます〜。」

 そう言って声をかけて来たのは昨日客室まで案内してくれた蝙蝠のショコラである。

 「おはよう!ショコラ!お陰でぐっすり熟睡できたよ」

 昨日は話す蝙蝠にビックリしたが話してみるとなかなか面白く、何よりパタパタと一生懸命とび、可愛い声で話すショコラを可愛くて仕方なくなったエーデルは直ぐに慣れ

 ショコラの方もエーデルとの話が楽しかったことや、珍しい女性の来訪者に興味津々だったこともあり、すぐに懐いた。今では仲良しの友人同士である。


 ショコラの案内でリビングとなる場所のドアを開ける。中からはふわっと焼けたパンのいい香りが漂って来た。

 「早いな…よく寝れたか?」

 「はい!お陰様で!」

 料理してるらしいシュリはエーデルに声をかける。

 「あれ?ヴラム様は?」

 「あの方は少し遅めに起きるのだ。それにあの方が口にできる人間の食べ物となると少ないしな」

 そう言ってシュリは先程焼いたベーコンエッグとカリカリに焼き上げた食パン。野菜の入ったスープをエーデルと自分の食卓に置いていく。


 「こっこれって全部シュリさんがつくったんですか!」

 「シュリでいい…さん付けと敬語はなれん。普通に話せ。それに従者として家事全般できて当然だ。たとえあの方が食せないとしてもな」

 「はぁ…成程…」

 ポカーンとするエーデルに対し、シュリは早く食えと話しかける。ハッとなりエーデルは頂きますと手を合わせ、スープを掬い飲む。優しく、しかし薄すぎないその味にエーデルは感動していた。


 「美味しー!久しぶりに人の作ったご飯食べたよ!シュリって料理上手なんだね!」

 「褒めても何もでんぞ?」

 照れた様子も見せないように見えて、うっすら耳が赤くなってることに気付き、エーデルは微笑ましく見る。

 朝食をあっという間に食べ終わった頃。扉を開ける音が聞こえる。ヴラムである。

 「ふむ、二人とも早いな。」

 そういいながらフワーっとあくびするヴラムにエーデルとシュリは微笑ましそうに見つめていた。


 

 「ふむふむ、しかしまさかシュリが名前呼びとタメ口を許すとはな」

 クククと笑いながら紅茶を飲むヴラム。そして次にこう言い出した。

 「ならば、俺もヴラムで良いぞ。敬語も要らん」

 「え?」「は?」

 ヴラムの発言にポカーンとした二人は直ぐ様我に帰る。そしていち早く動いたのがシュリだった。


 「ヴラム様?!なっ何を仰っているのですか?!貴方様は吸血鬼の王!タメ口で話していい方では…」

 「その王として扱われるのも少々飽きて来たのだ。しかしお前は俺にその口調を変えてくれるとは思えんからなぁ。小娘にさせようと思ってな。面白そうだし。」

 「えーと、じゃあよろしくね?ヴラム?」

 「お前もサラッと受け入れるんじゃない!」

 なんとなくヴラムがシュリをわざと困らせてる理由がわかって来た。無表情、無口の彼の百面相はなかなか面白く揶揄いがいがある。少し思考がヴラムっぽくなってるエーデルである。


 「ヴラム様荷物の準備が出来ました。」

 そう言ってシュリはでかい荷物を背負いながらやって来た。結局昨夜の喧嘩はシュリの粘り勝ちであった。

 「ふむ…小娘?準備できたか?」

 「出来てるけど、ヴラムの転移魔法で行けないの?」

 「魔女は警戒心が強くてな、特にあのババアは厄介だ。下手すると魔法に介入してきて転移先が毒沼というパターンも…」

 「ごめん…歩きでイイです…」


 疑問を口したエーデルに帰って来たのは恐ろしい予想である。やはり強くなるのは楽ではないということだろう。

 ヴラムの話によればここから歩くと数日は掛かるらしい。それまでの冒険だ。エーデルは不安もいっぱいだが同時にワクワクしていた。

 私という勇者の旅が始まるのだという期待に胸を膨らませながら、エーデル達は旅立ちの一歩を踏み出した。

続きます

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