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落ちこぼれ勇者は最強吸血鬼とエンカウントしたようです  作者: 猫山 鈴
〜第一章 始まりの旅〜
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第六話 いってきます

 まず、エーデルはギルドに顔を出し友人のアリカに、旅に出ることを伝えようとした。だが、

 「エーデル!なにその後ろの二人!きゃー♡どっちもイケメンじゃないのー♡やるわねエーデル♡」

 「おいおいエーデル!男連れかよー!くっそ!俺狙ってたのにぃ」

 ある意味有名人なエーデルがいきなり男二人を連れている。しかも片や人形のような美青年。片や逞しく、男らしい美丈夫だ。


 (うん...客観的に見て...めっちゃ目立つ)

 少し死にそうな顔をし、胃をキリキリさせるエーデルとは対照的に、慣れてるのかすました顔のヴラム。シュリは若干挙動不審に陥っている。

 「とっともかく!私、旅に出るから!暫くここには顔出せないの!それだけだから!じゃーね!」


 ともかくここから離れたくて他の二人の男達の手を引きギルドから飛び出した。後ろから、愛の逃避行♡素敵だの逆ハーパーティでも作るのかだの聞こえるが全て無視する。なんだ?逆ハーって?少なくとも、性格悪い吸血鬼との恋愛は御免被る所存である。


 しかしギルドが出た後もそれは続いた。同性からは、嫉妬の視線を浴びせられ、異性からは若干引いてる顔をされ、目立つのがあんま好きじゃないエーデルにとっては苦行である。するとヴラムはクククっと笑いだした。


 「貴様?勇者であろう者がこのくらいの注目で、そんな死にそうな顔をしては情けないだけだぞ?まぁ面白いから良いけどな」

 この男は...エーデルは奥歯を噛み締めながらヴラムを睨む。

 「おー怖い怖い。ふむもう少し見ていたいが、特別に転移魔法で街から出ようではないか」

 なら最初から使えや...というツッコミをグッと抑え、エーデルとヴラム、シュリの3人は転移魔法で移動した。


 着いた先は、沢山の本棚が並ぶ塔の中だった。

 「何処ここ?」

 「ここは我が主であるヴラム様の住まいだ。ブロッサムの街から見えてた、草原に立つあの石造りの塔があっただろう?それがここだ」

 確かにそんな塔が立っていた。しかしその塔は建たれて千年以上たっており、街では中に入るのは危険だという知らせもあったのだ。とはいえ行った所でヴラムの施した結界で中には入れないのだが...


 見るとヴラムの周りに小さい蝙蝠が集まって何やら話している様だ。蝙蝠と会話する青年という不思議な光景を見つめながら、エーデルは今後の事を考えていた。



 

 空は少しずつ青からオレンジへそして闇へと色を変える黄昏時。夜は吸血鬼にとって絶好の狩の時間であるが、ヴラムはそんな気分ではなかった。


 「おい小娘、そろそろ夜になる。出発は明日にして今日はここに泊まれ」

 「えっ!でっですが...えっとその…」

 エーデルはもじもじしながらヴラムとシュリを交互に見つめている。顔もうっすら赤い。シュリは少し?を浮かべて不思議そうな顔をしている。ヴラムは口を開いた。


 「はぁ、安心しろ。貴様のような色気皆無な小娘を襲う真似などせん。ここにはメスの蝙蝠もいる。何も女は貴様だけではないぞ?」

 と意地の悪い顔でニヤリと笑うと、エーデルは不機嫌そうな顔になり

 「どうせ!魅力のない小娘ですよー!」と怒り出す。

 ヴラムはそれを愉快そうに笑いながら、自身の血を飲ませて眷属にした蝙蝠(女)に客室に案内するよう指示する。

 喋りながら案内する蝙蝠に驚愕しながらも、大人しく着いていくエーデル。

 そしてエーデルが去った後シュリがヴラムに話しかける。


 「しかし、宜しかったのですか?あんなこと言って」

 「あんなこと?」

 やや呆れ顔で聞いてくるシュリに聞き返すヴラム。

 「魔女王様の処へ案内するという約束ですよ!いつものあなた様なら人間一人悩んでも放っておくでしょ?!」

 ああ、そう言うことかと納得し、ヴラムは自身の従者に向き直った。


 「いや、別に良いではないか、二百年以上生きてると退屈で仕方ないのだぞ?たまには冒険でもして暇つぶしでもと思った所存だ。…それにあのババアには用があるしな」

 最後はボソッと言ったためかシュリは聞き取れなかったようである。しかしため息をつき、

 「ヴラム様!その旅に私も同行させて頂きます!」

 そう強く言い放った。

 「いや、大丈夫だから、留守ば「いーえ!私がいない時に貴方様にもしもの事があったらなりません!ぜひ連れて行って下さいませ!」


 シュリはかなり有能な従者である。が、かなりの過保護かつ口うるさいのである。たまに離れたいなぁと思う時があり、チャンスだと思っていた。のにこれである。

 「えーい!鬱陶しい!何度も言っておるだろ!自分の事は自分でできる!少しは主離れしたらどうなんだ!?」

 「いーえ!私が貴方様を見張っておかなければ、あの少女にも迷惑を掛けかねません!着いていきます!」

 主従の言い争いは遅くまで続いた。


 

 そして…

 シュリとの言い争いを終えたヴラムは、深夜、塔の裏にある庭へと向かった。石造りの扉を開けると一面には様々な色の薔薇が美しく咲き誇っている。ヴラムはそんな周りの薔薇に見向きもせずに、スタスタと一直線に歩いていく。

 そこには赤い薔薇のアーチが掛かっている。そしてその下には四角形の小さな墓跡が存在感を放っている。

 「ロゼ…」

 一言小さな、本当に小さな声で呟きながら、ヴラムはその白い手袋を嵌めた細い指で墓跡に掘られた名前を愛おしそうになぞる。


 そしてヴラムは墓跡に両手を添え、額を墓跡に押し付けた。まるで祈るように。月光に照らされたその姿はとても美しいが、しかし何か物足りなささえ与える。思い出す。

 自身の昔の本当の名を優しく、愛おしそうに呼ぶ、あの声があの笑顔が、

 ヴラムにとって、それは毎日の習慣だ。時が何年経っても、絶対に飽きた事のない。大切な習慣なのだ。

 そしてヴラムはこれからの旅でこの習慣が行えなくなることと、行って来ます。と言う言葉を心の中で呟きながらそっと墓跡に口つけたのだった。

シュリ(127歳)


ヴラムの従者である鬼人の青年。額に2本の角がある。魔力はないが、怪力と飛び抜けた運動神経を持つ。家事は完璧にこなせる。自由人な主に振り回されてる苦労人。常識人で心優しいが、無表情かつ無口が多く怖がられやすい。

 幼少時に奴隷商に売られてるのをヴラムに助けられてからは彼に育てられた。その為に彼には恩を感じていて、甲斐甲斐しく世話を焼いている。若干行き過ぎる時があり、主からも引かれる時がある。


アリカ(18)


ブロッサムのギルドで受付嬢をしているエーデルの友人

恋愛が大好きでよく恋バナを進んで行う。エーデルにも恋愛を勧めるが、本気で彼女の事を心配している。

 最近エーデルが連れて来た美形二人組が気になってる様で特に好みなのはシュリ。

 エーデルが旅に出ると行ったのを愛の逃避行♡と思ってるが、本当に大丈夫なのか若干気にしている

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