第五話 ヴラムの策
なかなから街から出てくれない
どうしてこうなったんだ?エーデルの頭は?で埋め尽くされていた。今自分は吸血鬼の青年と鬼人の青年と共に行動している。しかもやたら見た目がキラキラしているせいか周りの目が痛い。特に同性からの。エーデルは痛む頭を抱えながら思い出す。
町に戻った後、ヴラムはこう言い出したのだ。
「おい、小娘。貴様他の者に馬鹿にされながら何故、戦おうともしないのだ?」
「いや...あのぉヴラム様が先に二人にバトルを持ち掛けた気がするんですけど。いや喧嘩売って来たのはあっちだけど、転移魔法使ってバトルする気満々だし、めっちゃ煽ってたし...ってすみません!すみません!だからそんな目で睨まないで下さい!めっちゃ怖い!」
エーデルの発言に徐々に眉間に皺を寄せ、凶悪な顔つきになるヴラム。エーデルは恐怖のあまり震えまくる。
「ちっ...まぁ良い。所で小娘よ?魔女王という存在は知っておるか?」
「はっはい!存じ上げております!魔法のエキスパートである種族、魔女の頂点であるお方!"永遠の魔女 マギリカ マギルゥ様"!」
マギリカ マギルゥ...噂では5000年を生きた魔女だ。魔法を使わせれば勝てる者はいない。彼女が本気で魔法で戦ってしまえば、周りの生物は生きることはまず不可能とまでされる。そして瞳の色はヴラムと同様の赤色である。
「その情報に食えない性格のクソババアという情報も追加しておく事をお勧めするぞ」
「お知り合いなんですか?」
「知り合いも何も「ヴラム様ー!!何処へおられたのですか!探しましたよ!」
息を切らしながらヴラムの従者、シュリが駆け寄って来た。背中には大きな荷物を背負っている。
「ほぉ...シュリよ、俺の発言を遮るとは良い覚悟をしておるな?」
「ヴラム様?素が出ておりますよ?」
「よいのだ。もうこの小娘にはバレておるのでな。」
え?と驚きながらエーデルを見やるシュリ。エーデルは
困った顔をしながらシュリに相槌を打つ。
「話の続きだが…魔女王ならばお前の魔法をどうにかしてくれるのではないか?」
東の国には「餅は餅屋」という言葉があるように、魔法は魔法のエキスパートに聞けば良いというのが、ヴラムが考えた策である。だが一つ問題がある。そう魔女王のいる場所である。
近年魔女は減少傾向であった。魔女の起源は遥か昔のこと、魔力を持つ女の子が生まれた。しかし彼女には花の紋様がない。つまり「勇者」ではないという事だ。そして不思議なことに、そんな現象は度々起こるようになった。しかも女性にだけ、人々は彼女らを魔女と呼び迫害や奴隷商に売り飛ばすといった差別を行った。
彼女達は逃げた。逃げるのを先導したのがマギリカというのも有名な話である。そして彼女達は自分達で新しい集落を作り出したのだ。...だが、果たして外の世界で差別された彼女達がわざわざまた外に行ってまで伴侶を探しに行くのかと言われれば、答えは否である。もし万が一バレた時のリスクがデカいのだ。
そのためか、恋愛は集落内で同性同士のカップルは出来上がっていった。だが集落の人口は増えない。そして彼女達は思った。もし自分達のように生まれた子がいたら、外の世界に自由を求めるという手段を失う可能性があると。
そんな個体数の少ない魔女の中でも特にマギリカというレアな魔女と出会うのは奇跡に近い。なにせ魔法のエキスパート。姿を隠すのも朝飯前である。
「だから、俺が共に魔女王の元へ行ってやろうと言うのだ。」
「は?」
ヴラムの発言にポカーンとするエーデルとシュリ。ヴラムはクスクス笑いながら言い出した。
「俺ならばあのクソババアの居場所が分かる。どうだ?悪い話ではないだろ?」
確かに闇雲に探すよりもずっと良いかもしれない。だが、エーデルは悩んでいた。先程のバトルで見たヴラムの本性、そして会ったばかりの他人である。信用するのは難しいと言うものだ。するとシュリが口を開いた。
「ヴラム様は元々、マギリカ様のお弟子様だったのだ」
すると、ヴラムは責めるような目でシュリを睨んだ。そして同時にエーデルの顔が驚愕に染まる。
「貴様...何を勝手にべらべらと!」
「ですがヴラム様?そこまで言っておかねばこの少女は信じることが出来ないのではないかと、実際疑ってた様ですし。」
「くっ...こんの馬鹿者めが」
ヴラムは肩をワナワナと震わせている。様子を見るに嘘ではないらしい。
「あっあの!わっ私!魔女王様にお会いしたいです!そのお願いします!私を魔女王様に会わせて下さい!」
お願いしますと勢いよく頭を下げる。するとヴラムは仏頂面を少し柔らかくし、
「フン!当たり前だな。精々、頑張るんだな」
「はい!ありがとう御座います!ヴラム様!」
ここまでは良かった。そうここまでは
ヴラム・ツェペシ(218歳)
主人公その1。見た目は細身の美青年。吸血時や人間に化けてる時は穏やかな好青年を演じていて、瞳の色は紫に擬態してる。本性はサドスティックかつ性格悪い。飽き性でもある。
吸血鬼の頂点に君臨する、最強の吸血鬼。昔は魔女王の弟子をしていた経験があり、ある程度の魔法は簡単に使用できる。師匠には弱いし苦手。
エーデル・ホワイト(17歳)
主人公その2。勇者として生誕した美少女。背中に花の紋様がある。しかし勇者としてできて当たり前の魔法が使えない。それを補うために体を鍛えており、並の女性より力が強く、身体能力は高い。腕っぷしならそこらの男にも負けない。
昔から親には冷遇されるは他の人には馬鹿にされるわの苦労人であり、ネガティブ思考。しかし自分に唯一優しい兄には懐いていて、ブラコン気味。