三章 第九話 ひとときの休息
2月23日投稿
そして翌日、エーデルは昨夜のヴラムの話が忘れられなくて少し悶々としていた。
(…いや…ダメでしょ私!旅の目的忘れんな!色恋のために冒険してんじゃないんだから!)
エーデルは心の中で自分を叱責し、なんとか頭から昨日の記憶を消し去ろうとしながら、他のメンバーが集まる朝食の場へ行った。
「ヴラムさんって本当にお料理できるんですね!」
「料理というかただのサンドイッチだぞ。そんなにはしゃぐ事なかろう?」
「く…ヴラム様申し訳ありません!本来なら俺が作るべきところを!しかし…再びヴラム様のお料理を食する事ができ感激の極みです!」
「大の大人が泣くでないわ!」
「え?」
そこにはエーデル以外のメンバー。マギリカ以外揃っていた。
並べられているのはサンドイッチである。
種類はフワフワの厚焼き卵が挟まったもの、トマトとレタス、ハム、チーズが挟まっているもの、クリームチーズとブルーベリージャムの挟まった物の三種類である。
そしてベルやシュリの台詞から察するにそれを作ったのがヴラムらしい。するとヴラムは、今度は湯気の立つトマトのスープをメンバーに差し出した。
ヴラムはエーデルに気付き、
「…よく寝れたか?」
「あ…うん!おはよ!今日のご飯ってヴラムが作ったの?」
「まぁな…ベルの奴がしつこくてな…」
「よく言うにゃん。ベルにすこーしお願いされてすぐにOKした癖に。「五月蝿いぞ。化け狸めが。」だから狸じゃにゃいにゃ!!」
ギャーギャーと言い合う二人は放置して、エーデルは席につく。シュリは嬉し涙を流しながら食べている。それに対してちょっと引いてしまうエーデル。
取り敢えず手を合わせて頂きますをしサンドイッチを一口齧る。まずはトマト等が挟まったサンドイッチから。するとパンに塗ってあったソースがピリッとした辛味を感じさせる。
具との相性も良く辛味が食欲を刺激してくれる。
「美味しい!ヴラムも料理上手なんだね!」
「師匠に散々作らされたからな…」
そう言ってヴラムも席に付き、トマトスープの具だけ取り除いた物をズズっと啜っている。
「そう言えば…マギリカ様は?」
「師匠は…昨日お前が俺と話した場所に行っている。」
そういえば…ロゼはマギリカの親友だった。
エーデルは再びサンドイッチに手をつけた。
「ロゼ。ふふふ…貴方も大変ね?恋人が重いと大変よね?束縛強くて辟易しそう。ただねぇ?あの子の事が好きって子が現れちゃったのよね。恋のライバル登場とは熱い展開だわ♡」
マギリカは薔薇園の墓石の前にしゃがみ込み、墓石に話しかける。
「大丈夫よ?あの子の事は任せて?意地悪なんかしないから…寧ろ今はあの子を守ってあげたいと思ってるぐらいだもの。
…大事な息子みたいなものよ。」
すると扉の開く音がした。
「師匠。そろそろ出発しますよ?」
ヴラムがマギリカを呼びにきた。
「OK♡ヴラム?サンドイッチ持ってきた?」
「ふぅ、ちゃんと持ってきましたよ。あとこっちの水筒にスープも入ってるんで…」
「ありがと!さっすが私の可愛い弟子♡」
「ハイハイ」
マギリカはヴラムと共に他のメンバーの元に集合した。そして一行は再び転移魔法でマグノリア大陸へと移動し、旅を再開した。
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