第二話 ブロッサムの木の下で
新たなキャラ登場
一方青年サイド
(ふーむ、見た目は磨けば光るタイプか...)
青年は品定めするようにエーデルを見やる。顔立ちも、薄く化粧が施されているが、健康的な肌に小さな顔、そして今は閉じられているものの、大きく空のような青い瞳、美しい金色の髪の一部が花の形をした髪飾りでまとめられている。体つきも細く華奢な体型である。
青年はエーデルの唇ではなく細く白い首に目を向けている。すると青年は口を開き、真っ白な尖った歯をその首筋に近づける。まるで噛みつこうとするように。
「ヴラム様!ここにおられたのですか!」
びくっと肩を揺らしエーデルは目を開けた。青年は先程の呼びかけに反射的にエーデルから顔を離し、なんでもないかのように取り繕いながら、先程の声の主に話しかける。
「おー!シュリではないか!どうしたのだ?そんなに息を切らして?」
「貴方様がお一人で何処かへフラフラと行ってしまわれたから探していたのですよ!してそちらの女性は?」
声の主は鬼人の青年だった。こちらはなかなかの美丈夫である。整った男らしい顔立ちに長身、そして美しくついている筋肉。羽織ってるのは東の国に伝わる民族衣装のようである。
「あっすっすみません!わっ私はエーデル・ホワイトと申します!」
「これはこれはご丁寧に、私の名はヴラムと申します。こちらの鬼人は私の従者シュリと申します」
そう「ヴラム」と名乗る美しい青年は微笑みながら、述べた。
「ところでエーデル嬢、先程はボーッとしていたが、何か悩みでもあるのかい?良かったら話を聞かせてはくれないだろうか?」
「ヴラム様!?」
「えっ!?けっけどご迷惑では...」
「大丈夫さ。気にしないでくれ。ところでシュリ?黒いインクもついでに買って来てくれないだろうか?」
暗に不機嫌な従者に席を外せと伝える。その意図を読み取りさらに眉間の皺を深くしたシュリは
「分かりましたよ。ですが手短にお願いします!」
そう言ってシュリは買い出しに戻って行った。
ヴラムとエーデルは町のシンボルである「ブロッサムの樹」の周辺に配置されたベンチに2人で座りながら話し始めた。
「まず最初に聞きたいのだが、君はもしかして勇者ではないのかな?君からは魔力を感じるのだが。」
「えっ!なんで分かったんですか!?というか...えっ?魔力?私に?」
エーデルは目を見開いた。魔力を探知できるのは同じく魔力を持つ種か勇者のみだからである。それに加えてエーデルは魔法が使えないのだ。魔力なんかないのではと疑いたくなるほどに。
「実は私は魔法の研究もしているのさ。魔法については少々詳しいのだよ。」
ヴラムは少し悪戯っぽく笑いながら答える。
「そっそんなんですね。でもならなんで私は魔法がつかえないんでしょうか?実は、私一応勇者ではあるんです。けど...」
「魔法が使えないと...もしかして君の悩みはそれかな?」
「はい...」
改めて自分で言っていて落ち込んだのか、エーデルは肩を落としながら答える。(どうせ...諦めろって言われるかな)家族や友人達にも言われて来た言葉。勇者を諦めろという言葉。エーデルは他人に相談してしまったことを後悔しながらヴラムの言葉を待った。
「魔法が使えなきゃ勇者はダメなのかな?」
「へ?」
「考えてもみろ。他の人間は魔法なしで武器で戦ってる。そもそも勇者はそこに魔法という要素が加わっただけに過ぎんだろ?
まぁ君が勇者という肩書きのみに拘るというならなんともいえないが、しかしどうしても魔法が使えないというのは、発動の条件になにか足りないとか?」
うーむとヴラムは顎に手を添えて考えているようだ。エーデルは驚いていた。初めてだったからだ。諦めろと言うどころか、しっかり相談に乗ってくれているからだ。
(優しい人なんだな...ヴラムさんって)
頬に熱を感じながら、エーデルは自分が勇者になりたいと願った時のことを思い出していく。
続きます