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落ちこぼれ勇者は最強吸血鬼とエンカウントしたようです  作者: 猫山 鈴
〜第一章 始まりの旅〜
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第一話 落ちこぼれ勇者

 「あー!もうなんで反応しないのよ!」

  ここは城下町「ブロッサム」。様々な種族が入り混じり共存する。「オルタンシア」の中でも大きい町でもある。

 そして冒険者達が集まり依頼を受ける冒険者ギルド内にて1人の少女が悲鳴を上げていた。


 「えっと...ドンマイ。エーデル...」

「うう...なんでよぉ...私は勇者なのにぃ」

 少女「エーデル」は勇者である。その背中には「勇者」の証でもある花の紋様が浮かんでおり、彼女の名前もその花「エーデルワイス」からとったという。

 しかし彼女は一つ致命的な欠点がある。それは「魔法」が使えないという最悪の欠点なのだ。


 「でもリングの色はなんの反応も示してないし...」

  そう言ってギルドの受付嬢兼エーデルの友人でもある、アリカはエーデルに貸し出した「メジャーリング」(簡単に言うと魔力測定器)を受け取った。

このリングは装着した人物から魔力を感知すると装飾の魔法石の色が変わるのだ。元の色は「白」しかしその色が「赤」に近くなるとその装着者の魔力が強いという証明にもなるのだ。そして「赤」はこの世界において最も高貴な色とされているのである。

 

 ギルドでは冒険者の実力をできるだけ正確に割り出した上で依頼の受付を行わなければならない。

 普通の人間ならば純粋な腕力や身体能力、依頼解決数を判断基準に、そして特に勇者は更に魔力まで測定されるのである。特に通称「赤紙」と呼ばれる赤い依頼書はハイリスク・ハイリターン受注するのさえ難しいとされている。


 「おーい!エーデル!もう諦めたら?お前弱いんだしさー!」

 「お前顔は可愛いし、ここの受付嬢でもしたらいいんじゃねーの?」

 ギャハハと笑う男達の声。エーデルは落ちこぼれ勇者として、やな意味での有名人でもあった。こんなヤジを飛ばされるのも慣れて来たものだ。


 「はぁ...うっさいなぁ..もう」

 「ねぇエーデル?別に勇者に生まれたからってそれに縛られなくてもいいのよ?普通の女の子として生きてもいいの!エーデルは可愛いもの♡素敵な人と恋するのもありだと思うけどなぁ」

 「なっ!わっ私はべっ別に恋愛とか興味ないし! 」

 エーデルは顔を真っ赤に染めて逃げるようにギルドを出た。



 「はぁ...」 

 トボトボとしかし、真っ赤な顔をしながらエーデルは町を歩く。

 「私だって普通の女の子で、普通に恋してお嫁さんとか憧れるけどさ...」

だがそれは「勇者」を諦めると言う選択肢を遠回しに示されていると言うことだ。


 ドン!

「キャ!」

 下を向き歩くエーデルに衝撃が走った他の歩行者にぶつかったと気付き、すぐさま反射的に謝罪を述べる。

 「すっすみませんでした!わっ私ボーッとし..て..」

 「すまない。私もボーッとしていたようだ。ケガはないかな?」

  エーデルは青年の美しさに目を奪われていた。透き通るような白い肌、吊り目がちながらもキツくなりすぎない紫の瞳、長く伸ばした漆黒の髪をひとつに束ねておりサラサラと流れている。

 体つきも細く、しなやかであり上品な漆黒のスーツがよく似合う。歳の方はおそらくエーデルと同い年か少し上ぐらいであると思われる。


 「?どうした?大丈夫かい?」

 頬を上気させ見惚れていたエーデルは青年の呼びかけに我に帰る。

 「いっいえ!だっ大丈夫です!」

 「そうかい?ならよかった。しかしこんなに可愛らしいお嬢さんと出会えるとはなんて幸運なのだろうか」

  「ひょえ!かっ可愛いなんてそんな!!寧ろそのなにかお詫びを...」

 「...お詫び..ね?実は欲しいものがあるのだが」

 「へ?そっそれは?(高いものだったらどうしよう)」


 青年はクスっと笑いながらエーデルの顔に手を伸ばし、指で彼女の唇をなぞる

 「私が欲しいものはこれだよ?」

 「へ?まっまさか、そっそれって」

 エーデルの心臓が跳ねる。青年の欲してるものが自分の唇と認識したからだ。


 「まっ待ってください!わっ私そんな!あの!」

「大丈夫だよ?私に身を任せてくれたまえ」

 エーデルは焦っていた。恋愛はしたことない。けれど正直なところ今目の前にいる青年が魅力的にうつっていた。

 

 青年はエーデルに顔を近づけた。エーデルは反射的に瞼を閉じ、気づくキスされるかもしれないと、だがどうにも惜しくて青年の唇を待ってしまう自分がいる。しかし青年は?


・オルタンシア

 作中の世界の名前。オルタンシアは紫陽花のことである。世界初めての勇者の体に浮かんだのが紫陽花だからという説が有力だが、真実は誰も知らない


・勇者

 人間族でたまに生まれる。魔力を持ち、体の何処かに花の紋様が浮かんでいる。色と花の種類が一致した上で同じ紋様を持つ者はいない。ごくたまに魔女として生まれた女性が勇者を名乗り隠れ蓑としている時がある。

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