プロローグ
「オルタンシア」...それがこの世界の名である。様々な種族が暮らすこの世界。
それぞれの種は自らの「王」に従い行動し自らの暮らしを守って来た。だが...高い魔力、身体能力を持つ彼らに対し我々、「人間」という種族はあまりに弱かった。
しかし、今から遥か数千年に1人の強い魔力を持った子供が誕生し、襲いかかる魔物を瞬時に倒してみせたのだ。
そしてその子が成長し、結婚し、子を成し、その子孫たちにも彼と同じく魔力が宿っていた。子供たちには印のように花の紋様が体に浮かび上がっている。そしてその花の種類は様々である。
人々はそんな彼らを物語に登場する英雄になぞらえ、敬意を示し「勇者」と呼んだ。
そして現代。
一人の少女がズンズンとギルドに向かい歩いていく。少女はほぼ毎日のようにギルドに通っている。
「おー!また来たな!"落ちこぼれ勇者様"!!」
「んな無駄なことやめてさ!俺らに酒でも注いでくれよ!」
少女を野次る声が聞こえる。しかし少女はそんなの慣れっこなのだ。少女はギルドに入り、真っ直ぐギルドの受付嬢である自身の友人の所まで向かった。
「あら?もしかしてまたあれ借りたいの"エーデル"?」
「うん…お願いします!」
受付嬢はカウンターの引き出しから、バングルのような物を取り出して少女に差し出す。少女はそれを腕につけて。静かに祈る。
その間も彼女を野次る声があった。「落ちこぼれ勇者」と
「美しいお嬢さん?良かったら私とお茶でもいかがかな?」
美しく顔の整った青年が街を歩く女性をナンパしていた。
怪訝な顔をしていた女性は青年の顔を見た時、その美しさに頬を染めて誘いに応じた。
青年は怪しく笑った…
青年は女性の首に顔を埋める。しかし女性はなにやらボーッとしていて何も考えられてない様子だ。
そして青年が顔を離すと首には何かを刺したような跡が残った。女性は意識を取り戻し、不思議そうな顔でふらふら歩いていった。
青年はそんな彼女を無表情で見つめていた。
彼らは知らない。"落ちこぼれ勇者"の少女が一人の青年と出会い道を切り開く事を。
無表情で冷たい顔をしている青年が一人の少女と出会い、様々な思いを紡いでいくことを
彼らは知らない。これから始まる長い旅路を
ここから先本編ですが読んで頂けたら幸いです