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断罪終了後に悪役令嬢だったと気付きました!既に詰んだ後ですが、これ以上どうしろと……!?  作者: 一番星キラリ@9/2やられる前に発売:商業ノベル&漫画化進行中
【本編】

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96/311

96:抱きつきたい衝動

「あー、すまないな、魔術師さま。魔術師さまが乗ってきた馬、どうやら刺客が潜んでいた建物に、置いてきてしまったようだ」


マルクスが悪びれもせずそう言うと、レオナルドは絶句していた。


「あそこはこの旅籠から相応に遠い。別途迎えに行かせるから、今日は馬車に乗って欲しい」


レオナルドがマルクスのこの言葉に何かを言おうとしたその瞬間。


「マルクスがうっかりしてしまったようで、申し訳ないです、魔術師様。必ずあなたの名馬は、取り戻します。このミゲルが剣の騎士の名にかけ、誓います」


するとそこにアルベルトも現れ……。


「魔術師レオナルド、三騎士の失態はわたしの責任。王太子の名にかけ、あなたの馬を必ず送り届けます。今日のところは馬車でお願いします」


そう言われたレオナルドは「……わかりました」と返事をするしかない。


こうしてレオナルドと私は……王都まで一つ馬車の中、向き合うことになった。


今日のレオナルドは、ローブは昨晩と同じアイスブルーだったが、中に着ている軍服は、三騎士と同じロイヤルブルーのものだ。ロイヤルブルーも、レオナルドのアイスブルーの髪と瞳によくあっている。


向き合う形で座ることになったが、馬車にはスノーもいた。

だからスノーの対面にレオナルドが座る形になり、なんとか正面は避けることができた。


いまだ、この美しすぎるレオナルドを、正面から迎え撃つ勇気はない。


斜めという席に安心し、その姿を眺めていたら。

不意にレオナルドがこちらを見た。

その瞬間、心臓は飛び上がり、慌てて視線を逸らす。


ドクドクという心音を聞きながら、伺うように視線をレオナルドに向けると、まだこちらを見ている。緊張で手に汗をかいてしまう。


何か、何か話さないと。


その瞬間、名案を思い付く。


「あ、あの、魔術師さま!」


なんとかその瞳を見ると。

やはりその紺碧の目に、力が抜けそうになる。

クオリティの高い美しさ。


「パトリシア、私の呼び方、変える気はないですか?」


レオナルドは、突然そんなことを言い出した。

唐突だったし、まったく想定していないことを聞かれた結果。肩の力を抜いて、レオナルドの顔を見ることが出来た。


「え、あ、はい。……なんとお呼びすれば……」


考え込んだその瞬間。

馬車が少し前後に揺れ、ゆっくりと走り出した。


「ちなみにパトリシア、君はどちらの姿が話しやすいですか?」


「え……」


「君も既に知っていると思いますが、私の祖先は聖獣ブラックドラゴン。私の魔力の強さはそのブラックドラゴンに由来しています。今の私の姿は人間由来の姿。使う魔法も人間としての魔力です。でもアズレークの姿になると、ブラックドラゴン由来のより強い魔力を使えるようになります。パトリシア、君はおそらく、アズレークの姿を、魔法で変身したものと思っているかもしれません。しかし、それは違います。アズレークもまた、私です。変身したわけではありません」


思いがけない言葉に、驚きよりも嬉しさが勝った。

アズレークは、変身した姿ではなかったのか!


「その顔を見ると……。どうやらパトリシアは、アズレークの姿の方が、話しやすいようですね」


その言葉を聞き、「そうですね」と頷き、瞬きしたその瞬間。

向かいの席には、アズレークが座っている。

漆黒の闇を思わせる黒髪に黒曜石を思わせる瞳。

全身黒ずくめの衣装。

その姿を見た瞬間。

私はその胸に、抱きつきたい衝動に駆られていた。

お読みいただき、ありがとうございます!

次回は明日8時に「君は分かるだろうか?」を公開します♪

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