78:敵を騙すにはまず味方から
さらにゴースト退治を口実に、私が聖女となり、アルベルトが滞在するプラサナス城に忍び込むというこの計画。ゴーストが出るというのは真実だった。何せ3年前から出ているのだから。
プラサナスの地にレオナルドが幼い頃に住んでいたというのも事実で、偶然、ゴースト騒動の噂を聞き、レオナルドは計画に組み込めないかと考えた。そしてアルベルトが視察のためにプラサナスの地を訪れ、城に滞在する。これはもちろん、計画を遂行するために組まれたものであるが、アルベルトはきちんと視察を行っていた。だから計画のために組まれた視察ではあったが、政務はきちんと行っていたわけだ。
さらにミネルバの食堂でのアルベルト達との出会い。
これはレオナルドにより仕組まれたもの。
あの時、レオナルドは私達のすぐ近くにいた。
そしてスノーの嗅覚の良さを利用し、あの食堂へと導いた。
食堂にいたゴースト、あれはレオナルドの魔法で作りだしたフェイクだった。
どうしてここまで手の込んだやり方をしたのか。
それには理由があった。
三騎士は間違いなく信頼できた。
だが、それ以外の騎士の中には、ドルレアン家の息がかかっている者もいる。彼らに気づかれないようにしなければならい。だからこそ、あくまで聖女として、ゴースト退治を目的にプラサナス城にやってきたと、信じ込ませる必要があった。
何より、敵を騙すにはまず味方からという。
今回の計画は、三騎士にさえ明かしていない。
アルベルト自身も、詳細を教えられていない。
だからこそリアリティがあった。
ドルレアン家の息がかかっている騎士にも、何一つ計画がバレることはなかった。そして私は見事、計画を遂行したというわけだ。
さらに。
プラサナス城に同行していたドルレアン家の息がかかっている騎士は、既に捕らえられている。王都でも、ドルレアン家の一族はすべて捕えられ、裁判の準備がすすめられているという。もちろん、この逮捕をもってして、アルベルトとカロリーナの婚約も破棄された。同時に、ベラスケス家にかけられた横領が濡れ衣だったと明らかになり、爵位剥奪は取り消されている。私の家族の居場所の捜索も、始められたと教えてくれた。
ベラスケス公爵令嬢であるパトリシア――すなわち私は、いちはやく発見された。しかも王太子の元婚約者カロリーナがかけた恐ろしい『呪い』を解いたと、王都には伝えられている。
アルベルトが知る、今回の経緯と計画遂行後の状況を聞いた私は……。
もう脱力するしかない。
私をまんまと騙したレオナルドに……アズレークには、怒りより驚きだ。最強魔術師改め、稀代の詐欺師なのでは!? もうそう思って、この事態を受け入れるしかない。
プラサナス城の滞在は2週間で予定が組まれていた。
でも最初の1週間は視察だが、残りの1週間は観光がメイン。
よってその予定は繰り上げられ、でもせっかくなので舞踏会には参加し、その二日後にプラサナス城を出発することが決まった。もちろん、私はアルベルト達と一緒に王都へ戻ることになっている。スノーも一緒に。
そして現在の目下の問題は……アルベルトの私への気持ちにどう答えるか、だった。
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