76:私は何をしたのか?
絶叫する私に、アルベルトが語ったこと。
それはあまりにも、衝撃的だった。
廃太子計画と信じ、私がとった行動。
それはアルベルトにかけられた『呪い』を解く行動だった。
『呪い』を解くためには「アルベルトが愛する人、もしくは、アルベルトを愛する人が、アルベルトを殺そうとする」ことが必要だった。
アルベルトは推しメンであるが、愛しているかと言われると……。
『戦う公爵令嬢』の一プレイヤーとして、アルベルトは確かに気に入っている。でも廃太子計画を実行している時、愛していたのかと問われると、イエスとは言えない。
だが。
アルベルトはパトリシアを愛していた。そしてわたしは短剣で、アルベルトの心臓を穿とうとしていた。実際に心臓は穿っていないが。
ではあの時、短剣に集められた魔力は、何を穿ったのか。
あの時、確かに鋼鉄のような何かに短剣は突き当り、それを打ち砕いた。私はてっきり、アルベルトの魔力の核を破壊したと思っていた。だが、それは魔力の核などではない。
打ち砕いたのは……カロリーナの『呪い』。
取引に応じ、廃太子計画のためにとった行動。
それは奇しくも『呪い』を解き、打ち砕くことになった。
つまり「アルベルトが愛する人が、アルベルトを殺そうとする」が成立し、同時に『呪い』は解けはずだが、ダメ押しの如く、物理的にも『呪い』は打ち砕かれた。
まさに魔術師レオナルドが思い描いた計画通り、すべてが進んだ。
そう、私に短剣でアルベルトの心臓を穿つように仕向けたのは、魔術師レオナルド。つまり、私がアズレークと呼んでいたその人は……アズレークではない。
その正体は……魔術師レオナルドだ。
『戦う公爵令嬢』をプレイしていた。
だから当然、レオナルドの姿も知っている。
でもアズレークと名乗り、私の前に現れた人物は、レオナルドとはまったくの別人。
当然であるが、魔法を使い、変身していたのだろう。
だから私はアズレークの正体に、まったく気づいていなかった。
レオナルドはアルベルトにかけられた『呪い』がどんなものであるか分かると、行方不明となっている私を探すことにした。
私であれば……悪役令嬢パトリシアであれば、『呪い』を解くのにかっこうな人材だ。アルベルトに好意を寄せ、その想いは実らず、選ばれたのはカロリーナ。恋に破れた上に、爵位剥奪され、一家離散。アルベルトを愛している。でも裏切られた。殺したいほど憎んでいる。
だが、ベラスケス家は既に一家離散しており、私の行方を追うことは困難を極めた。
修道院にはいろいろな事情で身を寄せている人が多い。その身の上を詳しく語らなくても、また素性を明かさなくても、それを咎められることもない。だから一度修道院に潜り込めば、うまく身を隠すことも可能だった。
それでもレオナルドは、私に辿り着いた。
爵位剥奪された元貴族の令嬢が行きつく先として、想定される場所は限られる。そういった場所を丹念に探し歩いた。そしてパルマ修道院に、辿り着いた。そこで私を見つけた。
その後はもう、完全にレオナルドの話術に、騙された。
アルベルトの毒殺未遂事件。
これは実際に起きていた。犯人はドルレアン家の手の者、ということは分かっている。だがドルレアン公爵は否定していたが。つまり、国王陛下は私が犯人と考えていなければ、刺客も放っていない。王命を受けて私を殺害しに来た……そうアズレーク、いやレオナルドは語ったが、それも作り話だった。
お読みいただき、ありがとうございます!
次回は明日8時に「嘘と真実」を公開します♪



























































