74:闇落ちルート!?
「ど、どうして、なぜカロリーナが……!? 婚約者ですよね……?」
「そうだよ。でもさっき話した通り、わたしとカロリーナは婚約しているが、お互いの心は離れていた。わたしはまったくカロリーナに気持ちがなかったが、彼女の方は違う。好きという気持ちがあった分、想いが通じないと分かると、可愛さ余って憎さが百倍になってしまった。それに父親であるドルレアン公爵の、入れ知恵もあったと思う。
いずれわたしが王位を継いだ時、体に不調があれば、政務もままならなくなる。そこで妃という立場になるカロリーナとドルレアン公爵は、政務に口出しをするつもりだったのだろう。もはや愛のない結婚をするなら、利用できるものは利用する、そんな感じなのだろうね」
まるで他人事のように話しているが、それはとても辛い状況ではないか。
国王になるべくして、アルベルトは努力してきたはずだ。
それがそんな理不尽な理由で、傀儡のようにされてしまうなんて……。
というか、カロリーナ、乙女ゲーのヒロインなのに、どうしてしまったというのか!?
こんなカロリーナの闇落ちルートなんて、あった!?
でも斬新さを売りにしているゲームだった。
攻略失敗からの闇落ちルートも、新たに設けたのかもしれない。
「カロリーナがわたしにかけた『呪い』は、実に厄介だった。というのも『呪い』というのは、解く際、かけた時と同じ条件が必要だと言われている。カロリーナは私を憎みつつも、愛しているという矛盾をはらんだ気持ちで、この『呪い』をかけた。だからこの『呪い』は、わたしが愛する人、もしくは、わたしを愛する人が、わたしを殺そうとすることで、解くことができる――そう、王宮付きの魔術師レオナルドは、分析した」
魔術師レオナルド。
『戦う公爵令嬢』に登場するこの国の最強魔術師。
魔力も強く、使える魔法も幅広く、そして当然だが、超がつくイケメン。
王太子アルベルトと魔術師レオナルドが、『戦う公爵令嬢』では人気を二分していると言っても過言ではない。
それにしてもアルベルトは、なんとも悩ましい『呪い』をかけられたものだ。
「……随分と厄介な『呪い』ですね」
というか……。
カロリーナの屈折度合いが、心配になるレベルだ。
私の言葉に苦笑いのアルベルトは、スープを一口飲む。
「しかも『呪い』を解くために殺そうとする、ではダメだ。あくまで、愛している、でも殺す、という状況を作り出せなければならない。カロリーナの愛しているけど、あなたを呪う、を再現するためにね」
鴨肉のローストを飲み込むと、アルベルトが再び話し始める。
「不幸中の幸いだったのは、本当に殺さなくてもいい、ということだけ。カロリーナも『呪い』をかけはしたが、殺すことまではしていない。だから、愛しながらも殺そうとしてくれさえすれば、この『呪い』は解けた」
不幸中の幸い……。そう言っていいのかどうか。
そもそも事情を知らせず、アルベルトを愛しているという女性に、アルベルトを殺してくれと言っても、そう簡単に従わないだろう。しかも本当に殺すつもりはない、直前で止める、なんてことも明かせないわけだから。
愛している。でも殺したいと思う程憎い。
そして実際に殺そうという行動まで起こせる。
そんな矛盾をはらんだ女性なんて、いるのだろうか……?
「条件にあう女性が見つからないと、思ったかい?」
実際にそう思ったので頷くと……。
「条件にあう女性はいた。ただ、居場所を見つけ出すのに、時間がかかった。でも魔術師レオナルドは見事に見つけ出し、彼女の協力をとりつけてくれた。本人は未だ、自分が何をしたのか理解していないようだけどね」
不調は解消されたと言っていた。
それはつまり『呪い』を解くことに成功した、ということだ。
その女性は気づいていないのだろうが、結果オーライに思えた。
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次回は本日12時に「え、え、ちょっと待ってください」を公開します。
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