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断罪終了後に悪役令嬢だったと気付きました!既に詰んだ後ですが、これ以上どうしろと……!?  作者: 一番星キラリ@9/2やられる前に発売:商業ノベル&漫画化進行中
【本編】

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72/311

72:一輪の赤い薔薇

アルベルトの魔力の核を、破壊したことを。

彼から魔力を、奪ったことを。

そのことを思い出す。

私が破壊した。

私が奪った。

アルベルトは……もう国王になることは、叶わない。


急に私の顔が青ざめたことに気づいたアルベルトが、心配そうに私の顔をのぞきこんだ。


「パトリシア、気分が悪いのか?」


「……王太子さま、私は……」


まだアルベルトの話は、途中だった。

でもベラスケス公爵家の一族が断頭台送りにならないよう、爵位剥奪を行ったのであり、そしてアルベルト自身、本当はカロリーナとではなく、私と婚約したいと思ってくれていた。それなのに私は……。


取引をするしかなかった。

例えそうだったとしても……。

取り返しのつかないことをしたと、体が震える。


「急に、どうしたの、パトリシア?」


アルベルトが私を抱きしめようとしていることに気づき、なんとか声を絞り出す。彼の優しさに甘える権利は、私にはない。


「王太子さまの魔力の核を、私は破壊しました。もう王太子さまは、魔法が使えません」


一瞬、動きを止めたアルベルトだったが……。


「君への想いを、すべて言葉にするのは難しい。ならばこの想いを、一輪の花に託そう」


突然美しい愛の言葉を並べたアルベルトの手には、一輪の赤い薔薇が現れた。


「パトリシア、大丈夫。わたしはちゃんと魔法を使えるよ」


アルベルトが差し出す薔薇を受け取ると、かぐわしい香りが鼻孔をくすぐる。確かにアルベルトは、魔法を使えた。ということは、廃太子計画は失敗したの……? あの時、何かを破壊したと思ったが、違ったの……? 


失敗すれば、待つのは死。


呆然としたのは一瞬で、自分と運命共同体であったはずの、スノーのことを思い出す。

スノー、スノーはどうしているのだろう?


「……すみません、王太子さま。その、スノーの様子が気になるのですが……」


ベッドから体を起こすと、アルベルトは不思議そうに尋ねる。


「スノーは、部屋にいるのでは?」


「自室ではなく、その……王太子さまの部屋に」


するとアルベルトがゆっくり体を起こした。


「ということは、ルイスが部屋にミニブタがいると言っていたが、もしやそれが」


「スノーです! 真っ白なミニブタが、魔法で変身して人間の姿になっていました。今、どこにいますか!?」


「なるほど。家令ゴヨに預けたが、どうなったのか、確認させよう」


そう言ったアルベルトが、大声で部下の名を呼ぼうとしていると気付き、慌ててその腕を掴み、「お待ちください」と懇願する。


「その、私が……ベラスケス家の人間が、王太子の寝室にいるなんて、大スキャンダルです」


「それは問題ない」


「え……」


「その説明の前に、スノーの身柄を確保しよう。そこで待っていて、パトリシア」


そう言って立ち上がったアルベルトは、寝室から出ていった。


心臓は未だバクバクしている。

スノーはミニブタの姿に戻ってしまったようだが、生きている。失敗すれば死ぬと言われていたが、一応私もスノーも、今のところ生きている。


完全に安心することはできないが、ひとまず何度か深呼吸し、焦る気持ちを落ち着かせる。


置時計を見て時間を確認すると、まだ7時前だ。なんとなくで自分の服を確認するが、紺色のワンピース姿のままだ。頭につけていたベールは、よく見るとサイドテーブルに置かれている。先ほどアルベルトから受け取った薔薇を、ベールのそばにおく。そして今一度、状況確認に努める。


アルベルトは、あの閃光と衝撃にも、気絶しなかった?

もしくは気絶した後、一度目覚めている?

スノーのことも知っているとなると……。

3時から警備についたルイスと、会話をしたことになる。

つまりその時点で、私のことも誰であるか気づいている。

気づいていたが、そのまま自身の寝室に、ベッドで寝かせていてくれたことになる。


どうして……。

あ、それは……。

アルベルト本人がこう言っていた。

――「わたしとしては君と婚約したいと思っていたが……」

それはつまり、アルベルトは私のことが好き、ということだ。だから突然現れた私に驚きはしたが、捕えることなく、そのまま休ませてくれた……。


!!


ドアがノックされ、慌ててベッドからおり、マットレスの影に隠れる。


「パトリシア」


アルベルトだった。

ゆっくり立ち上がると、アルベルトの胸にはスノーがいた。

慌ててスノーの方へ駆け寄り、アルベルトから受け取る。


「スノー、どうして、あなた、ミニブタに戻ってしまったの!?」


この城での唯一の仲間だったスノーが、ミニブタの姿になってしまい、悲しく、また心細くなっていた。


「恐らくすべて、彼が仕組んだ結果なのだろうね」


「え、それは……」


スノーを魔法で変身させたのは、アズレークだ。

まさか。

アルベルトは、アズレークのことを知っている……?


「パトリシア、着替えを用意してある。入浴はそちらの部屋でできる。朝食をとりながら、話をしよう」


「どういうことですか!?」


「君に話していないことがある。わたしの不調の原因とそれの対処法。それは分かっていた」


「!」


「そしてこの件に、パトリシア、君は大きく関わっている」

お読みいただき、ありがとうございます!

次回は明日8時に「優しい言葉に瞬殺される」を公開します♪

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