56:どうしてこんなに気になるのだろう
青い塔のモンスターゴーストを退治した日の夕食の席では。
ルイスが私の思いついた奇策について話し、皆、驚き、そしてスズメバチ型のモンスターゴーストがいたのかと、震撼していた。
青の塔の周囲は一時、くるぶしがつかるぐらいの水たまりができたが、水はけがよい土地だったようだ。今は水も綺麗になくなり、明日にも塔に入り、清掃をして窓ガラスの修復も行うという。今回もまた窓ガラスを割ってしまったわけだが……。
「窓ガラスは自分の矢で砕いたのだから、修復代は自分が持ちましょう」とルイスが声を挙げるが、領主ヘラルドが首を横に振った。「ゴースト退治の必要経費です。ルイスさまにお支払いいただく必要はありません」そう言ってこの件は収まった。
何かと物が壊れることになり、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。残る小ホールと遊戯室は、極力物を壊さずに終わりたいと願った。
翌日。
アルベルトたちは前日に続き視察に向かい、スノーと私は街へ出ることにした。
小ホールも遊戯室も、日没後にしか、ゴーストは姿を現さない。だから日中は、時間ができたわけだが。
昨日と同じように、視察に同行しないかと声をかけられたが。街でゴースト退治に必要なものを手に入れたいからと言って、辞退した。
その結果、こうしてスノーと二人、城を出て街へ来ることになった。
今日は二人ともミルキーブルーのワンピースに白のベール、サファイアブルーのフード付きロングケープ姿だ。スノーと手をつないで歩いていると、本当に妹ができたみたいで、嬉しくなる。前世では一人っ子だったので、妹がいたらという気持ちあった。だからついスノーを見ると、頬がほころぶ。
特に買いたいものはなかったので、市場を散策し、カフェで休憩をして、のんびり過ごすことができた。
昼食は、ミネルバの食堂に向かった。数日ぶりで顔を出すと、ミネルバは喜んでくれて、沢山サービスをしてくれた。特別に用意してくれたパスタに、トリュフをたっぷりふりかけてくれて、スノーは大喜びだ。
食後の紅茶を飲みながら、久々にアズレークのことを、ゆっくり考えていた。
プラサナス城についてからは、思いのほか忙しく、アズレークについて考える時間をとれなかった。それでも何かの折に、アズレークを思い出していた。ゴーストと対峙する度に、練習とは違うと憤慨しながら、彼の顔を思い浮かべたり。
城内で黒い服の男性を見かけると、アズレークと声をかけそうになったり。
もう会うことはない相手なのに。
どうしてこんなに気になるのだろう。
「オリビアさま、どうかしましたか?」
スノーが心配そうな顔で、私の顔をのぞきこむ。
「何でもないわ。……スノーも、もう満腹よね。のんびり歩きながら、お城に戻りましょうか?」
「はーい」
元気に微笑んだスノーだったが、ハッとした表情で私の顔を見る。
「アズレークさまの香りがしました」
「えっ……」
スノーは立ち上がり、出口へと歩いて行く。
私は慌ててお会計を済ませ、ミネルバに御礼とまた来ると挨拶し、スノーの後を追う。
「スノー!」
スノーは振り返ることなく、どんどん歩いて行く。
「スノー、待って!」
人混みをかき分け、見失わないよう、必死でその後を追う。
市場に入り、くねくねした道を進むうちに、路地裏に入り……。
見失ったかと思ったその時。
お読みいただき、ありがとうございます!
次回は明日8時に「咎めるような、茶化すような声」を公開します♪
【お知らせ】
『千年片想い~ピュアな魔王の純愛記~』
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昨晩しれっと完結しました。
実は上記作品は。
『悪役令嬢ポジションで転生してしまったようです』
https://ncode.syosetu.com/n6337ia/
こちらの作品で、主人公が転生する乙女ゲームの
原作小説にあたります。
千年片想いのスピンオフが悪役令嬢ポジションなのです!
なろうデビューした初期投稿作品なので
最初のエピソードは稚拙かもしれませんが
もし気になった方がいたら
遊びに来ていただけると幸いです!
R15が苦手ではない方は
【Episode3】魔界大騒動
こちらのラスト4話は爆笑で楽しめると思います。



























































