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断罪終了後に悪役令嬢だったと気付きました!既に詰んだ後ですが、これ以上どうしろと……!?  作者: 一番星キラリ@9/2やられる前に発売:商業ノベル&漫画化進行中
【本編】

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38/311

38:心から愛されることを願った相手

心臓が、止まるかと思った。


淡い光に照らされただけでも分かる、サラサラのシルバーブロンド。前髪からのぞく眉毛も、前髪の下に見える睫毛も、髪と同じ色をしている。透き通るような白い肌に高い鼻筋。形のいい唇は、静かに閉じられている。


肌の白さに負けない、純白の寝間着姿でベッドに横たわるのは……。


ガレシア王国王太子アルベルト・ロペス・ヴィレットだ。


悪役令嬢パトリシアが、かつて心から愛されることを願った相手。そして『戦う公爵令嬢』という乙女ゲーをプレイしていた私にとって、初めて目の前で見る攻略対象だった。


三次元になったその姿がもたらす存在感。

圧倒的な美貌に、息をすることを忘れる。

思わずガン見し、動けなくなっていると……。


閉じられていた瞼が、ゆっくり開く。

そこには、大海を思わせる碧い瞳が、輝いている。

吸い込まれるように、その瞳を見ていると。

突然、腕を掴まれ、そのままベッドに押し倒された。


「!?」


「まさか聖女さまから、わたしに夜這いをかけてくださるなんて。光栄ですよ」


!!!!!!!!!!!!!

こ、この声は……!

アルベルトは、甘めの声が特徴の声優さんが担当していたが、そのまんまの声だ。


ヤバい……。痺れる……。鼻血が出そう。


この乙女ゲーの世界にきて初めて、前世の素の部分が出たその瞬間。


「オリビア、君が王太子を好きだということは、よく分かっている。だがこの状況は、君が失敗した状況だと、理解しているのか?」


テノールの凛とした声に、我に返る。

見上げると、そこに見えるのは、漆黒の黒髪と黒曜石を思わせる瞳。


アズレーク……。


さっきの王太子は、もちろん本物ではない。

魔法で変身したアズレーク……。


「す、すみません、その、私……」


「これが練習でよかった。失敗したら君は……」


失敗したら……どうなるのだろう?

アズレークは、もし失敗しても、私を救い出すことはできないと言っていた。そしてさっきは、夜這いをかけた……と言わなかったか。


アルベルトの甘い声を思い出し、かあっと顔と耳が火照る。火照りながら、聖女が婚約者のいる王太子に夜這いなどかけたら……と想像する。


……背徳者として、火あぶりになりそうだ。

しかも王太子自らに捕えられたら、言い逃れのしようがない。


というか、カロリーナが知れば、烈火の勢いで怒りそうだ。それどころかもし、聖女のフリをした偽物だということまでバレれば……。


地下牢で拷問され、獄死の可能性だってある。


アルベルトの姿を見て、高揚していた気分が、一気に落ち込む。


「本当に、申し訳ございません……」


分かりやすくしょぼんとすると。

アズレークの手が、頬に触れた。

優しく温かい手。

私を見下ろす瞳には、焦れるような激しさがあり、息を飲む。


これでは失敗すると、気持ちが急いているのだろうか。


「すみません。本当に。もう一度、やり直しをさせてください」


私の言葉に、アズレークは静かに目を閉じ、息をはく。


「……分かった。もう一度やろう」


そこでアズレークが体を動かし……。


自分がベッドに押し倒された状態で、会話をしていたことに、今更気づく。


その瞬間、全身が熱くなる。


「寝室に入ってくるところから、やり直そう」


「はい……」


慌ててベッドから降り、寝室を出る。

スノーや三人の従者は、既に部屋に戻っていた。

明かりが灯る書斎で、しばし目をパチパチさせる。

これから寝室に入れば、ベッドにはアルベルトがいる。

でも、見惚れてはいけない。

いつも通りの手順で、動かなければならない。


失敗すれば、火あぶり・拷問・獄死……。


そう頭に念じ、再び寝室の中へ、入っていった。

お読みいただき、ありがとうございます!

次回は本日12時に「シャツを、思わず掴んでいた」を公開します。

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