１９０：その肌が薔薇のように
丁度ティータイムの時間に合わせ、村長の娘キアラとニコラの結婚式が、宮殿のような精霊王の屋敷で、再開されることになった。
村人が次々と精霊王の屋敷にやってきた。
手には思い思いの料理を持っている。エーテリオンも森の恵みを村人たちに振る舞ってくれた。沢山の動物や虫もお祝いに駆け付け、結婚の祝いは夜遅くまで続く。
この時、屋敷を警戒する力をエーテリオンが緩めていてくれたので、宴もたけなわとなると、皆、転移の魔法で村の家へと帰っていく。
レオナルドと私も、あの一軒家へと帰って来た。
「おかえりなさいませ、レオナルド様、パトリシア様」
迎えてくれたメイドに、エーテリオンが持たせてくれたお土産を渡すと、二人は大喜びだ。精霊王がくれたのは、シアの木から作ったクリーム、たっぷりの蜂蜜、秋薔薇の花束。
特にこの季節、香りが強くなる秋薔薇は、ただそこにあるだけで、その美しい見た目と芳醇な香りで、楽しませてくれる。
「沢山ございますので、寝室にも飾っておきますね。入浴の用意はできていますので、どうぞ」
こうしてアズレークと順番に、入浴を済ませることにした。
淡いローズピンクのネグリジェに着替え、ココア色のガウンを羽織り、ソファに腰を下ろすと。メイドはブランデーティーを出してくれる。アールグレイとブランデーの芳香が見事に混ざり合い、独特の豊かな香りが鼻孔を楽しませてくれる。何よりコニャックのほんのりした甘味が、アールグレイに合っていた。
「ブランデーティーか。いい香りがする」
いつもの黒いローブを着たアズレークが、バスルームから出てきた。
お風呂上りのアズレークは、そのワイルドさに色気が加わり、本当に艶やかになる。
髪もしっとりし、温まった素肌に触れると、いつだって私は普段以上に興奮してしまう。レオナルドの時は、お風呂あがりでも、その肌はさらっとしている。アズレークの時の潤った素肌は……本当にたまらない。
ゆっくりソファに座る私のところへ来たアズレークは、腰をおろし、ブランデーティーがはいったティーカップとソーサーを手に取る。
紅茶を飲むレオナルドは限りなく優美。アズレークは紅茶を飲む時でさえ、威風堂々として頼もしく感じる。何より、カップが口元からはなれる時。潤った唇を見ると、なんともゾクゾクとしてしまう。その唇が優しく私の肌に触れる時を思うと……頬が赤くなり、抑えているはずの逆鱗が、反応しているように感じてしまう。
「パトリシア、なんだか頬が赤いな。お酒は弱いわけではないのに。パトリシアはお酒を飲むと、その肌が薔薇のように染まり、実に魅惑的だ」
「！ これはブランデーティーで、お酒ではないですわ」
「ではどうしてこんなに、頬を赤くしている？」
アズレークの黒曜石を思わせる黒い瞳にじっと見つめられると。体の疼きが止まらなくなる。それはもう、私は彼の番なのだから、仕方ない。
両腕を彼の首に伸ばし、その体に抱きついてしまう。
「ニルスの村に来てからパトリシアは積極的だな」
「そ、それは……」
「王都に戻っても。毎晩、こうしていいから」
滑りのいいシルクのガウンは、リボンがほどけるとあっという間に肩から滑り落ち、赤い絨毯の上に落ちていく。
ネグリジェの裾から、まだ入浴後の熱が残るアズレークの手が差し込まれ、素肌に触れられると……。全身が震え、甘い吐息が漏れてしまう。
「パトリシア、愛している」
そう言いながらアズレークの唇が、私の唇に重なった。
滑り落ちた彼の黒いローブが、私の着ていたシルクのガウンに落ちる。
晩秋の夜は、愛し合う者達の密やかな息遣いと共に、更けてゆく――。
お読みいただき、ありがとうございます！
喪中につき年末年始の挨拶は控えさせていただきますが
2024年も頑張ってまいりますので、引き続きよろしくお願いいたします！
ニルスの村を舞台にした物語はこれにて終幕です。
さらなる続編は……どうしましょうかね？
続編公開の際はこちらの後書きや他作品の後書き
活動報告でお知らせいたしますね！
年末年始に一人どったんばったんして
いくつかの新作を公開し、完結しています。
よろしければ以下、ご案内となりますので
ご確認いただけると幸いです。
【新作毎日更新中】前向きで明るい気持ちに！
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～おーほっほっ！は卒業したい！～』
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乙女ゲームの悪役令嬢に、転生していると気が付いた私。
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ならばもういい。
とことん悪役令嬢として、生きることにします！
゜・。＊☆＊。・゜・。＊☆＊。・゜・。＊☆＊。・゜・。＊☆
【昨日、遂に完結】一気読みできます！
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一番星キラリのオリジナル展開てんこ盛りで
“騙される”作品です。
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始まりは婚約破棄ではなく、悪役令嬢の切なる叫び。
「ゴーマン殿下の大馬鹿野郎！ 婚約者がいるのに、別の女に尻尾を振る、最低浮気男！ それにトンビ女のマーガレット！ あんたヒロインだからって人の婚約者に手を出しているんじゃないよ！ 可愛かったらなんでも許されるなんて思うな！」
浮気した婚約者とチートなヒロインに追い詰められた悪役令嬢は、もう手段は選べないと、破廉恥な行為で婚約破棄と断罪回避を試みるが――。
゜・。＊☆＊。・゜・。＊☆＊。・゜・。＊☆＊。・゜・。＊☆
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よろしければご覧ください☆彡
それでは引き続き良い三連休をお過ごしくださいませ！
