178:どうして分かったのですか?
自室へと戻った私は。
サンルームのように、屋敷にも被害が出るかもしれない。
もしもの時、屋敷の外へ逃げる必要があるかもしれない。
逃げる気はなかった。
この天候であり、寒さ、そして逃げたところで船がなければ、ガレシア王国に帰れないことは分かっている。
ただ、いざという時に備えたい。
よってもしもの時に外へ出られる服を着たいと話すと。
召使いの三人の女性はしばし話しあった。最終的に、ロレンソと外出した時に着たドレスに近いものを、用意してくれた。
そのドレスは白銀色で、スカートの裾を飾る毛が真っ白。フード付きのケープも白銀色で、白い毛が飾られている。白いロングブーツもはくことができた。
これでいつでも外に出られる。
「お嬢様、ホットチョコレートを用意しました」
召使いが用意してくれたホットチョコレートを見て「ああ、やっぱり出てきたわ」と思ってしまう。
うん……? なんでそう思うのかしら?
何か違和感を覚える。
というか……。ノエと葵と出会ったのはいつ?
何か時系列がおかしい気がする。
出されたホットチョコレートを飲みながら、自分が何に違和感を覚えているのか、それを考えてみた。でも何がどうおかしいのか考えても、よく分からない。
暴風も吹き荒れていることから、分厚いカーテンは閉ざされている。
ただ、外は相変わらず荒れ狂った天候だと思う。
雷鳴が轟き、窓に当たる激しい雨の音も聞こえていた。
今、外ではアズレークとロレンソの激しい戦闘が続いているはずだ。
先祖返りして始祖のブラックドラゴンに姿を変えたアズレークと、同じドラゴンでも次元が異なるホワイトドラゴンに姿を変えたロレンソとの闘い。
でも勝つのはアズレークだ。
戦闘を終わるのを待ち、彼を迎えに行く――。
「みんな、伏せて!」
私の叫びに三人の女性の召使いは、不思議そうな顔になる。でも率先して私が床に伏せると、三人とも同じように伏せたくれた。
それから数秒後。
ドンッというとんでもない音と共に、振動が起きる。
こんなに激しい揺れだったのね!
立っていられなくなり、床を転がったのも当然ね。
揺れはしばらく続き、でも収まってくれた。
雷鳴が止み、暴風が吹きすさぶ音も止まり、激しく窓を打ちつける雨音も止んだ。
すべてが決した。
「行くわよ、みんな!」
「お嬢様、どちらへ!?」
「ロレンソ先生とアズレークの戦いは、終わったわ。ロレンソ先生の怪我は、アズレークが癒してある。でも意識は失っているわ。それは魔力切れだから。あなた達はすぐにロレンソ先生を、部屋で休ませて」
三人の召使いの女性は、半信半疑という顔をしているので、分厚いカーテンを開けて見せる。
急に差し込んだ光に目が眩み、全員が瞼を閉じたと思う。しばらくは目を開けることができない。
再び目を開けると……。
部屋の窓の半分のカーテンが開いており、そこからは青空が見え、部屋には陽射しが差し込んでいる。
「どうしてお嬢様は、何が起きたのか分かったのですか?」
「それは……私も分からない。でも分かるの。なんとなく、これから起こることが」
三人の召使いは顔を見合わせ、そして私を見る。
「私はアズレークの元に行く。でも逃げはしないわ。アズレークも魔力切れで、体を休ませる必要があるから、この屋敷に戻る。だから決して、剣を使い、向かってこないで。特にそう、あなた」
私に視線を向けられた召使いは「えっ」と小さく声を漏らし、残りの二人の召使いが、困惑気味に彼女を見ている。
「もたもたしている暇はないわ。さあ、外に向かいましょう」
「でもロレンソ第二皇子様は、お嬢様を部屋から出さないようにと仰られました」
「それはそうね。でも、彼は気絶しているのよ。天候は回復したけれど、外は寒いわ。いいのかしら、彼の体が冷えても。それに約束を破るのは私よ。あなた達に非はないわ。ロレンソ先生を助けに行きましょう」
顔を見合わせた三人の召使いだったが「分かりました」と最終的に同意してくれた。
お読みいただき、ありがとうございました!
【次回予告】
11月26日(日)12時半頃
『違う、こうではない。』
アズレークだわ!
そう確信して駆けだした私の後を
三人の召使いが追ってくる。
息が弾み、胸が高鳴り、そして――。
【更新】
11月23日が下記作品の記念日であったことから
新話を2本公開しました!
『悪役令嬢完璧回避プランのはずが
色々設定が違ってきています』
https://ncode.syosetu.com/n6044ia/
果たして何の記念日だったかは
更新された前編の後書きであきらかに!
その記念日のお話は過去にたんまり公開しているので
記憶に残っている方もいるはず!?
【御礼】
11/20-21 日間恋愛異世界転生ランキング2位☆感涙
応援くださった読者様、ありがとうございます!
『浮気三昧の婚約者に残念悪役令嬢は
華麗なざまぁを披露する
~フィクションではありません~』
https://ncode.syosetu.com/n8030im/
さくっと読める全6話です。
もし未読の読者様がいましたらこの機会にお楽しみくださいませ☆彡



























































