136:マンネリとは無縁
休憩をしている時も、スノーはステップの動きを確認し、背筋が綺麗にピンと伸びた状態を維持するにはどうしたらいいのか、など熱心にロレナに尋ねていた。
つまりそれだけ、ダンスの練習に熱中している。
よって本当に、気づいたら、外が茜色の空になっていた。
「スノーちゃん、すごい集中力よ。これなら間違いなく、舞踏会までに素敵なダンスを踊れるようになるわよ。明日からはプロのダンスの先生も来てくださるから。今以上に上達するはずよ」
ロレナの言葉にスノーは「ありがとうございます、お義母さま! 明日からさらに頑張ります!」と笑顔になる。
でも次の瞬間。
窓の方を見たスノーは、これまで以上の笑顔になった。見るとエントランスに向かい、歩いてくるノエの姿が見えた。
昨日と同じようにスノーがダッシュで部屋を出て行き、ロレナがその後を慌てて追いかける。まるでデジャヴを覚えるが、この日常はほっこりしてとても好ましい。平和を感じる。
ノエはアトリエに道具を戻し、スノーとおしゃべりをして、そして家へと帰って行った。
◇
「そうか。よかったね、スノー。素敵なパンプスが手に入るのか。ではそのパンプスにあうドレスは、僕がちゃんと用意するからね」
今日もきちんと帰宅して、皆と夕食を楽しんだレオナルドは、入浴の準備が整うまでの間、スノーとおしゃべりを楽しんでいた。
スノーが入浴できる状態となり、私とレオナルドは自室に戻り、今度は自分達の入浴の準備だ。スノーの部屋を出る時、レオナルドは私に声をかける。
自分の部屋においでと私を誘う時は、レオナルドの姿で夜を過ごす。でも私の部屋に行くという時は、アズレークの姿で朝を迎える。
今晩はどちらかしら?
それを考えるのはいつもドキドキするし、なんというかおかげでマンネリという言葉とは無縁でいられそうな気がする。
何よりあのレオナルドに……。
いくら逆鱗の反応を抑える魔法を解除されていても。レオナルドに……!と思うと、彼を求める気持ちと恥ずかしい気持ちがないまぜになり、もう大変だった。
しかもレオナルドの姿で私とベッドで過ごす時の彼は……。アズレークの時とはまるで別人。もうそれは散々翻弄され、そして今もまだ慣れることはない。慣れることはないが、そんな彼もまた抗いたい魅力があり……。
ただ、おかげで盛大な結婚式を挙げるにあたり、大勢の前でレオナルドに抱き寄せられ、キスをされても大丈夫……だと思う。……多分。
「パトリシア、聞いているかな?」
「あ、ごめんなさい。つい考え事を」
「何を考えていたのかな?」
レオナルドが優美な笑みを浮かべ、私の顎を持ち上げる。ベッドの中のレオナルドのことを思い出していたこともあり、もう心臓がバクバクしてしまう。
ここはマルティネス家の屋敷で、廊下。
そしてまだ寝静まる時間ではなく、皆、寝るための準備をしたり、後片付けをしたりしている。
それなのにレオナルドは……。
私の顎を持ち上げたまま、顔を近づけ、そして――。
「せっかく昼間に魔力を補充しているのに。ここ数日、スノーのダンスの練習で、自身の魔法の練習ができていないよね。入浴が済んだら。魔法を練習する部屋においで」
「!」
てっきり「部屋においで」と言われると思ったら!
スパルタなレオナルドに、魔法の練習をすると言われていた。
ずるい!と思ってしまう。こんなに至近距離で、甘い雰囲気を漂わせて練習をしようと言うなんて。絶対に「いえ、今日は練習をせず、夜を楽しみましょう」なんて言えない。
ということで私は素直に「はい、分かりました」と返事をしている。
その結果。
みっちり2時間。
魔法の練習をすることになった。風の魔法を応用した使い方、さらに今回は光の魔法の使い方も習うことになる。風の魔法同様、見えないもの扱うので、光の魔法はなかなか扱いが難しい。
そんなことを思いながら練習を終えると……。
「パトリシア、よく頑張ったね。明日からはダンスの先生が来るのだろう? これからはちゃんと自習ができるね、パトリシア」
翌日からはきっちり自力で練習するよう、釘を刺されてしまう。……でも、魔法をもっといろいろ使えるようになりたいと彼に話したのは私だ。よってこれは……自業自得。
でも。
「さて。この後、パトリシアは沢山、魔力を失うことになる。だから先に魔力を回復しておこうか」
レオナルドはそう言うと、私の腰を優雅に抱き寄せる。ドキッとなり、胸が高鳴りそうになるが、レオナルドは待ったなしで魔力を私に送りこんだ。
その後は。
魔法で転移したのは私の部屋。
このままアズレークの部屋に行き、レオナルドの姿で……と思ったが。
やはり私は聖獣であるドラゴンを祖先に持つアズレークの番。レオナルドもとても素敵だが、アズレークに求められると、全身全霊で応えてしまう。それをアズレークも分かっているから。
ちゃんと魔法の練習をしたご褒美も兼ねて。
アズレークは優しく私をベッドへとおろす――。
お読みいただき、ありがとうございました!
続きは明日の夜に公開します~
引き続きよろしくお願いいたします!
【お知らせ】
本日より以下の作品が公開開始です!
『断罪回避に成功した悪役令嬢、なぜか2度目の転生へ』
https://ncode.syosetu.com/n3270if/
悪役令嬢に転生してしまい、でも断罪を見事回避し、80歳まで生き、天寿を全うしたシャーロット・スウィーニー。人生最期の瞬間に、一つだけ悔いが残ったが、そのまま魂の炎は消えた。
しかし。
再び転生していた。悪役令嬢シャーロットとして。
既に断罪を回避する方法は分かっているのに。まさかもう一度同じことを繰り返せと? 困惑するシャーロットだったが、早速、ヒロインの攻略対象と次々に遭遇してしまう。しかもこの攻略対象達は、なぜかシャーロットのことを甘やかしまくりなのだが……!?
こうして断罪回避方法を知るシャーロットの2度目の悪役令嬢人生がスタートする――。
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