135:お顔が真っ赤です!
翌日。
レオナルド、スノー、ルカと共に昼食をとり、屋敷へ戻る前に靴屋に寄ることにした。セミオーダーでスノーのパンプスが間に合うか相談すると、通常は3カ月かかるが、サイズの調整と飾りをつけるぐらいであれば、なんとか間に合わせると言ってもらえた。
何より、社交界デビューではくパンプスは白と決まっており、セミオーダーですぐに作れるよう、用意があったことも大きい。つまり仮縫い、木型作成なし。既存品から左右それぞれの足に合うサイズを選び、規定デザインと用意のある革を使い、作り上げてもらうことになる。
ということで採寸、デザインとつける飾りなどを選び、完成次第連絡をもらうことにした。
幸いだったことは、舞踏会シーズンも終盤に近付き、今の時期にオーダーメイドをいれる客が少なかったことも大きい。比較的工房に余裕があるので、数人がかりで作ってもらえることになったのだ。
「スノー、これで素敵なパンプスも手に入るわ。ダンス、頑張りましょうね!」
「はい! ありがとうございます、パトリシアさま。ノエが昨日、エスコートもするけど、『絶対に俺と最初のダンスを踊ろうね』と言ってくれたので、スノー、頑張ります!」
……!
なんて素敵なのかしら。
社交界デビューで、お互いに想い合う相手と初めてのダンスを踊れるなんて……。まだ覚醒前のパトリシアは、アルベルトとのダンスを願ったが、それはカロリーナに奪われていた。
まあ、それはそれよね。
今となってはアズレークと踊れたあのダンスが、私にとってのファーストダンスなのだから。
そう。
覚醒後の私が初めて踊ったダンス、その相手はアズレークだった。
シーラ滞在一日目。
夕食を貸し切りのレストランで楽しみ、その後庭園で二人、音楽もないのに、まるで音楽があるかのように、星空の下ダンスをした。
そしてその後、アズレークと私は初めて結ばれ……。
「パトリシアさま、お顔が真っ赤ですが、大丈夫ですか?」
「! へ、平気よ、スノー。それよりも帰ったら、ダンスの練習、頑張りましょうね。明日からは、お義母さまの知り合いのダンスの先生がいらしてくださるから。今日はお義母さまと私がちゃんとレッスンするわ」
こうして無事、パンプスをセミオーダーし、屋敷へ戻った。
◇
屋敷に戻り、しばらくすると、昨日と同じようにノエがやってきた。
昨日と同じようにアトリエに向かい、公園で絵を描けるよう、準備をしている。その傍でスノーは、パンプスをセミオーダーしたことをノエにきかせていた。
ノエは「そうか。足にあうパンプスが手に入れば、鬼に金棒だよ。きっとダンスも上手に踊れる。もし足が疲れても俺が回復させるから。ロレンソさまに教えてもらったんだ。回復の魔法の使い方」そう言って、スノーの頭を優しく撫でている。
なんだか初々しくて可愛らしい。
「すごい! ノエは魔法が使えて素敵だわ」と瞳を輝かせるスノー。そのスノーを見て自身も笑顔になるノエ。
二人の周囲に幸せオーラが溢れている。
「ノエくん、これ。今日はパトリシアさまがアプリコットジャムでパウンドケーキを作られたのよ。外はサクッといい焼き加減で、中はしっとり甘酸っぱくて美味しいの。おやつにね、どうぞ」
アプリコットジャムを混ぜて作ったパウンドケーキは、王宮に届ける昼食のおやつとして用意したもの。パウンドケーキは日持ちもするので3本焼いていた。1本は今日の昼食で食べ終えてしまうぐらい、好評だった。
義母のロレナからパウンドケーキを受け取ったノエは「いつもありがとうございます」と深々と頭を下げる。そしてトパーズのような瞳を私に向け「パトリシアさまの手作りのパウンドケーキをいただけるなんて光栄です。心していただきます」と柔らかい笑みを浮かべた。
「そんな。気軽に食べて頂戴。有名なパティシエのパウンドケーキというわけではないのだから」
私の言葉にノエはさらに笑顔となり「高名なパティシエより、パトリシアさまの手作り料理をいただける方が、俺は嬉しいです」なんて言ってくれるので、ロレナは「まあ」と微笑む。スノーは「そうよ。パトリシアさまの手料理は絶品なの!」とさらに褒めてくれて……。自然と私の頬は緩んでしまう。
本当にみんな優しい。
「ではそろそろ俺は公園に向かいますね」
ロレナ、スノー、私はエントランスまでノエを見送る。
「さあ、スノーちゃん。ダンスの練習、がんばりましょうね。ノエくんみたいな素敵な王子様がエスコートして、ダンスを踊ってくれると言ってくれているのだから。スノーちゃんもお姫様として、素敵なダンスをできるようにならないとね」
ロレナの言葉にスノーは「はい!」と元気よく返事をする。
ホールに移動し、昨日と同様、ダンスの練習スタートだ。
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今週も一週間、お疲れさまでした☆
続きは明日の夜に公開します~
よい週末を!!!



























































