127:油絵
翌日から日常が戻る。
レオナルド……アズレークは執務が再開だ。当然だが、忙しい。でも彼は昼食を私に求め、夜は必ず屋敷に戻り、夕食を共にし、同じベッドで休む。これはもう、彼自身、絶対に変えるつもりはないようだ。
一緒にベッドにはいれば、まだまだ新婚の二人なので、当然お互いを求めあうことになる。その後、私は朝までぐっすりなのだが……。一度だけ、ふと目が覚め、隣にアズレークがいないことに気づいた。
でもとにかくアズレークに抱かれ、疲れ切っている私は、彼がベッドにいないと気づいても、何もできないし瞼はすぐ重くなり眠ってしまう。ただ、次に目覚めると、アズレークに腕枕されている。そしてちゃんと逆鱗の反応を抑え、魔力も回復してくれていた。
これは私の想像。
この屋敷では、シーラやギニオンの時のようには過ごせない。アズレークとしては物足りないし、何よりその熱が有り余っているのかもしれなかった。それでいて仕事は山積み。私との時間を過ごした後。私が眠ったのを確認し、仕事をこなしている可能性は高かった。
その行動に対し、文句など一切ない。アズレークはパートナーとして完璧だと私は思っている。文句よりも彼の体が心配なだけだ。とはいえ、朝にはちゃんと私を抱きしめ寝ているのだ。少し仕事をこなし、熱をおさめ、再び眠りについている……可能性が高い。
無理のない範囲でしていること。だから私はアズレークにその行動について問い詰めることはない。代わりに私が朝、たまに回復の魔法をかけてあげていた。
アズレークと私の日常はそんな感じだったが、スノーは新しい日常を楽しんでいる。
私達が屋敷をあけていた1カ月間。
スノーは午前中に家庭教師に勉強を習い、午後はノエと過ごしていた。
そのスタイルがスノーの日常となり、アズレークに届ける昼食は私が作り、その間、スノーは家庭教師と勉強している。そして王宮へ行き、アズレークと昼食を終え、屋敷に戻ると……。
ノエと油絵を描いたり、チェスをしたり、公園を散歩している。
二人は特に油絵を描くのが好きなようで、義父であるエリヒオは、屋敷の一階にアトリエを用意した。つまり、油絵を描くための専用の部屋だ。
なんだかんだで油絵は独特の匂いがある。スノーの応接室が常時この匂いというのは可哀そうだと、エリヒオはアトリエを用意してあげたわけだ。
するとスノーとノエは、天気の悪い日は油絵を描く時間が増え、私の肖像画も描いてくれた。エリヒオは宮廷画家の知り合いに頼み、週に一回、個人レッスンも受けられるようになった。
その結果、スノーは抽象画のような絵から、写実的な絵を描けるようになる。一方のノエは、さらにその腕が磨かれ、遂には宮廷画家の紹介で、画廊のオーナーと会うことになった。
アトリエにやってきた画廊のオーナーは、ノエの絵を見て、いくつかの作品をギャラリーに飾ることを提案した。
すると。
即日完売となる。これをきっかけに、ノエは定期的にそのギャラリーに自身の油絵を飾るようになった。どうやら固定のファンもついたようで、ギャラリーに飾った油絵は必ず売れる。
ノエ本人はあくまで趣味で油絵に取り組んでいるようだが、個人レッスンをつけくれている宮廷画家も画廊のオーナーも、ノエに対し「画家で食べていくことも可能なのに」と言われるほどになっていた。
これはわずか1カ月の間での出来事。
そのことからもノエは間違いなく、才能があった。
だがノエは、自分がかつて魔法薬で事件を起こしたことも分かっているし、ロレンソの診療所を手伝い、医療や薬学の知識を懸命に学ぼうとしていた。学校の建設も進んでいるし、成獣である不死鳥を先祖に持つ人間として、医学を学び、魔法薬の後遺症で悩む人を救うと心に決めている。
よって画家の道へ進むつもりはない。ただ油絵が売れることで、ノエは収入を得ることができるようになった。その使い道は、画材の購入、ロレンソと共に活動しているボランティアへの寄付、残りを使い、ノエがしようとしたことは……。
「アズレークさま、パトリシアさま、ノエがゴメル地区でお世話になった方と食事会をされるそうです。街の、ロレンソ先生がよく利用するレストランで。スノーも行きたいのですが……」
そう、スノーが私とアズレークに相談したのは、夕食の後、入浴の準備をしている時だ。
ノエは自分のためではなく、お世話になった方のために、自身の才能で得たお金を使おうとしていた。そこは彼自身の性格の良さは勿論、ロレンソを師と仰いだ結果だろう。とにかくノエは魔法薬事件を引き起こしたが、真面目でいい子だった。
その食事会について詳しく聞くと、レストランというのは、私が案内されたこともある、ロレンソと初めて食事をしたお店だった。
そこでの食事なら、スノーの身分が分からないようにすれば、顔を出すこともできる……そう、思ったが。開始時間が大人の時間だった。スノーのために開始時刻を早めてくれとは頼めない。何しろゴメル地区のお世話になった方との食事が主旨の食事会なのだから。彼らの都合は最優先。
この事情をスノーに説明すると、「仕方ないですね」としょんぼりしながらも納得してくれた。
ところが。
ノエが次に催すことが決めた食事会は、ロレソン達、今暮らす街の人々だった。ただこちらも皆、仕事やボランティア活動がある。子供食堂も運営しており、そちらが終わってからとなると、みんなが揃うのは、これまたスノーが寝る準備をする時間。
せっかく声をかけてもらえたが、スノーはこちらも参加できない。
すると……。
お読みいただき、ありがとうございました!
明日もお昼に公開します~
引き続きよろしくお願いいたします!
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昨日、活動報告見た方はお気づきかもしれません。
実は新作の公開、スタートしています!
『断罪の場で悪役令嬢は自ら婚約破棄を宣告してみた
~回避成功編~ 』
https://ncode.syosetu.com/n0370ih/
タイトル通り、なんとついに断罪回避に成功!
が、しかし!となるのが一番星キラリ作品です。
さあ、今度はどうなるのでしょうか!?
断罪の場で自ら婚約破棄宣告シリーズ第三弾ですが
独立した作品です。
ラストは勿論、ハッピーエンド。
まずはプロローグを、通勤通学の電車の待ち時間。
歯磨きをしながら、断罪終了後を読んだ後にでも、試しに読んでいただけると幸いです☆
既に5話以上公開されています!
よろしくお願いいたしますヾ(≧▽≦)ノ



























































