111:一見優美だけど、実は……
「そうか。僕がデレる……。どうだろう。僕は自然体でいるつもりだけど、グロリアの言うデレるという状態になるかどうか。とりあえず報告を始めてもらえるかな」
レオナルドは私を抱き寄せたまま、三人に声をかける。
すると三人は瞬時に騒ぐのを止め、「コホン」と咳ばらいをしたグロリアが、報告を始めた。
「今朝までに逮捕された『ワイズ』のメンバーは119名。その中には警察関係者の人間もいましたが、シーラの貴族も含まれています。街の中で生まれた地下組織ですが、急速に力をつけていたようです。人数は想像以上に多かったものの、おおむね、構成員の逮捕は完了したと思います」
グロリアがそう言うと、ルカがこう付け加える。
「レオナルド様が用意してくださった尋問薬が効果てきめんです。砂金にしか見えない粒なのに。一粒飲ませた状態で、尋問し、嘘をつくと、その粒は拳大になる……。嘘を重ねる度に、その粒はどんどん大きくなり……。真実を言うまで、元のサイズには戻らないのですから。一度の嘘で、すぐにこれがハッタリではないと分かり、皆、知っていることをペラペラ話してくれます」
レオナルドは何気にそんな薬を用意していたなんて! 間違いなく、魔力が使われていると思う。しかも嘘をつくと大きくなるって……。
よくよく考えるとレオナルドはとても優美なのだけど、言動の一部にドキッとする要素を感じるのは気のせいかしら? だってプラサナスから王都へ戻る際、私を旅籠で襲った犯人達に対して……。
――「うん。そうだね。彼らの足の裏に楽しい魔法をかけようか。逃走を図ると、地面は針山に変わる。一歩も動けず、すぐに捕まるだろうね」
冗談っぽく言っていたけど、針山とか何気に恐ろしい状況が織り込まれている。それに私に魔法を教える時のあのスパルタは……。優雅に微笑みながら「あと一時間は練習しよう」と言い、私に魔力を送りこんだ。
そして今聞いた尋問薬。
え、もしかしてレオナルドの時のアズレークって、一見優美だけど、その実はS的な傾向があったりするのかしら? もしそうならレオナルドと夜を過ごしたら……なんて考えてはいけないのかもしれない。
「『ワイズ』の創設メンバーの残り一人が捕えることができていませんが、どうやら国外逃亡の可能性もあります。捕えた創設メンバー二人に尋ねても『どこに逃げたか分からない、行き先を教えてもらっていない』と、尋問薬を飲んだ上でそう答えているので、嘘はついていないかと。よって逃亡先は不明ですが、引き続き捜索を続けるよう、指示を出しました」
セシリオの報告の言葉に、私のレオナルドの分析はストップになる。
「なるほど。構成員はそうだね、限りなく全員逮捕できたと思えるかな。残るは創設メンバーの一人か……。でもまあ、国外に逃げたとなると、捕らえるには時間がかかるかもしれない」
そこでレオナルドは考え込む。だがすぐに名案を思い付いたとばかりに微笑む。
「一応段階は踏むつもりだけど、まずは揺さぶりをかけようか。国王陛下にも許可をとり、残り一人の創設メンバーが出頭しない場合、既に逮捕されている二人のメンバーには極刑が下される可能性がある……ニュースペーパーの記者にこの情報を流してみようか」
「それはいいと思います! ここで出頭しなければ、『ワイズ』の結束力は崩れ、完全崩壊になりますよね」
グロリアの言葉にその場にいた全員が頷く。レオナルドも美笑を浮かべ、さらにこんな提案もする。
「それでも出頭しないなら。その次の段階では僕が動くと告知するのもいいかもしれないね。『ワイズ』がいたぶっていたのは魔力が弱い者達。つまり弱いものいじめをしていたわけだ。でも僕が動くと知ったら、少しは肝が冷え、出頭したくなるかもしれない」
王宮付きの魔術師であるレオナルドは、基本的に国の中枢で動く。王都から離れたシーラの街の地下組織の撲滅のために動くなんて異例のこと。これには国民の多くが驚くだろうし、レオナルドが動くぐらいだから、懸賞だって用意されるだろう。
つまりは逃亡する『ワイズ』の創設者の一人に対する有力情報を提供すれば、相応の額のお金が手に入る。そうなれば国民の目は、逃亡者に向けられるだろう。そうなれば逮捕は目前となるはず。
「レオナルド様、それは名案だと思います。今、いただいたプランを宰相に報告し、国王陛下に進言いただくのでよいでしょうか?」
セシリオが問うと、レオナルドは快諾する。これで逃亡する『ワイズ』の創設メンバーについても、なんとかなりそうだ。
「レオナルド様、『ワイズ』の件はこれでなんとかなりそうですから、後はパトリシア様とゆっくり新婚旅行をお楽しみください」
グロリアがそう言うと、ルカも追従する。
「昨日は本当に驚きましたよ。突然、レオナルド様が王宮に現れたのですから。とりあえず婚姻届けを出し、新婚旅行を兼ねた1カ月の休暇にはいったはずなのに。パトリシア様を放置して王宮に来ている場合なのですか!?って、ツッコミたくなりましたよ」
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