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断罪終了後に悪役令嬢だったと気付きました!既に詰んだ後ですが、これ以上どうしろと……!?  作者: 一番星キラリ@商業ノベル&漫画化進行中
【本編】

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20/311

20:なぜこんな風に抱き寄せるのだろう?

朝食の後は、昨日と同様、アズレークから魔力を送りこんでもらうことになった。

アズレークから魔力を送ってもらう時、私はカウチソファの背もたれに上半身を預け、寝そべるような体勢をしていた。


でも今日は私が髪をまとめていたからだろう。こんなことを提案された。


「オリビア、こっちのソファに座って」


ソファに座ると、アズレークは私の隣に腰をおろした。


「では魔力を送るから」


肩に左腕を回し、右手で顎を持ち上げる。

ゆっくりアズレークの顔が近づく。


この体勢……これはソファに座り、キスをしている恋人同士のようにしか思えない。


さっき、浮ついた気持ちになっている場合じゃないと、気付いたばかりなのに。なんとか雑念を振り払おうとするが、心臓はドキドキするし、体は熱く火照り……。


ふわふわした気分を抑えるのは、無理だった。


「よし。これぐらいで。今日は今まで一番多く魔力を送った。体への馴染みは問題ないから、送り込んだ量は多いが、大丈夫だろう。五分ぐらい経てば、落ち着くはずだ」


そう言いながらアズレークは、力の入らない私の体を、自分の胸に抱き寄せた。そんなことをされたのは初めてなので、心臓が大きく反応してしまう。


なぜこんな風に抱き寄せるのだろう?

あ、そうか。

頬を冷ますのに手を添える必要がある。

でも私の体に力が入っていないから、支える必要があった……。


アズレークは合理主義者だ。意味もない行動はとらない。

そう分かっていても。

男性の胸に、こんな風に抱き寄せられるなんて。

慣れていないから……。


全身の熱が冷め、体が動くようになっても。

しばらく心臓のドキドキだけが、収まることがなかった。


◇


午前中は聖女についての座学。昨日習ったことの復習をした。


昼食を経て、午後は魔法を使い、聖杯に聖水を満たすことになった。


昨日と同じく、中庭で早速練習を始める。

まずは魔法で隠している聖杯を実体化するところから、アズレークに習う。


「私の呪文はシンプルに『聖杯よ、顕現せよ』だ。オリビアはどうする?」


「そうですね。すぐに取り出したいと思うので、私も同じ呪文にします。……なんだかアズレークさまの呪文を真似してばかりですが」


するとアズレークは、ふわっとした優しい笑みを浮かべる。

こんな笑顔もするのかと、思わず胸がキュンとしてしまう。


「私の呪文は、装飾を取り去ったシンプルなものだ。つまり基本中の基本の言葉だけを、並べたもの。無駄を省けば、必然的に私の使う呪文になる。真似だとは考えなくていい」


「分かりました」


「ではやってみようか」


頷いた私は、腰のシルバー細工のベルトを見る。

そこには陽炎のように揺らめく聖杯が見えている。

先に魔法で隠しておいた。


ゆっくり左手を聖杯に向け、目を閉じる。

おへその下あたりがじんわりと熱くなってくる。

ここにアズレークが刻印した起点がある。

昨晩、入浴時に確認したが、コインサイズの美しい紋章だった。


その紋章は、どこかで見たことがある気がした。

それは色が白く、雪の結晶みたいな幾何学模様だからだろう。


その秀麗な紋章が脳裏に浮かび、魔力がダイヤモンドダストとなり、キラキラと輝く。


聖杯に煌めくダイヤモンドダストが舞い散る。


「聖杯よ、顕現せよ」


陽炎のようなゆらめきではなく、ハッキリ視認できる状態で、聖杯はそこにある。


「……オリビア、素晴らしい。ちゃんと集中できている」


「アズレークさまのおかげです。起点を刻印くださったので、集中できるようになりました」


「それは良かった」


黒い瞳を細め、アズレークは微笑むが、すぐに真剣な表情に戻る。


「では今度はその聖杯に聖水を満たす。そのためには聖水を召喚する必要があるのだが……」

このあともう1話公開します!

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