47:完璧な説明
「パトリシアさま~! どこに行かれていたのですか!!」
そろそろ朝食が終わるタイミングでアズレーク……レオナルドと二人、ダイニングルームに行くと。まさに朝食を終えたスノーが泣きそうな顔で席を立ち、私に抱きつく。義母と義父も立ち上がり、レオナルドと私のところへ駆け寄った。
「お義母様、お義父様、スノー、心配をかけてしまい、ごめんなさい。その、ロレンソ先生と……」
今回の件をどこまで話すか考えていなかった。
ロレンソは私をさらったわけだが。
アズレークと勝負して負けを認め、私を諦めてくれた。
そしてガレシア王国に戻り、また医師として、さらに街をよくするために尽力するつもりなのだ。そのロレンソのことを悪く言いたくない。そんな気持ちが働いてしまい、言葉が途中で止まってしまった。
「ロレンソはグレイシャー帝国の皇族の一員でした」
しどろもどろになった私に代わり、レオナルドが口を開く。
「まあ、ロレンソ先生はグレイシャー帝国の方だったの? ここからかなり遠いわよね?」
アズレークに確認していなかったが。
義母のロレナのこの反応を見る限り。
私をさらったのがロレンソということを知らないようだ。ここはアズレーク……レオナルドに説明をまかせることにする。
「あの日の夕食の後。僕がウトウトしている間、ロレンソとパトリシアは話を続けていました。そこでロレンソは、自身がグレイシャー帝国の第二皇子であることをパトリシアに明かしたそうです」
「何!? 第二皇子!?」
義父のエリヒオも目を丸くする。
「いろいろ事情があり、身分を伏せているので、この件は内密にしてあげた方がよさそうですが」
レオナルドが付け加えると、ロレナとエリヒオは顔を見合わせ大きく頷く。その様子を見て、レオナルドは話を再開させる。
「ロレンソは魔法も使えるそうです。しかも僕と変わらないぐらい、強い魔力の持ち主でした。そしてパトリシアは勿論、グレイシャー帝国なんて行ったことがないですから……。興味を持ってしまったのです。そしてロレンソは軽い気持ちでパトリシアをグレイシャー帝国に招待しました。魔法を使い、あっという間にグレイシャー帝国にロレンソとパトリシアは行くことができたわけです。でもすぐに戻って来るはずでした」
ロレナとエリヒオは「うん、うん」という感じで頷き、レオナルドを見ている。スノーも私に抱きついたまま、レオナルドの説明を大人しく聞いていた。
「でもグレイシャー帝国は、氷の帝国と言われているぐらい、雪と氷で閉ざされている国。急に吹雪に見舞われ、移動の魔法も連絡をとるための魔法も、悪天候に阻まれ、うまく使うことができなかったそうなのです。丁度、僕がパトリシアの元に向かった時は、悪天候も収まっていました。一泊だけもてなしを受け、今朝戻った次第です」
「まあ、そうだったのね」「無事、二人とも戻ってよかったよ」
ロレナとエリヒオは納得し、スノーも「うん、うん」と頷いている。
さすがレオナルド。
きっと国王陛下への報告もうまいことしてくれるに違いない。
「まさかパトリシアがグレイシャー帝国にいるとは思わず、僕も取り乱してしまいましたが……。こうやって無事戻ることができましたし、ロレンソも数日したらまた街に戻り、医者としてがんばるそうですよ」
本当に完璧な説明だった。
ロレナとエリヒオも何も疑うことはない。
「それで、レオナルド、あなたこれから仕事なの?」
「いえ、母上。明日まで休みをとっているので、この後、パトリシアとスノーを連れ、ルクソール・プレジャー・ガーデンズに足を運ぼうかと」
「わぁ、レオナルドさま、本当ですか!」
スノーが私から離れ、レオナルドに抱きつく。
レオナルドはスノーを抱き上げ、「ええ。スノーはずっと行きたかったのでしょう?」と、紺碧色の瞳を細めて笑う。スノーに向ける笑みは眩しいぐらいに輝いている。
「わーい! 楽しみです!」
大喜びのスノーを部屋に連れて行き、外出のための着替えをメイドに頼む。私も一旦自室に戻り、着替えを行う。スノーとお揃いのブルーグリーンのドレスに着替えた。
胸元とウエスト周りに銀糸でフェザーが刺繍されており、ラメも散りばめられており、キラキラしている。襟元と裾には白のフリル、そしてこのフリルが見えるようにツイード生地でできたボレロを羽織り、焦げ茶色のブーツをはく。そしてドレスと同色の羽根つきの帽子を被れば、身支度は完成だ。
スノーを部屋に迎えに行き、そこにレオナルドがやって来て、エントランスへと向かう。ロレナとエリヒオに見送られ、馬車へと乗り込むと。
レオナルドはあっという間にアズレークに姿を変える。
私のテンションはそこで一気に高まったが、それはスノーも同じ。アズレークと私の間に座っていたスノーは。
「アズレークさま!」と、すぐに抱きついている。
スノーも私と一緒。アズレークが大好きだった。
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次回は今晩、19時後半~20時前半で『美味しそうな香り』を更新します。
午後も睡魔に負けず、ファイトです!
【新作公開予告】
>>本日、22日(月)夜20時公開<<
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本日、夜20時に一挙5話公開!
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夢のような悶絶展開作品です。
(どんな作品w)
終盤のみR15要素あり。
閲覧可能年齢の読者様。
断罪終了後を見た後に
もしお時間ありましたら。
まずは試し読みからお願いします!



























































