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断罪終了後に悪役令嬢だったと気付きました!既に詰んだ後ですが、これ以上どうしろと……!?  作者: 一番星キラリ@9/2やられる前に発売:商業ノベル&漫画化進行中
【本編】

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1:プロローグ

「どうして……」


長い睫毛の下の、紺碧色の瞳が衝撃で大きく見開かれている。


問われても、返す言葉などない。


それどころか魔力が発動し、既に全身が火照るように熱くなってきている。


私は聖女だ。


それなのに真夜中の寝室で、この国の王太子アルベルトに跨っている。


心臓の鼓動も早くなっている。

頬も高揚しているのが分かる。

まさか目覚めるとは思わなかった。


どうする、どうする、どうする……!?



「お前は何も悪くはない。だが、爵位も剥奪された。お前を養うことはもうできない。このまま身売りをするよりはマシだろう……」


号泣する父であり、元ベラスケス公爵を見て、私は唇をかみしめる。


確かに私はまだ19歳になったばかり。


これまでの努力の賜物で、肌はシルクのように白く滑らかで、胸は大きく腰もくびれ、手足もほっそりして長い。髪は波打つようなブロンドで瞳は琥珀色。鼻も高く、ぷっくりした唇に釘付けになる殿方も多かった。もちろん未婚。身売りすることになれば、高値で取引されるだろうと、自分でも分かる。


政治ゲームで父は負けた。


ライバルであるドルレアン公爵は、父にやってもいない横領の罪をなすりつけ、国王陛下も王太子もそれを信じてしまった。


だが爵位剥奪だけで済んだのは……父はもとより、先祖代々のベラスケス公爵家がこの国、ガレシア王国に忠誠を誓い、長年仕えてきたからだろう。


でもこの結果は……仕方ないのかもしれない。

なにしろドルレアン公爵の娘、カロリーナに対し、私は散々ヒドイことをしてきたのだから。


私とカロリーナは王太子の婚約者の座を巡り、熾烈な争いを繰り広げてきた。親同士が政治ゲームで争う一方で、娘同士も恋の火花を散らしてきたわけだ。


でも最初から勝敗は決まっていた。

だってカロリーナはヒロインで、私は悪役令嬢なのだから。

え……。

え、何、悪役令嬢って?


「さあ、早く馬車に乗るんだ、パトリシア!」

「ちょ、ちょっと待ってください、お父様……」


今、私は何かとんでもないことを思い出そうとしている気がする。


「いや、もたもたしていると、ドルレアン公爵の手の者がやってくる」


「で、でも、お父様」


「パトリシア、元気でな。愛しているよ」


「お、お父様―っ!」


馬車に押し込まれ、扉が閉じられる。

その瞬間、ものすごいスピードで馬車が走り出した。

その揺れの激しさに、必死に耐えながら、私は自分が何者であるか思い出すことになる。



東堂美咲。

それがこの世界に転生する前の私の名前だ。

小学生の時から漫画やアニメが大好きで、高校生になって乙女ゲームにハマった。それから大学を卒業し、社会人になってから、自由に使えるお金をすべて、オタク趣味に費やしてきた。リアルな恋愛経験はないに等しかったが、乙女ゲーの中で沢山の愛の形を知り、それで幸せだった。このまま一生独身でも、乙女ゲーの沢山の推しがいれば生きていける。そう思っていた矢先……。


世界的にウィルス性の病気が流行した。感染力が強いということで、仕事は在宅ワークに切り替わった。おかげで通勤に時間をとられなくなり、乙女ゲーをプレイできる時間も増えた。


その結果、在宅ワーク時間以外は、乙女ゲーをやりこんでいた。


その当時の私がハマっていた乙女ゲーはいくつかあるが、かなり課金していた乙女ゲーは……。


『戦う公爵令嬢』という、新機軸の乙女ゲーだった。


舞台はガレシア王国という西洋風の魔法が存在する世界で、そこの王太子、王宮に使える魔術師、王太子を護衛する三騎士を、ヒロインの公爵令嬢に扮し、攻略していく恋愛ゲームなのだが。


当然のごとく、悪役令嬢が登場し、誰を選んでも邪魔をしてくる。

ヒロインと同じ公爵家の悪役令嬢が。


しかも、邪魔をするのは悪役令嬢だけではない。

その両親も悪役令嬢と共に邪魔をしてくるのだ。

つまり同じ公爵家同士の政治ゲームも同時進行になるのだ。


だから狩りで獲得した獲物の数の競い合いから、領地の奪い合いまで、親子共々攻略対象をゲットするために、奮闘するのだ。


親子で攻略対象を攻略していく……という発想は斬新だったが、ぶっちゃっけそのシステムはどうでもよかった。


とにかく攻略対象となる5人が、すべてを推しメンにしたくなるぐらい、私の好みのタイプばかりだった。よって全員絶対に攻略したかったし、難易度を上げ、お楽しみ映像を楽しみたかった。だからかなりやり込んでいた。そして新たなイベントが始まるとなったその時……。


友人とももっぱらオンラインで会話し、仕事は在宅で、外に出るのはコンビニぐらいだったのに。流行していたウィルス性の病気に感染した。そして死亡した。ウィルス性の病気で死亡したわけではない。病は発症していたが、それとは関係なく、自宅療養していた時。コードに足がひっかかり、転んだ時の打ち所が悪く、それで死亡した。


その事実を思い出した時は、自分の不運を嘆いた。


だが、そのコードがつながっていたのが、私がプレイしていた乙女ゲー『戦う公爵令嬢』だったからだろうか。『戦う公爵令嬢』の世界に転生していた。


しかし。


ヒロインではなく、悪役令嬢パトリシア・デ・ラ・ベラスケスとして転生していた。


しかも。


自分が悪役令嬢に転生していたと気付いたのは、すべてが終わった後だった。


つまり、親は政治ゲームで敗れ、悪役令嬢である私は既に断罪されていた。


爵位剥奪され、私は修道院に向かうための馬車に乗ろうとしたまさにその時、覚醒したのだ。


これは……ひどすぎる。


悪役令嬢のフラグを回避する行動など一切できないまま、いきなり悲惨な末路突入って。しかもせっかく『戦う公爵令嬢』の世界に転生したのに、攻略対象の誰一人と会うこともなく、いきなり修道院送り。


もちろん、パトリシアとしての記憶はあり、その記憶の中では攻略対象と会っているが、それは記憶に過ぎない。リアルに存在しているのに、触れることもできないのなら、画面越しに登場する彼らを見ている状態と変わりない。


詰んだ後に覚醒するぐらいなら、覚醒しないまま終わりたかった……。


こんな悲惨な悪役令嬢に転生した人、私以外でいるだろうか?


いくら魔法が使える世界でも、時を巻き戻すなんて大技はさすがに無理だ。


こうして私は、悪役令嬢として転生し、覚醒しないまま断罪され、そして断罪後に覚醒し、修道女として人生を歩み始めることになる。

沢山の投稿の中から、本作を見つけてくださり

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