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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

コイン

裏と表。

コインってそういうもの。

私たちもそう。

素敵だなぁ。

どんなことがあっても離れることのない裏と表。

仲良しになるに決まってる!

だって私だもん!

趣味も好きなものも嫌いなものも一緒!

だからだろうなぁ…

ちょっと怖いかも…

貴女ランは私のこと。

どう思う?


いつまで一緒にいるんだろうな。

そう考えるようになってどれくらい経つだろうか。

物心ついた時。

いや、そうなんだけどな。

1人の体に2人のたましい

異常な状況だ。

いつかおフウカが耐えられなくなるんじゃないかって。

そう思うと怖い。

明るくて、優しくて、太陽みたいな。

アタシとは正反対の人。

消えることができるなら。

どちらかが残れるのなら。

後から出てきたアタシが消える。

そういうもんだ。


(また考え事してたでしょ?)

授業中だ。

集中しろよ。

(ランってほんとお母さんみたいなこと言うね。)

代わりになれるならそうするさ。

(ふーん。じゃあ消えようなんて考えないでよ。)

悪かったよ。

たった1人の家族。だったな。


「ぅん〜〜〜!終わったー!」

気持ちよく伸びるもんだ。

「今日は金曜日なんだよ!早く帰ろ!」

あぁ、わかった。

「フウカぁ…慰めてよ〜。」

あ、サキだ。

ってアレ?

入れ替わっちゃったや。

「悪りぃな。フウカは寝た」

うーん。

サキの髪、いつ見てもキレーだなぁ。

モンブランみたいで美味しそう。

(どういう感想だ?)

そう思わない?

(思わねぇ…)

髪染めない?

(ダメだ。よそはよそ。うちはうち、だ。)

サキは生まれつきだったね。

いーなー。

「酷いよ!ラン!私はフウカに慰めてほしーのー!」

ほら、代わって?

(…)

舌打ちしないの!

幼馴染で親友!わかってるでしょ!

(こいつ、最近お前を見る目がイヤらしいんだよ。)

「はい、代わったー!どーしたの?。」

全く、どうなっても知らんぞ?

「それが数学の小テストでやらかしたんだよ〜。月曜日再テストって〜。」

あぁ、アレか。(あぁ、アレかぁ)

(被っちゃったね)

そりゃあ、一心同体だからな。

「うーん。そんなに難しかった?」

おいおい。

あれはほとんどアタシが解いたんじゃねぇかよ。

(いーじゃん!いっしんどーたい!)

あーずりぃなぁ…

「そうだ!」

嫌な予感がする。

「簡単だったんならフウカの家で勉強会しよーよ!教えて!」

よりによってうちでやんのかよ。

厚かましいヤツ…

(まーまー。そんな離れてないし、私は別にいいけど?)

布団ねぇって言っとけ。

前は床で寝るハメになったんだしよ。

「うちでやってもいいけど泊まりはなしね?布団一個しかないだよねー」

「それじゃあ一緒に寝られるじゃん!サイコー!」

あー、余計なこと言ったか?アタシ…

(あらぁ…まぁこれはこれでいいのかな?)

何がだ?

(気にしないで。)

そうか?

とりあえず教室出た方がいいな。

すごい注目されてんぞ?

(そうしよう。)

「ほらサキ!置いてくよ!」

置いていけ。

あんな色狂い。

(そんなこと言ったらダメだって!)


「そー言えばさ?ランとフウカっていつから一緒なの?」

うーん。気づいた時からかな?

あり?

「気づいた時からだ。」

不思議なんだよねー。

「両親が死んで1人になった。叔父さん達の支援で学校には行かせてもらえてるけどな。」

感謝だよねー!

(アタシ達を怖がってるけどな。)

「どんな感じなの?その…1つのコップに水と油が入って分離してるような感じなんでしょ?」

おい待て、どっちが油だ?

あ?

「どんな感じかー…頭の中にランがいて、たまに入れ替わったりして、そんな感じ?」

「うーん、いつものふわふわアンサーだぁ…。」

アタシもはっきりと答えらんねぇな。

「例えばランが表にいる時は私もおんなじように見たり聞いたりできるよ!」

まぁ、そうだな。

「じゃあ食べるのも?」

(あれ?食べる時っていつも私が表?)

代われ。

「食べる時もおんなじだ。アタシもフウカと同じように熱いとか甘いとかそういうのは感じてる。」

「へー。不思議だねぇ。」

ランってご飯食べてないよね?

(お前がメインなんだからお前が食べなきゃだろ。)

やっさしー!

(茶化すな…)

「お、じゃあ一旦ここでお別れだね。フウカ?ラン?とりあえず後で行くねー!」

来なくていいぞ。

「じゃーねー!」

(あっぶなー!来なくていいなんて言わないの!怒るよ!)

…襲われても知らんからな。

(また舌打ちしたぁ!友達は大事!私たちと普通に話してくれる人少ないじゃん!)

悪い…

(ランのせいじゃないよ…ごめん…)

いや、お前が謝ることねぇよ。

アタシがいるから。

「そういうふうに言うのダメだって!」

あ。

(お前なんてタイミングで入れ替わりやがった!)

お?誰も見てない?

見てない!

(心臓に悪いぜ…ホント…)


おい!

起きろ!

(あとごふん〜…)

チャイムなってんぞ!

「早く言ってよ!」

言ってただろ。

「ヤッホー!寂しかったよ〜!」

2時間くれぇしか経ってねぇだろ。

「うわぁ!もーいきなり抱き付かないでよ〜。」

フウカの髪を嗅ぐな!

この変態!

(うーん。サキちゃんもいい匂い〜。)

おい!お前も何やってんだよ。

「あ!そうだ!いっぱいお菓子とか食材とか買ってきたよー!」

多すぎだろ…何日ここにいるつもりだ?

「わー!うれしー!じゃあ先にご飯にしよっか?」

米炊いてねえぞ。

「じゃあ先に」

「勉強だ。」

お風呂でもいいじゃん!

(先に風呂入ったらそのままズルズル遊んで寝るだろ。)

んっ!?そ、そんなことないよ!?

(サキのためにならんぞ。それ。)

くぅ…しょうがない…

「まぁ上がれ。」

いらっしゃい!

「おー!なんか優しいランって新鮮!」

そーかな?

いっつも優しいじゃん。

「暖房の意味がなくなるだろ。ドア閉めろ。」

素直じゃないなー。

君はー。


「で、Yはさっき求めた値を代入して…」

ふむふむ。

「あー!わかった!」

私もわかった!5だ!

「4!」

「正解だ。」

あれ?

足し算間違えた?

「これが解けるなら残りは数字が違うだけだ。大丈夫だろ。」

おぉ!

足し算が違う!

(バカ…まだやってたのか。)

適材適所!

ランだって文系苦手でしょ?

「飯の準備をする。お前はそのまま続けてろ。」

苦手でしょ!!

「うっさい…」

苦手じゃん!!!

「うっせえ!おとなしくしてろ!」

「え…ごめんなしゃい…」

いや、違う。

「わー!気にしないで!気にしないで!!ちょっとこっちの話!」

(ほら!ランも謝って!舌打ちしない!)

「悪かった。フウカとの話だ。あーもう。泣くな。」

そうそう。

優しく涙、拭いてあげてね。

「うん。今日のランは優しいね。」

前もあったねー。

懐かしい。

「いや、今のはアタシが悪かったから。」

転んで泣いちゃってたサキを見つけて。

それで、ランが飛び出して。

それからの仲だよね!

「ん、大丈夫。ご飯待ってる。」

あれもう10年くらい前かー。

時間が経つのは早いねー。

「勉強してろ。」

(後、泣いてたのはあいつの親が来るのが遅れてたからで8年前な?)

そうだっけ?

(そうだ。)

「はーい…」

体が2つならいいのにね?

そしたらもっと楽しいのに。

(アタシはいらねえだろ。)

必要だよ。

こんなに優しくてしっかりしてる人。

私、知らないもん。

「ちょっと!私、料理できない!」

…とな。

なんて?

「なんでもねえ。って、カレー用の材料しかねえ…」

昨日もカレーだったねー。

肉じゃがは?

「牛肉は昨日使い切ったし、あいつ、豚肉買ってきてやがる…」

私は別にいいけど?

(なんか悪いな。)

気にしないでよ!

作ってもらってる私に文句言う権利ないし!

「風呂の準備してから始めるか。」

あ!じゃあ!カレードリア食べたい!

(面倒なのでなし。)

えー!いいじゃん!

「さっき、文句言う権利なしって言ったろ…」


「うーん!隣にサキちゃんがいるって新鮮!」

迷惑だ。

「私も!うーん!新鮮なフウカの匂い~!」

もう寝ろ。

日付変わってんぞ。

「じゃあ電気消すね?」

「お休み。フウカ、ラン。」

「お休み。サキ。」

お休み。サキ。


ぅん…

ん…

なんだ…

っぁ…

くすぐったい…

「おい。」

(ん…)

「あ…おはよー…」

「まだ日は登ってねえんだが?」

(っん…)

「いやー。我慢できなくてね…?」

「とりあえず、手ぇ離せ。いつまで人の乳首弄ってんだ?」

(フウカは寝たままか。)

「だって!おっぱい大きんだもん!」

(色情魔が…)

「なんだ?勉強だけじゃなく、筋トレもしたいのか?」

「違う!違う!違う!やだ!腕立てで胸筋鍛えるとか言い出すんでしょ!」

(よくわかってんじゃねえか。)

「筋トレしないのなら寝ろ。フウカはもう寝てんぞ。」

「そーゆー時って起こせないの?てか2人とも寝てるの?」

「あ?まぁその通りだ。片方だけ寝るときはもう片方が表になる。2人とも寝てるときは体も寝てる。」

「じゃあ、ランだけ起きたの?」

「今はな。」

(あんまり詮索するんじゃねえよ。)

(アタシは異常イレギュラーなんだからよ。)

「もう寝るぞ。」

(あんまり深く関わっても、別れが辛いだけだ。)

「一個だけ教えて。ランはフウカのこと好きでしょ?」

「バカ言え。アタシとフウカは一心同体。好きは好きだが、そりゃLikeすきだ。Loveすきじゃねえ。」

「ホントに?別人なのに?同居してるようなもんじゃん!恋人じゃん!」

「はぁ!?違う!そんな訳ない!アタシはそのうち消える人格で!好きだとかそんなわけない!」

あー。

ホントに素直じゃないなー。

「そんなんじゃない!そんな…アタシは女で、フウカも女で…」

気にしないけどなー。

「うそだぁ。耳赤いよぉ?」

ホント!?

かわいいー!

「やめろ!そんな、そんな感情はねえ!あいつも迷惑だろうし、そうだ。アタシがそう思っててもフウカは迷惑だろ!」

うんうん。

もう好きって言ってるよね。それ。

「ふーん。お似合いだと思うけどなー?」

ホント?

うれしいなー!

「寝る!もうヤダ!寝る!」

拗ねちゃって。

「はーい!おやすみー!」

違う。

そ…そんなんじゃない…。

釣り合わないだろ第一!

アタシにフウカは…釣り合わないって!


アタシはただ、泣いているフウカをほっとけなかった。

親が死んで泣いているあの子を守るために。

出過ぎた真似だった。

コインの裏と表は出会うべきじゃない。

2つで1つのコインなんだ。

気が合うに決まってる。

だが、表と裏は出会ってしまった。

ちくしょう。

消えたくなくなっちまった。

この気持ちに気付いた今、ずっとフウカと一緒にいたい。

どうなんだろう。

フウカはアタシの気持ちをどう思ってんだろう。

聞くのは怖い。

だから隠すしかない。

伝えたらどうなる…?

想像したくもない。

隠し通そう。

踏み込んだら今が崩れる。

アタシは今のままでいい。

それでも。

気付いてほしいと思うアタシには、天罰が下るのかもしれないな…


「朝ごはんありがとーね!じゃあまた学校で!」

「うん!じゃーねー!」

(あれー?まだ寝てるの?)

寝不足なんだよ。

色々あってよ。

(ふーん。)

なんかご機嫌だな?

「結婚するならウェディングドレスとタキシードどっち着たい?」

は?

何の話だよ!

いや、でも…普通、アタシはタキシードだろ。

(私と結婚するの?)

やだ。

寝る。

起こすな…

(ラン?)

(寝ちゃった?隠し事って難しいかもね?)

「だってずっと一緒にいるんだもん。だから…私の気持ちにも気付いてほしい…かな?なんてね!」






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