表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/52

救い出された先で

ミリヤが目を覚ましたのは、ここ数年寝る事もなかった、ふかふかのベッドの上だった。

シーツの肌触りもよく、屋根裏のベッドとは天と地以上の差がある。


そして目の前には、涙を流しながら手を握る……。


「お…お母様……」


母によく似た、男性の姿。一目見れば、彼が肉親だという事が分かる。


「ミリヤ……ミリヤ……」


目が覚めたミリヤに安心したのか、男は握っていた手を更に握りしめ、まるで宝物を見つめるかのような瞳でミリヤを見てくれる。


(この方が……おそらく……)


ぎこちないながらに、正解かと思われる言葉をミリヤは口にした。


「……おじ様……?」


伯父と呼ぶには、まだまだ若く見えるが、ミリヤからおじ様と呼ばれ、涙を更に流した所を見ると、やはりミリヤの母の兄であるリアム・オリエーヌで正解だったようだ。


「……あぁ、あぁ。そうだよ。私は君の伯父だ。ミリヤ…ミリヤ……」


握っていた手を離し、優しく抱きしめてくれる温もり。久しぶりに与えられる温もりに、ミリヤの目にも涙が浮かぶ。


「おじ様……おじ様……」


伝えたい事はたくさんあった。

助けてくれてありがとう。迎えに来てくれてありがとう。優しくしてくれてありがとう。けれども出て来る言葉は「おじ様」ばかりで、リアムも応えるかのように、ミリヤの名ばかり呼んでくれる。


長い間2人で抱き合っていれば、扉をノックする音で、現実へと引き戻された。


一瞬リアムが舌打ちをしたような気もしたが、ミリヤは聞き間違いだろうと扉に視線を向ける。


リアムが「入れ」と伝えれば、入って来たのは、ミリヤをここまで運んでくれた魔術師と、騎士のような姿の男性にアンナがいた。


リアム達がいる事も忘れ、ミリヤはアンナの胸へと走って飛び込んだ。


「アンナ…アンナ……」


先程はおじ様ばかりだったが、今度はアンナの名前ばかり呼んでしまう。

そんなミリヤを嫌がりもせず、アンナは懐かしむように頭を撫で、優しくミリヤの名を呼んでくれる。


「ミリヤお嬢様。お久しぶりです。こんなに細くなってしまって……私があの時無理にでも連れ出していれば……」


アンナは人目も憚らず、大きな声で泣き出してしまった。

鏡に映る自分を見てみれば、寝ている間に着替えはさせて貰えたようだが、髪はボサボサで骨が浮かび上がった自分と目が合う。


(これは……ひどいわね……)


ミリヤの生活していた屋根裏には鏡なんていうものはなく、王太子妃教育で城に上がる時も、おざなりな化粧しかしてもらえず、鏡で確認もさせてもらえなかった為、自分の姿を直接確認するのは久しぶりだった。


この姿で街を歩いたら、侯爵令嬢とは誰も思わないだろう。


「アンナ……心配ばかりかけてしまってごめんなさい。……あなたのお陰で私はあの屋敷から逃げられた……だから泣かないで」


こんなに長い言葉を人と話したのは久しぶりなため、少しつかえてしまったが、伝えたい事は伝わったのか、アンナがミリヤを抱きしめる力が少しだけ強くなる。


一通りアンナと抱き合い泣けば、リアムが優しくミリヤの名を呼んだ。


アンナに抱きついたままだったのを思い出し、離れようとすれば、そのままでいいと微笑んでくれた。

ミリヤを気遣ってくれる事が擽ったくもあり嬉しい。


「少し昔の話と、これからの話をしようか」


リアム達を取り囲む空気が鋭くなるのを肌で感じた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ