表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/52

新たな嫁ぎ先は

「お姉様に報告もあって来ていただいたのを忘れていましたわ」


ニコリと笑うアリアの姿は、ミリヤから見ても可愛らしく見える。内面と前世を知らなければだが。


アリアの報告。ミリヤにとっては地獄への通達かもしれない。


「ディアルガン様の婚約者は私になりました」


ディアルガン・バルティナ。我がバルティナ王国の第一皇子であり王太子、そしてミリヤの婚約者。


前世を思い出したミリヤは、アリアばかり可愛がり、本来の婚約者であるミリヤに見向きもしないディアルガンなど眼中にはないのだが……。


(前の私はディアルガン様を大好きだったのよね……)



母が亡くなる前に決まった縁談。母はミリヤが王族に嫁ぐのを楽しみにしていた。それもあり前のミリヤは、何があってもディアルガンを手に入れたかったのかもしれない。


今のミリヤからしたら願ってもいない事だが。


「……いつ……」


今日初めてミリヤから反応があった事に、アリアの頬が緩んだ。


「お姉様が屋根裏に引きこもっている間にです」


好き好んで引きこもってたわけではないが、それを言っても通じない事は分かっているため無駄な口はたたかない。


「ディアルガン様たっての希望ですの。お姉様より私が良いと。私はお姉様に悪いとお断りし続けたのですが……」


(心にもない事を……)


メイド達に気付かれないよう、わざと(うつむ)いているが……跪いたままのミリヤからは、綻ぶ口が丸見えである。


「まだ正式発表はされておりませんが、お姉様の王太子妃教育も始まって一年ばかりですし、変更するなら早い方がいいとの事で、ディアルガン様からお話がありましたの」


王太子妃教育はミリヤが12歳になる時に始まった。元からのミリヤの性質が良かったのか、思った以上に早く進んだ王太子妃教育に、王や王妃は嬉しそうに笑ってくれていたが……。


あの王達が許したと言う事かと、溜め息漏れそうになる。

一貴族の娘と我が子の願い、どちらが大切かと言われれば、考えなくても分かることだった。


「それに伴い、お姉様の嫁ぎ先をお父様が急遽決めてくれました」


アリアがいい笑顔で笑っていて、あの父がミリヤに選ぶ嫁ぎ場所……最悪の嫁ぎ場所なのだろうことは聞かなくても理解できる。

しかし聞かなくては話が進まない。


「……どちらに?」



「デルべ伯爵です」


メイド達も嫌らしそうにニヤニヤしながらミリヤを見てくる。それが答えだ。


デルベ伯爵、商会をいくつも持ち、貴族に金貸しもやっている為、逆らえない者も多いやり手な伯爵。

だが歳はもう60を過ぎ、頭は薄く体も太っていて女好き。

何人もの若い女を娶っては、飽きて捨てを繰り返している男でもある。


思った通りのとんでもない嫁ぎ先に、ミリヤは頭が痛くなるが、ここで倒れると気付いたら伯爵家となりそうなので、気合いで意識を保つ。


「1ヶ月後にはあちらのお家で花嫁修行の始まりですって。お姉様、おめでとうございます」


話は終わったとばかりに、アリアはミリヤを部屋から追い出した。


やはり紅茶やフルーツティーを味わう事はなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ