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クラス発表への道のり


「うわぁ!!凄い広いわね。これは地図がないと迷子になりそうだわ」


馬車から降り見た学園は、思っていた以上に大きく立派な建物だった。


(地図があっても迷いそうね……)


方向音痴とまではいかないが、若干方向感覚には自信が持てないミリヤ。

迷子になったらどうしようと考えていると、後ろから声をかけられる。


「ミリヤ様が迷子になったら、必ず助けに行きますわ。ね?ジーク様」


頼もしい声に振り向かなくても後ろにいるのが誰かを悟る。


「ローズ様!!ありがとうございます」


振り返れば思った通り、ローズが優しく微笑んでくれていた。


「ミリヤ様。ジーク様。ご入学おめでとうございます。クラス発表までご一緒しても良いでしょうか?」


「ローズ様もご入学おめでとうございます。えぇ。是非ご一緒に。ジーク、良いわよね?」


「もちろんです。そして私にも有難いお言葉ありがとうございます。ローズ様もご入学おめでとうございます。クラス発表は是非一緒に見にいきましょう。私1人では対処が難しい方もいらっしゃるので……」


ここはもう戦場である。

味方は1人でも多いに越した事はない上に、ジークの言うように、貴族でないと対処が難しい者もいる。


「入学ってもっと希望に満ち溢れた、楽しいものだと思っていたわ」


ミリヤが呟けば、2人からは首を振られる。


「ミリヤ様。それは絵本や空想の世界の話です。ここは貴族が通う学園。足の引っ張り合いは当たり前ですし、高貴な方をその場から引き摺り下ろすのを虎視眈々と狙っている人もいます。ミリヤ様の事がなくても、基本的に夢と希望からは1番かけ離れた場所にあるのが学園です」


(世知辛い……)


ジークが無言で頷いているのは、ローズの言い分が正しいと言う意思表示だろう。


「もはや悪の巣窟に聞こえてくるわ」


「その認識で間違いはないかと思います」


どちらかと言えば間違いであってほしかったと思ったが、口には出さなかった。


3人で歩いていると何回か会った事がある侯爵家の子息から挨拶をされた。その方に挨拶を返すと、また次の人に挨拶をされ……それを繰り返している内に、クラス発表の紙が貼られている広間へと着いてしまった。


「結構な人がいるのね」


少し早めに着いたと思っていたミリヤだったが、それよりも前に来ていた生徒が結構な数おり驚いている。

紙が貼られている場所には少し遠く、ここからでは見えないため、人が引くのを待とうかと思ったが……。


「ミリヤ様、せっかくですし近くまで見に行きましょう」


ローズから声がかかる。ミリヤの名前が聞こえた近くの生徒が「ミリヤ様って言ったわよね?オリエーヌ公爵家の?」と小声ながらも騒ついたため、ローズはこうなると分かっていて声をかけたのだろう。

最初は1人2人から始まったざわつきも、だんだん伝染していき、気付くとミリヤ達の前には人がいなくなり、歩きやすい一本道が出来上がっていた。


注目度No. 1な中、歩いて行きたくはないが……歩かないとクラスが分からない。

ミリヤは意を決すると顔を下に向ける事なく真っ直ぐ前だけを見て歩き出した。

その姿を見た者達の視線は、当たり前だが好意的なものもあれば、棘のある視線を向けてくる者もいる。

チラリとローズとジークの顔を見れば、周りをさり気なく確認していたため、敵か味方の判別をしていると察する。

今日が終わる前にリアムの元に報告がいくまでがワンセットだ。


ミリヤからしたら、とても長い時間に感じた一本道を歩ききり、やっとクラス発表の場所まで辿り着いた。

ミリヤが自分のクラスを探せば、名前はすぐに見つかる。


(まぁ……妥当よね)


分かってはいたがSSクラスにミリヤの名前はあった。

クラスの中にはジークもローズもおり……問題の2人とリディオンもいた。

やはり王家の者は忖度ありでSSクラス自動入学がきまっているようだ。


「ミリヤ様。一緒のクラスですわ。嬉しいです」


「えぇ。嬉しいですわ。これで……」


純粋に喜んでいるのが伝わってくるローズにミリヤもしばし嫌な事は忘れて笑顔を向け返事を返すが、最後まで言う事ができなかった。

何故なら……ミリヤ達の登場の時よりも更に大きな響めきがその場を支配したから。

そんな事ができる者に心当たりしかない。


「来たようね」


呟いた声は誰にも聞こえる事はなく、周りの声にかき消された。


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