アリアの計画〜アリアside〜
「お父様、見てください!とうとう成功しましたわ」
アリアは父が仕事をしている部屋へとノックもせず飛び込んだ。
本来ならノックはするようにと叱るグレン侯爵も、入室してきたアリアを見ると叱るのも忘れて声を上げる。
「おぉ!!アリアとうとう成功したのか。前の瞳もよく似合っていたが、今の紫色の瞳もとてもよく似合っている!」
アリアはディガルガンの誕生日パーティーから帰宅した日から、グレン侯爵に頼み魔術師を用意してもらい、ずっと研究していたのだ。
紫の瞳が王妃になるために必要なら、紫の瞳にかえればいいのだと。
(魔術師にコンタクトを理解してもらうのには時間がかかったけど、時間をかけた甲斐はあったわね)
今の世界にコンタクトという概念はないため、何度説明しても理解しない魔術師に、途中怒鳴りたくなったが、協力してもらえなくなると困るのはアリアなため、我慢し根気良く説明を続けてきた。
その労力が報われたと、アリアは全身で喜びを表している。
「お父様もそう思いますか?私もすごく気に入っているのです!まるで生まれた時から紫色の瞳だったような気さえしてきて」
「あぁ!本当に似合っている。生まれた時からと言われても違和感がない。むしろ今までの瞳の色が間違っていたんだな」
グレン侯爵の頭の中はお花畑状態だろう。
アリアの瞳さえあれば、一度は諦めかけたディアルガンを王にするという夢を叶える事ができる。
そして憎きミリヤとリアムを追い落とす事が可能になるのだから。
「アリア。お前が紫の瞳を得た事で、ディアルガン殿下が王太子に返り咲くだろう。陛下も考えを改めるはずだ。王に就くべきは王妃の子であり、何より第一王子のディアルガン殿下だと」
貴族達の前で派手に醜態を晒したディガルガンを王が簡単に許すはずもないのだが、グレン侯爵はその事に気付きもせず、これから自分に訪れるであろう華やかな未来を想像している。
目の前にいるアリアの目が厳しくなっている事にも気付かず。
(そんな簡単にいくかしら?頭の出来ならリディオン様の方が上でしょうし……あちらにはオリエーヌ公爵がついてる)
顔も佇まいもリディオンの方がアリアの好みだが、今となってはリディオンをアリア側に引き込むのは難しい。
それでも……可能性はまだ諦めていない。
アリアは一縷の望みを学園にかけているのだ。
「紫の瞳を見たディアルガン様は喜んでくれるかしら?」
心にもない事をグレン侯爵にたずねると、アリアの想像した通りの返事が返ってくる。
「当たり前だ。喜び、アリアを妃にと望むだろう」
アリアのおかげで首の皮が一枚繋がるのだ。ディアルガンには褒め囃してもらわなければ、これまでの苦労が報われない。
そして何より……。
「お姉様は何と言うかしら……?」
ディガルガンの誕生日パーティーでの出来事は、何度思い返してもはらわたが煮えくり返る。
アリアより下であるべき、あのミリヤが……公爵令嬢となりアリアより身分が上になった。
その上、口答えをしてきたのだ。
許せるはずがない。何を置いてもミリヤを今の地位から引き摺り下ろす事が、学園での最優先事項だとアリアは真剣に思っている。
「今のアリアを見れば、アリアこそが王妃に相応しいと馬鹿なミリヤでも気付くだろう。王妃になれば身分はお前の方が上になる。その時にはまた、私直々に躾直してやるから安心しなさい。ミリヤにお前を傷つけさせやしない」
反対に言えば、アリアが王妃にならない限り身分はミリヤの方が上だという事だ。
「お父様。ありがとうございます。そのお言葉が聞けて安心しました。でも私はお姉様と仲良くしたいのです!もう一度姉妹と呼んでもらえるよう、学園で頑張りますわ!」
「お前はなんて優しい子なんだ。あんなゴミでも姉と慕うなど……それなのにアイツはアリアを辱めるような事を言って。やはりオリエーヌの娘の子という事だな。人の心がないんだ」
その後もグレン侯爵はオリエーヌ公爵家について愚痴を言っていたが、アリアの耳には入ってこなかった。
(お姉様。待っていなさい。必ず、あの顔を屈辱で歪ませてみせますわ。勝つのはいつだって私。負けるわけにはいかないのよ)
戦いの火蓋は切られた。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
キリがよかったので1章と比べ短いですが、ここまでを2章とさせて頂きます。
次は今度こそ学園編に入ります!




